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特集 CEO2026

【マッシュホールディングス 近藤広幸社長】逆風下の市場だからこそ ブランドの“本質”が試される

PROFILE: 近藤広幸/社長

近藤広幸/社長
PROFILE: (こんどう・ひろゆき)1975年生まれ、茨城県出身。建築家としてキャリアをスタートさせ、98年にマッシュグループの前身となるマッシュスタイルラボを設立。多様なクリエイティブ活動を自ら手がけながら、ファッション・ビューティー・フードまでをウェルネスで横断する事業をけん引。 12年に国内外20社を束ねるマッシュホールディングスを設立し、現職 PHOTO : AI OKUBO

2025年8月期の売上高は前期比13%増の1363億円と2ケタ増収を達成したマッシュホールディングス。気候変動、コスト高、為替変動とマイナスの外部要因 が山積する現在の市況だが、「これを言い訳にしない“強さ”を身に付ける」と近藤広幸社長。改めて目を向けるのは、ブランドの本質的な魅力を伝える接客やEC施策、ポップアップなどのリアルの場の強化だ。

「セルフォード」「スナイデル ホーム」好調
66%増収の「バブアー」も力強くけん引


WWD:2ケタ増収となったが、要因は?

近藤広幸社長(以下、近藤):決して景気がいいとはいえない中で、店舗、ポップアップ、イベントでの営業力が光った。個々人の努力、熱量に支えられた部分が大きい。現場のスタッフも、接客の面白さや会話の楽しさを再認識できたと思う。リアルの場と「顧客とのつながり」の大切さを強く感じた1年だった。「リリー ブラウン(LILY BROWN)」や「エミ(EMMI)」など複数のブランドですでに取り組み始めているのが、ブランドの“核”となる魅力をコンセプショナルに見せる場。今期は「フレイ アイディー(FRAY I.D)」もブランド単体のポップアップを初めて全国規模で実施した。“飛び道具”的なコラボに頼らず、コレクションの魅力を真正面から伝えることで、成功をおさめた。新規客を取り込むだけでなく、既存客にも改めてブランドのフレッシュな魅力を届けられる場として、今後も増やしていきたい。 「セルフォード(CELFORD)」も既存店前年比が2ケタ増と好調。得意とするオケージョンだけでなくデイリーウエア需要も取り込み、目覚ましい勢いで躍進している。「スナイデル ホーム(SNIDEL HOME)」が同28%増の26億円と大きく伸長したのも好材料だ。

WWD:「バブアー」は25年8月期の売上高が同66%増と飛躍した。

近藤:9月、世界でも2店舗目となる“エナジーストア”として原宿キャットストリート店をオープンした。11月には月商1億円を達成するなど、非常にいいスタートを切れた。ワックスジャケット以外のアウターや軽衣料品、バッグなど雑貨類を強化すると同時に、スタイリングやVMDでも工夫し、引き続き女性の取り込みにつながっている。今後もメンズ・ウィメンズのコンバインストアを積極的に出店したい。(24年から伊藤忠商事と国内事業を共同運営する)「レスポートサック(LESPORTSAC)」についても、店舗運営でお客さまと接し、ナイロンバッグの人気とそれを裏打ちする品質、信頼といったポテンシャルをひしひしと感じている。ライセンスによるアパレル企画も、進むべき方向性やアピールポイントが見え、活路が開けてきた。ここから1〜2年で大きく成長させたい。

WWD:IPビジネスが業界のトレンドだ。

近藤:「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」は25年8月期、コラボ企画だけで売上高60億円超を稼いだ。これまで「スーパーマリオ」や「ドラえもん」などさまざまなコラボの成功事例を積み上げてきた。その中でも15年続くモデルケースとなっているのがジョエル・ロブション氏との協業だ。「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」は着る人に癒しを与えるブランドとして「黒は使わない」という暗黙のルールがあるが、ロブションコラボだけは特例。食材の命と向き合い、赤を高貴に引き立てる黒のエプロンにこだわるロブション氏の背景や思想をリスペクトし、商品デザインに昇華させている。こういったコラボレーションを支えている濃度の高いストーリーがファンに刺さり、長く支持されているのだと思う。

WWD:コラボの成功の秘訣とは?

近藤:持論だが、コラボとは「IPビジネス」ではなく「ファンビジネス」。コラボに必要なのはまず熱量であり、われわれ自身が一番のファンでなくてはならない。好例が「セサミストリートマーケット(SESAME STREET MARKET)」。背景にある多様性や公平性の思想に共感し、マッシュグループならではの感性を掛け合わせ、空間・商品で表現している。池袋・豊洲に続き、12月に阪神梅田本店にオープンした3号店は、最初の1週間で売上高2000万円を超えるなど、大きな反響があった。

WWD:メンズカテゴリーも前期比10%増の71億円と、順調に成長している。

近藤:「ジェラート ピケ オム(GELATO PIQUE HOMME)」や「アウール(AOURE)」がいずれも堅調に成長し、目標とする売上高100億円も迫ってきた。今後も守りに入らずアグレッシブさを保ち続けていく。男性客は女性客よりも、一度気に入れば長く付き合ってくれる傾向がある。メンズはもちろん、すべてのファンに対し、「対話を重ねる」ような商品作りや取り組みを地道に続けていきたい。

WWD:26年8月期の売上予算は1500億円。

近藤:さまざまなマイナスの環境要因が重くのしかかる状況は、しばらく変わらないだろう。しかし、これを言い訳にするつもりはない。重さをはねのけ、エネルギーがダイレクトに成果につながるよう力を発揮していきたい。
これまでは社員一人一人の努力の「足し算」で成長できてきたが、学びから得た戦略のもと、企画・EC・CRMなど各部門の力と、逆境の中で力をつけてきた営業力と掛け合わせる。グループとして、さらなる成果を生み出せるはずだ。

個人的に今注目している人

社外取締役 加藤克巳さん

長年、当社の社外取締役を務めていただいている“侍”。常に冷静沈着で無駄がなく、時には日本刀のような切れ味の鋭さで竹を割った明快なご意見にいつも痺れる。お会いする度にワクワクを感じさせてくれる先輩。

COMPANY DATA
マッシュホールディングス

1998年、グラフィックデザイン会社として設立。2005年にファッション事業に参入。「ウェルネスデザイン」をスローガンに掲げ、ファッション、ビューティ、フードなど多岐にわたる事業を手がける。「スナイデル(SNIDEL)」「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」「セルヴォーク(CELVOKE)」など50超のブランドを展開、世界で約850店舗を運営するなど、ライフスタイル全体を横断するポートフォリオを構築。25年8月期の連結売上高は前期比13%増の1363億円(営業利益は非公開)


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マッシュホールディングス
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