ジャパンサステナブルファッションアライアンス(以下、JSFA)は7月23日、第6回年次総会に合わせて記者発表を開いた。8月から始まる第6期の共同代表にはエコミット(ECOMMIT)、ジェプラン(JEPLAN)に加えてスタイレム瀧定大阪が新たに就任。次年度方針では、GHG排出量の「算定」から「削減の実践」へ、また回収だけでなく適量生産のあり方にまで踏み込む姿勢を示した。
「そろそろ行動に起こす時期」
共同代表を務めるジェプラン(JEPLAN)の髙尾正樹社長は冒頭の挨拶で、「これまで5年間、検討、調査、勉強を進めてきたが、そろそろ行動に起こす時期だと認識している」と語った。
発足から6年間の変化を問われると「設立当初は、ある意味"流行り"という面も含めていろいろな企業に参加いただいた。一方で脱退された企業もある」と振り返る。そのうえで「サステナビリティの取り組みは経済合理性との戦いでもある。利益を取ることと、サステナビリティにコストを払うことはどうしても相反する。それでもやらなければいけないという企業が残り、増えてきている」と述べ、「経済合理性とサステナブルファッションをいかに整合させるか、その具体的な行動ができる体制がようやくできてきた」との手応えを示した。
共同代表にスタイレム瀧定大阪 会員は75社に
第6期の共同代表はエコミット(ECOMMIT)、ジェプラン、スタイレム瀧定大阪の3社。このうちスタイレム瀧定大阪の森田芳弘サステナビリティ推進室兼環境品質管理室長が新たに就任した。森田室長は「共同代表としては初めての経験で責任の重さも感じるが、個社だけでは解決が困難な複合的な課題に取り組む。こうした団体はこれまで稀有だったと思う」と抱負を述べた。
JSFAは共同代表企業を毎年選任しており、顔ぶれは毎期入れ替わる。引き続き代表理事兼共同代表を務めるエコミットの坂野晶チーフ・サーキュラリティー・オフィサーは「会員企業が自ら自分たちの活動を作っていくことを大事にしている団体」と、その運営方針を説明した。会員数は正会員18社、賛助会員57社の計75社。2025年8月に一般社団法人となった。
静脈側の算定ルール策定へ
カーボンニュートラルの領域では、第5期に「算定」から「削減」へとテーマを移した。会員各社のスコープ3簡易算定は、開始当初の22社から52社に増え、完了率は69.3%に達した。ただし全会員の算定完了という目標には届いていない。
残る約3割が算定に至らない要因として、会員に含まれる静脈側企業の算定方法が定まっていない点を挙げた。そのため静脈企業のGHG排出量算定方法を検討するワーキンググループ(WG)を新設し、CFF(サーキュラー・フットプリント・フォーミュラ)の採否を含めて議論を始めており、今年度中に算定方法を策定することを目標とする。CFFは、リサイクルによる環境負荷の削減効果を動脈側と静脈側でどう分け合うかを定めた欧州の計算式のこと。
また、工場における脱炭素化の実例づくりを中長期テーマに据える。もっとも、その難易度は高い。髙尾社長は「日本の衣料品は98%が輸入で、工場はほぼ全て海外にある。しかも連結対象の子会社ではなく、委託先やその再委託先という複雑なサプライチェーンの中で作られており、直接的に経営を管理することがそもそも難しい」と説明。政策やルールによる一定の強制力、各国政府との関係構築に加え、「根本的には、消費者がカーボンニュートラルなものを求めていると発信し、理解を得ることが重要」と述べた。
回収から「適量生産」へ
ファッションロスゼロの領域では、回収品の量と質の向上に向けた優良事例の共有とガイドラインへの落とし込み、そして循環の優先順位(ウェイストヒエラルキー)の整理を継続テーマとする。後者は、発生抑制からリペア、リユース、リサイクルまで複数ある手段のうち何を優先すべきか、その序列について業界としての共通認識を持とうという取り組みだ。
新規テーマとして掲げたのが、個別リサイクル法など資源循環の経済性が担保される仕組みのあり方の検討と、プロパー消化率の向上を含めた適量生産のあり方の検討だ。前者は、容器包装や家電のような個別リサイクル法が繊維・衣料品には存在しない中で、回収から再生までにかかるコストを誰がどう負担するのか、制度的な枠組みが必要かを検討するものだ。坂野代表理事は「出たものを回収するだけではなく、消費のあり方自体をどう考えるか。我々自身は企業なので売り上げを損なわないことも考えながら、適量生産にどう向き合うかは大事なテーマだ」と述べた。
回収量については、環境省が掲げる家庭からの衣類廃棄削減目標を前提に、会員各社が報告した回収量から必要な増加分を試算し、JSFAとしての数値目標を設定済み。数値は会員限定で非公開とし、毎年進捗を確認する。目標の対象をどこに置くのかを問われた坂野代表理事は「作っている人だけが悪いという話ではない。それがバリューチェーン全体で取り組む必要があると言っていることの裏返しでもある。誰がどこまでできるのかを、領域を超えて議論しながら解決策を探るのがJSFAの強み」と答えた。
中長期では、使用済み衣料を循環させる技術開発を促すため、現状の課題を定義・公表し、JSFAの外部から解決策を募ることも検討する。
回収拠点ページ、次の課題は認知と中身の可視化
今期の成果として、会員企業のリペア・買取・回収拠点を検索できるページを7月に公開した。掲載は2585カ所。次年度は周知と利用促進を図る。
一方、質疑応答では現時点での限界も示された。WGリーダーを務めた鈴木優美子帝人フロンティアサステナビリティ戦略推進部は、会員企業の拠点であっても全てを掲載しているわけではなく、期間限定の回収などは検索結果ではなくニュース欄での告知にとどまると説明。掲載はあくまで会員企業の意向に基づくとした。
回収された衣類がその後どこへ向かうのか、繊維to繊維のリサイクルかリユースか輸出かといった内訳を掲載する予定を問われると、坂野代表理事は「現時点では情報を集約できていないが、その後何に役立つのかを見せていくことは必要。今後の改善案として議論したい」と応じた。会員以外の取り組みの掲載については、情報の正確性の確保と入会の動機づけという二つの観点から、当面は会員に限定する方針だという。
人権領域はロードマップなし
環境領域に比べ、人権への取り組みは進度が異なる。坂野代表理事は、労働環境の適正化に向けて国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」を支持する姿勢をウェブサイト上で掲げている一方、「ファッションロスゼロやカーボンニュートラルのような個別のロードマップを策定しているわけではなく、活動としては部会の活動にはなっていない」と説明。情報共有と勉強会は継続しており、「各社が取り組んでいく中でプラットフォームを活用してもらう形は今後も続けていく」とした。