フィンランドのデザインハウス「マリメッコ」の創立75周年を記念する大規模巡回展「マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking ─ Beauty, Dream, Love」が7月4日、京都文化博物館で開幕した。会期は9月6日まで。開幕に先立ち、報道陣向けに記者会見と内覧会が行われた。
4つのパートで「マリメッコ」をたどる
本展は、マリメッコ創業者のアルミ・ラティアがわずか14歳のときに日記に記した「責任はただ一つ──美である。現実はただ一つ──夢である。ただ一つの力──愛。」という言葉を手がかりに、「マリメッコ」の創造の美学とプリントメイキングの技、その背景にあるフィロソフィーを紹介する。
会見に登壇したマリメッコ ホーム&プリンツ デザイン・ディレクターのミンナ・ケメル=クトゥヴォネン氏は「この3つの言葉が本展の核になっている。これは歴史の注釈にとどまらず、今日においても通用する創造的な仕事の意味についての重要な考察となっている」と語り、本展を伝統的な回顧展ではなく、来場者を「マリメッコ」の世界へといざなう没入型の体験と位置づけた。
会場は大きく4つのパートに分かれて構成される。
1つめのパートでは貴重なアーカイブ資料や映像、ファブリックの歩み、伝説的なモデル「マリミニ」の物語を通じ、創業者の価値観がいかにしてタイムレスで独創的なデザインへと昇華されたかを展示する。
2つめのパートには、1960年代から近年のコレクションまで厳選された約70点のドレスがずらり並ぶ。「ドレスをキャンバスに」という創業者の思想を具現化した、シルエットとプリントの融合を紹介する展示だ。「マリメッコ」のデザイナー、マイヤ・イソラの代表作「ウニッコ」をあしらったドレスをはじめ、アンニカ・リマラの「クラーヴァ」や「ランケッティ」、そして1970年代にデザイナーとして在籍した脇阪克二の「カタラ」を用いた一着まで、時代を横断する色彩とパターンの変遷がドレスを通して紹介されている。マキシドレス、Aライン、ミニドレスというマリメッコを代表するシルエットに共通するのは、動きやすく快適であること。ポケットや着心地のよいシルエットなど、着る人の動きを制限しない実用的な美しさは、ラティアの美学そのものだ。なかでもミニドレス「マリミニ」は1960年代初頭にジャクリーン・ケネディが着用して雑誌の表紙に登場し、マリメッコの名を世界中に知らしめた。60年に次期アメリカ大統領の妻だったジャクリーンが7点のドレスを購入した逸話も、第1部のアーカイブ資料に見ることができる。
「世界の見方を変える原動力」
3つめのパートは、プリント制作の創造的プロセスに迫る。マリメッコを象徴するアイコニックな模様はどのようにして生まれるのか。自然の風景から描かれたスケッチや切り絵、本展のキービジュアルを飾った模様の原図など貴重な資料を展示。1枚の紙に描かれたドローイングが人々の心を惹きつけるファブリックへと形を変えていく過程を明かす。「マリメッコ」の心臓部であり、年間約1000キロメートルもの生地をプリントするヘルシンキのプリントファクトリーをテーマにした展示も見どころだ。大規模生産でありながら、筆跡や色の重なりのずれをあえて「完全なる不完全さ」としてマリメッコは受け入れる。その制作姿勢がマリメッコの美学の核心にあるという。アートユニットplaplaxが制作したデジタルプロジェクションの空間では、長いテーブルの上を模様が流れ、壁面いっぱいにパターンが広がる。職人の手仕事に宿るダイナミズムと映像表現の融合により、一つの模様がプリントとして生まれる瞬間を体感できる。
最後のパートは「ミナ ペルホネン」のデザイナー・皆川明氏とのコラボレーションを紹介する。皆川氏がマリメッコとの対話を重ね、独自の視点でマリメッコを再解釈した新作インスタレーションを公開する。皆川氏がデザインし、プリントファクトリーで制作されたファブリックを輪にして連ね、チェーンのようにつないだ大規模な作品だ。皆川氏は「これまでのアーカイヴがつながり合いながらひとつの空間をつくっている姿は、マリメッコが時代に左右されることなくエターナルなデザインの魅力をいつの時代にも社会に表現していることを伝えようとしている」と、コメントを寄せている。
展覧会のキービジュアルは、アンニカ・リマラ、ペンッティ・リンタ、アンッティ・ケッキの3人のデザイナーによるパターン模様をグラフィックデザイナーの田部井美奈氏が制作した。会見の最後に、ケメル氏は「本展を通じて体験してほしいのは、好奇心と喜び、そして美と夢と愛というのはただの言葉ではなく、世界の見方を変える原動力であるという発見です」と語り、展覧会のタイトルにもある「模様のちから」を伝える試みであることをアピールした。
同展は約2年をかけて全国を巡回する。10月3日~12月20日は東京都庭園美術館、27年1月30日~3月28日はひろしま美術館(広島県)で開催され、その後、北九州、富山、名古屋、長崎も巡回する予定だ。