ファッション

注目度高まるベルリン・ファッション・ウイークの醍醐味とは? 現地を訪れた国内有力店バイヤーに聞く

年々世界からの注目度が高まりつつあるベルリン・ファッション・ウイーク(BFW)。7月初めに開催された2027年春夏シーズンは、招待ゲストとして日本の有力百貨店&セレクトショップ4社からバイヤーやマーチャンダイザーが現地を訪れた。三越伊勢丹と高島屋は3回目、ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)と阪急阪神百貨店は初めての参加となる。ファッションビジネスにおいてパリ一極集中の流れが強まる中、 独創性のある新たな才能との出会いを求めて参加した4人に、3つの質問を通してBFWを振り返ってもらった。

【QUESTION】
1:BFWへの参加理由と実際に現地で感じた印象は?
2:良かったブランドや日本市場での可能性を感じたブランドは?
3:BFWや参加デザイナーに期待することは?

三越伊勢丹
奥田詩保子/第2MDグループ 婦人・子供商品部 リ・スタイル バイヤー

1. ベルリンならではのカルチャーを背景とした独創性の高い先鋭的なクリエイションを期待し、毎シーズン参加を楽しみにしている。また、ドイツファッション協会が日本や韓国のマーケットにも注目しており、日本においては成熟したファッション感度の高い消費者層も厚く、ベルリンのクリエイションとの親和性が高いと感じている。そのため、新たなブランドとの出会いを目的に現地を訪れた。これまでは実験的な表現やクリエイションを重視するブランドが多い印象だったが、今回はクリエイションとリアリティーのバランスが取れたブランドが増えており、市場との接点を意識した成熟が見られた。

2. 「ローラ ゲーテ(LAURA GERTE)」は、女性の身体性を意識したデザインとアップサイクルを取り入れたモノ作りが印象的。サステナビリティとクリエイションを高い次元で両立しており、現代のファッションに求められる価値観を反映していると感じる。また、フェミニンでありながら、ベルリンらしいアンダーグラウンドなムードを感じさせる独特のカッティングやスタイリングに個性があり、そのバランス感覚が魅力的だった。「ソフィア ヘルメンス フェルナンデス(SOFIA HERMENS FERNANDEZ)」は、これまで見てきたベルリンブランドとは異なるポエティックなアプローチが印象的だった。「女性が日常の中で服をまとう」というシンプルで普遍的な行為に焦点を当てたプレゼンテーションも、ブランドの世界観が自然と伝わってきた。独自性のある世界観を持ちながらも決して観念的になりすぎず、顧客が自身のスタイルに取り入れるイメージを描きやすい点が魅力。バイヤー視点でも日本市場との親和性や商業的な可能性を感じるブランドだった。

3. プレゼンテーションによるブランド表現や世界観の打ち出しは、すでに非常に高いレベルにあると感じている。一方でビジネスとしての持続性やスケール化については、今後さらに発展の余地があるのではないかと感じた。ベルリンならではのクリエイションを維持しながらも、マーケットとの接点を意識したコレクション展開やブランド運営に期待したい。クリエイションとビジネスのバランスを両立したブランドがさらに増えることで、BFW全体のプレゼンスも一層高まると考えている。

ユナイテッドアローズ
浅子 智美/第一事業本部 UAウィメンズ商品部 ユナイテッドアローズ ブランドディレクター

1. コロナ前に比べ、海外での買い付けはパリ一極集中傾向にある。パリで見られるものだけに絞ってしまうと、マーケットの同質化、パリに来ていないポテンシャルのあるブランドとの出会いが少なくなってしまう…そんな危惧がここ数シーズンあった。そのため、機会があれば大都市以外のファッションの可能性を広げていきたいと考えている。3月に東京で開催されたベルリン・ショールームを訪れた際にエディットされたブランドではあったが可能性を感じたので、今回BFWに参加した。実際に訪れてみると、多様なテイストや表現方法にあふれていて、独自のエネルギーを感じた。ブランドの現在地も世界的に卸をしているブランドから設立間もないブランド、ゲストブランドまでさまざまで、ジャンルレスかつボーダレス。それでいて、どこかオーガナイズされていた。またファッション・ウイークとして、サステナブルな未来に向けた取り組みや若手育成という側面も見て取れた。

