「ジェイ・ジェイ」「ブリオ」「ハーズ」の編集長を歴任した新倉博史氏が、昨年6月に「ゲイナー」の編集長に就任した。ファッション以外のコンテンツを充実させていくことにより、より厚みのある男性像を提案している。“社会人デビュー世代のためのファッション誌”というこれまでのパブリックイメージを払拭すべく、新倉新編集長率いる「ゲイナー」は、人生経験豊富な大人のためのファッション・ライフスタイル誌としてリニューアルを果たしている。
MAGAZINE DATA
創刊 : 1990年9月
発行 : 光文社
発行日 : 毎月10日
印刷証明付き発行部数 : 8万6367部
定価 : 800円
コンセプト : 社会で活躍する選ばれた大人向けのライフスタイル・マガジン
読者年齢層 : 30 ~ 50代男性
WWDジャパン(以下、WWD):編集長就任以来、「ゲイナー」はどのように変化したか?
新倉博史・編集長(以下、新倉):昨年の9月号から今年の5月号までは、表紙にタレントやモデルを起用せずに、充実したライフスタイルを送るアイコニックなビジネスパーソンを起用してきました。それとともに対象読者層も徐々に引き上げ、車、家電、お酒、食などをはじめとした、ファッション以外のライフスタイル系コンテンツにも力を入れています。6月号では、その新しい方向性をさらにブラッシュアップして明確に印象づけるために、誌面全体を大々的にリニューアルしました。以前は“社会人デビュー世代のためのファッション誌”のようなイメージを持たれることが多かったのですが、このリニューアルによって、30代から50代の男性を幅広くカバーしながら、人生経験的にも所得的にもより豊かな男性像を掲げる、大人のためのファッション・ライフスタイル誌として生まれ変わりました。
WWD:そのような取り組みによって、実際の読者層に変化は見られたか?
新倉:徐々にではありますが、年齢層はやはり上がってきています。でも今の時代は年齢で単純にセグメントするよりも、男性像で広く括ったほうが、実際の読者のマインドにフィットさせやすいと思います。これまでいろいろな経験を積んできた40代以降の男性でも、まだまだ新しいことに挑戦する貪欲な人は多い。彼らは年齢に関係なく、ファッションやライフスタイルに対する攻めの姿勢を持ち続けています。逆に今の若い世代を見ていると、ちょっと元気がないように感じてしまうこともあります。自分に近い範囲の情報を得るだけである程度満足していて、新しい体験に対するモチベーションが低いように見受けられます。ラグジュアリー・ファッションからカジュアル・ファッションまで、高級レストランから赤提灯の居酒屋まで、シーンに合わせた幅広い選択肢を持つことで、男としての厚みも増していくので、新しい「ゲイナー」では、そんな大人の男の品格のような点も提案していきたいと思っています。
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コラム① 今後のポテンシャルを感じるEC連動企画
これまで「タテオシアン」のブレスレットや「ディレツィオーネ」のベスト、「オロビアンコ」のニットジャケットなどを販売している
読者からの強い支持を受ける人気通販企画「ゲイナーエスプレッソ」。企画に賛同したクライアントから全面協力を受け、限定のコラボ商品を誌面と自社ECサイトにて展開している。5月号では小田急百貨店新宿店とのコラボレーションのもと、ウエアやバッグを含む4アイテムを店頭とウエブ上で展開した。開始から1カ月が経過した時点で、4アイテム中3アイテムが完売している。
WWD:リニューアル号ではロゴも一新され、表紙の印象が大胆に刷新されているようだが?
新倉:長年使ってきたロゴを変えるのは正直忍びなかったのですが、やるからには思いっ切り変えてやろうと思って、斜体から立体に変更しています。表紙に起用した田中カール(通称カール大帝)は、新しい「ゲイナー」のメインキャラクターです。今までは特定のモデルを立てずに群像的な打ち出しをしてきましたが、これからは彼が「ゲイナー」的な男性像の代弁者となります。時代の流行を意識しながら、常に自分のスタイルは崩さない。遊び心に溢れていながら、その立ち居振る舞いはどこまでも上品。そんな美的分別のある男性像を、田中カールはうまく表現してくれます。
WWD:ビジュアルづくりにも変化が見られるが?
