
東京・白金台の八芳園が10月1日、リニューアルオープンを果たす。館内の全面改修に加え、サービス面も大幅にアップデート。中でも、リニューアルとともに始動する「CLUB HAPPO-EN for Business」は、同施設を企業の交流・発信拠点へと進化させる取り組みだ。より幅広いオケージョンに対応する、八芳園の新たな法人向けサービスであり、会員制プログラムとしてビジネスユースを力強く後押しする。
100周年を見据えた大幅リニューアル
テーマは「日本の、美意識の凝縮」
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今回のリニューアルは、2043年に控える創業100周年を見据えたリブランディングの一環だ。1950年代から、結婚式をはじめさまざまな記念の日を祝う場として愛されてきた八芳園だが、より多様化する時代のニーズに寄り添い、フロア構成を見直した。リニューアルコンセプトは「日本の、美意識の凝縮」。企業の会議やイベントに使用されてきた本館内の宴会場は、リニューアルを機に15会場から11会場へと再編。数を絞った分、一室ごとの収容力を拡大させ、400年の歴史を持つ日本庭園との親和性をより高める空間設計に仕上げた。そこには、文化資産を守りながら新しい価値を創造するという意志が込められている。
心地よさと上質をかなえる
会員専用の新「クラブ フロア」
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中でも注目は、会員だけが利用できる本館5、6階の「クラブ フロア(CLUB FLOOR)」だ。5階は黒を基調とした内装の「スタジオ コク(STUDIO KOKU)」だ。プレゼンテーションやミーティングに適した空間で、収容人数は最大378人。371平方メートルの空間に全長20m、高さ7mのLEDウオールを備え、ダイナミックな視覚効果を演出することができる。また、153平方メートルの広々としたラウンジスペース「ラウンジ コク(LOUNGE KOKU)」も設置。ドリンクやリフレッシュメントのもてなしで、パーティーなどにも対応する。
6階へと続く階段を上ると、宴会ホール「ホール ハク(HALL HAKU)」が現れる。5階とは対照的に白をキーカラーとしたインテリアで統一され、イベントスペースとしての機能がメーン。バーカウンター「バー ハク」も併設し、フロア全体の広さは750平方メートル以上に及ぶ。
両フロアともに窓の外には、八芳園の顔ともいえる日本庭園を一望できる。用途を限定せず、利用者のニーズに幅広く寄り添う、特別な空間になっている。
多様化するニーズに応える
ビジネス向け会員制プログラム
伝統を守りながら、これからの時代のニーズを見据えてサービスも進化する八芳園。とりわけ、ビジネスシーンに焦点を当てた「CLUB HAPPO-EN for Business」は、リニューアルとともに誕生する新たな会員制プログラムだ。
メンバーシッププログラム自体は、2024年にスタートした「CLUB HAPPO-EN」がある。同サービスが八芳園で挙式を行った顧客を対象としているのに対し、新サービス「CLUB HAPPO-EN for Business」のターゲットは企業。大規模なビジネス会議やセミナー、イベントの開催を後押し、サポートする内容になっている。
その特徴は大きく4つある。1つ目は、リニューアルで新設された、5、6階の会員専用「クラブ フロア」の利用だ。大勢のゲストの移動を見越し、専用のエスカレーターを介してエントランスからダイレクトにアクセスができる。2つ目は、会員企業の従業員を対象とした、各種優待。3つ目は会員限定パーティーや季節イベントへの招待だ。年会費はゴールド会員が99万円、シルバー会員が66万円。ゴールド会員は、「クラブ フロア」を最長1年半前から予約できるほか、「スタジオ コク」のLEDウォールや「ルーフトップ テラス(ROOFTOP TERRACE)」、茶室「壺中庵」などの利用料が割引になる特典も付与される。この上にはプラチナム会員もある(要問い合わせ)。
総支配人が語る
会員制ビジネスと託す狙い
PROFILE:(せきもと・けいすけ):1985年生まれ、2005年に新卒で八芳園入社。入社3年目でバンケットサービス支配人に就任し、年間施工組数2300組のオペレーション責任者を務める。その後、ブライダルに関連する全ての業務の責任者を歴任し、18年接客部門統括支配人に就任。23年10月より現職
今回のリニューアルに、なぜビジネス向けの新サービスが誕生したのか。その背景と今後の展望について、関本敬祐・八芳園取締役総支配人に話を聞いた。
WWD:ビジネス向けのフロアを新設した経緯は?
関本敬祐・八芳園取締役総支配人(以下、関本):八芳園はもともと結婚式場として設計された建物ですが、近年企業さまに会議やイベント会場として利用していただく機会が年々増加していました。また、海外からのインバウンドのお客さまが増えているということも相まって、今までより大きなスペースの必要性を感じていました。
私たちに求められる内容もより多様化している中、使い勝手良くご利用いただけるのはどんな施設かという問いが、常に浮かび上がっていました。構造やサービス、観点からお客さまも運営側である自分たちもスムーズに動くことのできる環境をイメージした先に、今回のクラブ化と5、6階のフロア構成の構想が始まりました。
WWD:クラブフロアの設計でこだわった点は?
関本:最上階に特別感のある空間を作り出すこと。これまで上層2フロアには、横並びでそれぞれ3会場あったのですが、それらを打ち抜き、各フロア1会場に変更。さらに専用階段でつなぎ、メゾネット構造にしました。
これにより、会議やセミナーからパーティー会場への移動が格段にスムーズになり、時間やムードを途切れさせることなく、熱量を維持できるようになりました。フロアの雰囲気もがらりと変わることで、パーティーへ向かう期待感を演出できます。また、利用者の「会場を独自で作り込みたい」という要望に応え、装置的なあしらいをできる限りそぎ落とし、自由度を高めた点もこだわりの一つです。
加えて、八芳園の象徴でもある庭園との関わり方にも着目しました。私たちが目指したのは、日本庭園という唯一無二の資産を生かしつつ、現代のニーズに合わせた新しい和の表現。本館1階には庭園と地続きの「満月」という会場があり、とても人気を得ています。今回は、「満月」とはまたひと味違う形で庭園を感じていただきたいと、「クラブ フロア」のアプローチを考案しました。当日の利用者だけが専用のエスカレーターでルーフトップテラスから入るという、プライベートアクセスも魅力です。
WWD:会員制のクラブ化にした意図は?
関本:利用者にとってより使いやすい仕組みを考え、クラブ化を導入しました。私たちにお任せいただける安心感を構築するには、会員制が有効だと考えています。さらに、同プログラムをハブとして、八芳園全体の利用価値を高めていきたい。利用者には二度三度と、さまざまな機会にリピートしていただけたら、きっと八芳園ならではの価値を、さらに実感していただけるはずです。
MOVIE DIRECTOR : MAHO TOMONO
VIDEOGRAPHER : AKARI YAGURA
TEXT : CHIHARU MASUKAWA
八芳園
0570-064-128