大丸松坂屋百貨店は7月30日から、全国15店舗のショッピングバッグなどの包装資材を一新する。包材の刷新は大丸が35年ぶり、松坂屋が23年ぶり。新包材は大丸と松坂屋で異なるデザインでS・M・Lの3サイズを展開。まずは一部売場から順次導入する。
宗森耕二社長は「百貨店のショッピングバッグは屋号を象徴するシンボル。大胆な刷新には不安もあったが、今こそ変革のタイミングと判断した」と話す。
「大丸松坂屋とは何者か」
大丸松坂屋百貨店は、2007年に大丸と松坂屋が経営統合し、2010年に誕生した。以降、同社は本店を持たず、全国の土地に根付いた個々の色が強い店舗を展開してきた。しかし、「コーポレートとしての見え方に配慮してこなかった」(寺井孝夫ブランディング戦略室室長)という課題を抱えていた。小売・百貨店業界で競争が激化し、差別化が難しさを増す中で、「大丸松坂屋とは何者か」に向き合う必要があったという。
社内外での議論を通じて「各店舗の印象がバラバラ」という問題の裏に企業としての価値観や思想がバラバラだったという根本課題に気づいた。また、「本店がない」「地域でバラバラ」であることは、画一的で均一になりやすい時代において、むしろ強みでありDNAだと認識。さらに、歴史、土地、うつろい、気持ちの“4つの眼差し”という企業としての共通する価値観に気づいた。
店舗の「つないできた歴史」や「それぞれの地域性」、「時代の空気感や瞬間の美しさ」「お客さまへの心配り」。この“4つの眼差し”の価値観を「百様」と名付け、可視化して社内外に浸透する手段として今回のビジュアル刷新を実施した。
「ショッピングバッグは屋号の象徴であり、歩く広告。お客様への外部的な発信であると同時に従業員にとってのインナーブランディングの役割も大きい」(寺井ブランディング戦略室室長)。
「百様図」でビジュアル化
「百様」の価値観をビジュアル化したパターンが「百様図」だ。曼荼羅や万華鏡のように多様な柄で構成したデザインは日本デザインセンターの三澤遥氏が手がけた。大丸と松坂屋がそれぞれ持つシンボルマークから、丸と四角の形を抽象化し、色は伝統色であるピーコックグリーンとロイヤルブルーを継承した。丸や四角の形を紙から抜き、その台紙を組み合わせて立体的なグラフィックに仕上げた。
大丸と松坂屋のデザインの親和性について「2つのデザインは兄弟・姉妹のような関係性を見出した。よく見ると個性があり、似ているけど違うところがある。紙袋でそんな関係性を表現した」(三澤デザイナー)。小・中・大それぞれ「百様図」の異なる部分のパターンを使用しているため、柄が異なりながらも下辺のラインが横に並べると地平線のようにつながる構成とした。包装紙はそれぞれのイメージカラー1色を使用した「百様図」を採用している。
ショッピングバックの刷新にあたり、全国15店舗の地元顧客に向けた手紙も作成。各地の文化や記憶を反映し、15のパターンを用意。コピーライターの長瀬香子氏が現地取材を重ね、各店の従業員からアイデアを集めて制作した。「土地の匂いが立ち上がるように作成した。地元の方にとってラブレターになり、文化に想いを馳せる時間が生まれたらうれしい」(長瀬コピーライター)。
今回の刷新は2025年までの中期経営計画「変革期」の一環であるとした。従業員にとっても「屋号の象徴」である包材を通じてインナーブランディングを進めてブランド価値の浸透と再認識を図り、次の「飛躍期」へとつなげる。