新倉:以前よりも明確に大人路線を打ち出せるように、今回のリニューアル号では意識的に重みを出しました。ファッション写真というよりは、ライフスタイルの1シーンを切り取ったような情景にこだわりました。何気ない仕草だけど、そこにいるだけでかっこいい。そんな男性像を表現しています。全部のページを重くするとまた別物になってしまいますが、主役の田中カールが立つページであれば、このぐらいドラマチックなビジュアルにしたほうが印象に残りやすいと思います。
WWD:誌面以外での取り組みは?
新倉:ブランドとタイアップした読者イベントを、年に3回ほど開催しています。昨年の10月には「バーバリー・ブラックレーベル」とのタイアップで、本誌のスタイリストが読者をコーディネートするというイベントを阪急メンズ大阪と福岡岩田屋本店で開催しました。どちらの店舗でもとても反響がよく、阪急メンズ大阪の店舗では、イベントの1日の売り上げとして過去最高額を記録したようです。こういったイベントを通して読者のリアルな感覚を理解していくことで、雑誌と読者の関係性はより親密なものとなります。今後はファッション以外の車や家電、飲食系などのイベントも積極的に開催します。
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コラム② 最高売り上げを記録した誌面連動ショップイベント
イベントと同様に、誌面には竹財輝之助を起用した
「バーバリー・ブラックレーベル」とのコラボレーション企画として、阪急メンズ大阪と福岡岩田屋本店で誌面連動イベントを開催。誌面に登場したモデルとスタイリストによるトークショーの後、スタイリストが来場者の個別相談に応えた。スタイリストは「ゲイナー」をはじめ雑誌や広告で活躍中の久保コウヘイ、モデルには俳優の竹財輝之助を起用。人気スタイリストに直接スタイリングを指南してもらえる希少な機会は、地方の読者にとっても刺激的な体験になった。
WWD:誌面連動型eコマース企画「ゲイナー エスプレッソ」とは?
新倉:誌面で掲載された商品をネットから直接購入できる仕組みですが、ほとんどがブランドとコラボした限定商品。ブランドのショップでも販売されますが、毎回ネット上の反響は大きく完売が続いています。誌面でもページ数を割いて、できるだけ贅沢な見せ方をしています。商品ありきの企画なので毎号実施とまではいきませんが、今後さらに注力していきたい分野の一つです。協賛してくれるブランドがあれば、“1冊まるごと”なんてこともやってみたいですね。ここでも「ゲイナー」が考える大人のライフスタイルを、ファッション以外のアイテムを通して提案していければ面白いと思っています。
WWD:リニューアルによってメンズファッション誌の激戦区に名乗りを上げたが、他誌との差別化は?
新倉:正直他誌のことはあまり気にしていません。ただ弊社ではよく“見たことのないページをつくれ”と言われているので、もともと他誌っぽい打ち出しは避けるようにしています。さらにモードファッションやギラギラしたライフスタイルを提案しない代わりに、常に読者にとってリアルであることを意識しています。ライフスタイルのさまざまなシーンを自分らしく楽しむために、本当に必要なものを選ぶ行為こそが、結果として他誌との差別化にもつながっていると思います。
PROFILE:1983年、光文社に入社。84年に「クラッシィ」の創刊に携わり、「ジェイ・ジェイ」編集部を経て99年に「ブリオ」を創刊。翌年編集長に就任する。2007年には「ハーズ」の創刊編集長、広告企画部を経て、14年6月から現職。酒好きということもあり、編集長就任以来ウイスキーや日本酒の企画が充実している
コラム③ 編集長行きつけのお店は?
かぶき本店(神田)
名物のいわし料理が絶品。いけすに泳ぐ新鮮ないわしを刺身で楽しんだあとは、骨せんべいも欠かせない。良心的な価格帯も魅力です。
味坊(神田)
羊と香菜好きにはたまらない、中国東北地方料理の店です。おっさんぽいお店のほうが、なんだか落ち着くんですよ。