PROFILE: 北村嘉輝/社長

2025年9月の持株会社アンドエスティHD設立に伴い、中核事業会社として新しいスタートを切ったアダストリア。トップに抜擢された北村嘉輝社長は、世界市場に向けた攻めの姿勢を鮮明にする。
社内に呼びかけて
オリジナルブランド開発
WWD:社長としてどんな旗を掲げるのか。
北村嘉輝社長(以下、北村):「世界最強のマルチブランド企業」の実現だ。グローバルSPA(製造小売業)は「ザラ(ZARA)」や「H&M」のように1つのメガブランドに経営資源を集中させるが、マルチブランドならばそれらと差別化したポジションを築ける。確かに1つのブランドに集中させた方が効率的だろう。しかし各国でもファッション市場は細分化している。当社のように40以上のブランドできめ細かく提案できるマルチの利点は間違いなくある。
WWD:「世界最強」とはスケールが大きい。
北村:ぶち上げるくらいが丁度いい。経営は夢のあるビジョンを社員に届けるべきだ。店長会でもことあるごとに「世界最強」を唱えている。会社が何を目指しているか、一人一人に理解してもらう。目の前の仕事がどんな未来につながるのか、目線を合わせる。
WWD:海外でもマルチは有効か。
北村:約20年の実績がある台湾では、昨年3月開業のららぽーと台北南港に海外初の「ラコレ(LAKOLE)」を始め11ブランドを出した。1つの施設でこれだけの数の店舗を出せるのは当社くらい。重要なのは、多種多様な嗜好やライフスタイルの消費者に深くアプローチできることだ。台湾には既に90店舗を展開しており、店舗数の合計はメガブランドよりも多い。小回りの効くマルチブランドでメガブランドと同等の地域売上高を作ることができる。小さい国でメガブランドが大量出店すれば、自社競合に陥る。マルチはゲリラ的にたくさんのニッチな市場を攻略できる。アンドエスティ台湾の会員は100万人を超えた。日本同様に、今後は他社ローカルブランドの扱いも開始し、プラットフォーム化する。台湾での成功例は、香港にも移植できるだろう。好事例を広く東南アジアまで展開していきたい。マレーシアにも現地法人を立ち上げる予定だ。
WWD:巨大市場の中国では?
北村:現時点では「ニコアンド(NIKO AND...)」に集中し、単一ブランドの事業モデルを構築中だ。19年12月に上海に1号店を出店した「ニコアンド」は、パンデミックを乗り越えて現地で認められるまでになった。私も19年6月から5年間、上海在住で指揮を執った。苦しい時に踏ん張ったおかげで地力がついた。今では現地のお客さまのことが肌感覚で理解できる。12月には「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」も上海に1号店を開いた。
WWD:ブランド数はまだ増える?
北村:今年は例年以上に増やす。実は久しくオリジナルの新ブランドを出していない。M&Aで仲間となった「ジョージズ(GEORGE'S)」「トゥデイズスペシャル(TODAY'S SPECIAL)」、あるいはライセンスで導入した海外ブランドはあるが、独自開発は止まっていた。今年から社内公募を実施する。本社だけでなく、店頭スタッフも奮って応募してほしい。特に若い世代に期待している。知恵とやる気、根性さえあれば飛び級で採用する。
WWD:ボトムアップの機運を作ると?
北村:もともとそんな風土だったが、いつの間にか大企業になってしまったのかもしれない。新ブランドの立案、準備、運営の経験は、何よりも将来のリーダー教育になる。素地が良ければ承認から3カ月、半年で発売に持っていく。選考過程も社内の動画サイトで公開してエンタメ化したい。
WWD:近年はライセンスブランドにも積極的だ。
北村:26年は米ブランド「アメリカンラグシー(AMERICAN RAG CIE)」の日本および台湾のライセンス権を取得し、秋から日本出店を開始する。当社にとって手薄な都心立地で存在感を出していく。価格帯も客層も既存事業とは重複せず、新しい市場を取り込める。
WWD:主力ブランドはどう発展させるか。
北村:「グローバルワーク」は国内売上高が既に500億円を突破。次の1000億円に照準を合わせて一皮むける時期にある。新しいファンを引き込むために何かが必要になる。「グローバルワーク」らしさとは何か。25年は試行錯誤だったが、目指す姿は見えてきた。
「ニコアンド」も海外も合わせると500億円に届く。特に中国、台湾、タイ、フィリピンといった海外での売上高が100億円くらいに成長した。ライフスタイルブランドとして体験価値を高めるため、今春、創業の地である水戸の千波公園で「ニコアンド ベース(NIKO AND...BASE)」をプロデュースする。サウナ、飲食店、マルシェ、ピックルボール施設などで構成した楽しい空間だ。
WWD:「ローリーズファーム(LOWRYS FARM)」が好調と聞く。
北村:今期で過去最高売上高を更新する見込みだ。デビューから27年目。顧客が高齢化してもおかしくないが、リブランディングでよみがえった。「レプシィム(LEPSIM)」「ラコレ」も好調で200億円が見えてきた。「グローバルワーク」「ニコアンド」「スタディオクリップ」「ローリーズファーム」「ラコレ」「レプシィム」の主力でしっかり稼ぎ、新しい事業に投資していく。
個人的に今注目している人
著書をたくさん読み、刺激を受けている。USJのV字回復で知られる稀代のマーケターの凄さは修正力だと思う。最近は沖縄のジャングリアなどに対し、「うまくいっていない」との批判もあるが、森岡さんはこれまで幾度も外野の批判を乗り越え、成功するまで粘り強く修正してきた。自分も「ラコレ」の事業を開始した当初は厳しい声をたくさんもらいながら、地道に修正を重ねて3年で黒字を達成した。共感できる部分が多い。
1953年に茨城県水戸市で福田屋洋服店として創業。93年にポイントに商号変更。2013年にアダストリアホールディングスとしてトリニティアーツなどをグループ化。15年にグループ企業を統合して商号をアダストリアに変更。25年9月から持株会社アンドエスティHDとその中核会社アダストリアに再編。旧アダストリアの25年2月期業績は売上高2931億円、純利益96億円
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