2. エモーショナルに「カワイイ!」と感じたのは「マリー ルイーズ ミュラー(MARIE-LOUISE MUELLER)」。シーズンらしさをルックで象徴的に示しながらリアルに着たいと思えるアイテムもちりばめたショーで、特にクロシェニットが良かった。「コーリャ ボガティレフ(KOLYA BOGATYREV)」は、どことなく漂う “いなたさ“とテイストで括れないスタイルの面白さがあった。すでにユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SONS)で展開中の「ダガー(DAGGER)」はベルリン発のストリートブランドらしく、色柄のミックススタイリングが好印象。「ソフィア ヘルメンス フェルナンデス」はデザイナー自身がまだ学生ということもあり、本格的なスタートはこれからになりそうだが、将来性を強く感じた。ブランドコンセプトとファッションを具現化するための表現方法(朗読、展示、モデルの自由演技)もマッチしていた。そしてギリシャにルーツをもつ「パノス ゴッツィス(PANOS GOTSIS)」は、手織りの生地をモダンに表現。刺しゅうやレースのアイテムは日本でも反応が良さそう。「フルチェ(FRUCHE)」もナイジェリアの伝統を現代的に落とし込んでいて、鮮やかな色使いが目を引いた。

3.「サステナブル」と「ファッション」がよりビジネスレベルとして成り立つよう、BFWが前例を作っていってほしい。また「ブジガヒル」は市内でポップアップストアも開催していたが、そういったイベントやカルチャーイベントなどもファッションウィークの期間に開催があると、街としてショー以外の盛り上がりも高まりそうだと思う。バイヤー目線では、展示会の期間やブランド数(服飾だけでなくアクセサリーや雑貨なども含め)がもう少しあるとうれしい。

高島屋
岩佐脩平/MD本部 婦人服 スタイル&エディット バイヤー

1. ファッションビジネスがパリに集中する中、パリでは発見できないようなサステナビリティとクリエイティビティーを両立させた新進気鋭ブランドの発掘を目的に訪問した。参加ブランドやショー(コレクション、演出、会場)はクオリティーが向上し、規模も前回から着実に拡大している印象を受けた。また、ファッションへの熱量で形成されたBFW独自のコミュニティーを感じられた点も良かった。

2. 「ウィリアム ファン(WILLIAM FAN)」は、エレガンス、ジェンダーレス、ブランドの独自性をレディ・トゥ・ウエアに落とし込んだデザインに日本市場との相性の良さを感じ、今後に注目している。「ナターシャ フォン ヒルシュハウゼン(NATASCHA VON HIRSCHHAUSEN)」は、ゼロ・ウェイストで唯一無二のコレクションを作るというサステナビリティと創造性を両立する姿勢が素晴らしかった。「フルチェ」は、独創的なシルエットと目を引くルックや演出に可能性を感じた。「ブジガヒル(BUZIGAHILL)」は過去のコレクションで生まれた端材で制作したとは思えないクオリティーで、ブランドとしての成長が見て取れた。

3. 卸売りを視野にいれた生産背景の整備(価格、納期)と量産商品の開発による手に取りやすいプライスレンジの提案を期待している。

阪急阪神百貨店
姜世求/第1店舗グループ モードファッション商品統括部 モードビヨンド商品部 マーチャンダイザー

1. 多様性と独創性がますます重要になる時代を見据え、常に時代を先取りしたいと考えている。そのため、昨年はストックホルムとコペンハーゲンのファッション・ウイークを視察し、多くの刺激を受けた。今年もその一環として、さらに視野を広げるため、BFWに参加した。

2. 「レアラボブ(LEALABOB)」は、独自の視点でカッティングやギャザーを巧みに取り入れながら、女性のボディーラインを再定義するクリエイションが印象的だった。「タティ(TATI)」は、プレゼンテーションを通してレイヴ音楽とニットという一見結びつきのない要素を融合。人々の身体性だけでなくコミュニティーまでを含めたストーリーテリングへと昇華したクリエイティブに、大きな刺激を受けた。商業的なポテンシャルを感じたのは「マライカライス(MALAIKARAISS)」。シルクやシフォンなどの素材、絶妙なカラーリングに加え、ドレスやテーラードジャケットなどは日本市場でも受け入れられそうだ。

3. ただ服を上手に作るブランドではなく、ベルリンのカルチャーを独自の視点で表現するようなクリエイティビティを持ったブランドが、今後ますます増えてほしい。

PHOTO : BORIS MARBERG, CELINE WITON, FINNEGAN KOICHI GODENSCHWEGER, JAMES COCHRANE FOR BFW & ANNA NOWALSKA-DUDA, MARC KRAUSE

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