
「プラダ(PRADA)」はナイロンから始めた循環型のモノ作りを天然素材にも広げる。このほど、製造工程で発生する残繊維や裁断くずなどを再利用する新プロジェクト“リカシミヤ(Re-Cashmere)”と“リウール(Re-Wool)”を立ち上げ、両素材を使った商品を青山店など一部店舗と公式オンラインストアで発売した。
これは、プラダ グループが2023年に策定した、主要原材料を環境負荷の低い素材へと移行するロードマップを発展させたもの。原料調達をはじめとする各工程の環境負荷を管理するためにトレーサビリティーを重視し、“リナイロン”同様、“リカシミヤ”と“リウール”の全製品にNFCタグを付け、購入者は繊維の原産地、サプライヤー、素材が加工された国、その後の各製造工程などの情報を確認できる。
情報の管理には、プラダ グループがLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT)と共同で設立したオーラ・コンソーシアム(Aura Consortium)のプラットフォームを活用する。また、ブロックチェーン技術によって改ざんを防止したデジタル真正性証明書も提供する。
100%リサイクルカシミヤを使用 自社工場の端材も活用

“リカシミヤ”は、100%リサイクルカシミヤを使用した糸から製品を作る。紡績工程で発生する細かな残余原料やカシミヤの端材を活用する。原料の一部には、ニットウエアの試作品や一部の加工を行うプラダグループのトルジャーノ工場で回収した端材も使用する。こうした細かなカシミヤ繊維を回収し、選別した後、色ごとに分別する。この工程によって、染色工程を省くことができる。その後、繊維をほぐして整える「カーディング」などを経て、新たな糸に再生する。
使用するカシミヤは、サステナブル・ファイバー・アライアンス(SFA)認証を取得しており、環境・社会面で認められた基準に従って生産された、責任ある調達とトレーサビリティーが確保された素材であることを保証する。また、リサイクル工程を経て生まれた糸は、グローバル・リサイクル・スタンダード(GRS)認証を取得。“リカシミヤ”は、メンズおよびウィメンズのセーターとして提供する。価格はクルーネックセーターが27万5000円~、ポロセーターが32万4500円~など。
“リウール”はグループ内の端材を再生 染色工程を省略

“リウール”は、プラダグループのさまざまな製品ラインから回収したウールやカシミヤ、規格外の生地、裁断工程で発生した端材を用いる。再生したウールとカシミヤはグローバル・リサイクル・スタンダード(GRS)認証を取得する。“リウール”の糸は、リサイクルウール40%、リサイクルカシミヤ10%に、レスポンシブル・ウール・スタンダード(RWS)認証を取得したバージンウール50%を混合した。リサイクル工程は、余剰素材のウール以外の部分を取り除いて色ごとに選別。“リカシミヤ”同様、染色工程を省いた。その後、「wet shredding(湿式開繊、液体中で繊維の束を粉砕するほぐす方法)」によって繊維状に戻し、カード紡績工程を経て、新たな糸に再生した。
“リウール”はトラウザー、ジャケット、スカート、ドレスなどで展開する。価格はドレスが71万5000円、コートが59万4000円、ブルゾンが71万5000円~、ミディスカートが45万6500円、パンツが29万7000円など。なお、ダブルフェイス生地は、接結糸を使用するため、混率が若干異なる場合がある。
素材の供給に合わせた少量生産 色合いの違いも個性に
“リカシミヤ”“リウール”ともに、専門技術を持つサプライヤーとの緊密な協働により、全工程をイタリアのトスカーナ州とウンブリア州で行う。生産はその時々に調達できる素材に左右されるため、生産数量は限られ、同じ色でもシーズンによって色合いが異なる場合がある。「プラダ」は、こうしたリサイクル素材ならではの特性を製品の個性として提案する。また、循環性と品質は相反するものではなく、互いに補完し合うものと位置付ける。リサイクル素材の活用によって、温室効果ガス排出量の削減にもつなげる。