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H&Mのサステイナビリティ責任者とクリエイティブ・アドバイザーに聞く 使命と最新コレクション秘話

 H&Mは、ファッションとサステイナビリティを融合させた象徴的な施策として、毎年、“H&M コンシャス・エクスクルーシブ(H&M CONSCIOUS EXCLUSIVE)”のコレクションを発表している。今年は4月19日に発売するが、セシリア・ブランステン(Cecilia Bransten)環境サステイナビリティ統括責任者と、デザイナーズコラボなどでもおなじみのアン・ソフィー・ヨハンソン(Ann Sofie Johansson)クリエイティブ・アドバイザーにメールインタビューを行い、あらためてコレクションの意義と、H&Mのサステイナビリティに対する考え方を明らかにする。

WWD:H&Mが目指すサステイナビリティとは?

セシリア・ブランステン環境サステイナビリティ統括責任者(以下、ブランステン責任者):最終的に私たちはクオリティーやスタイルの点で妥協することなく、かつ誰もが手に取りやすく価格もお手頃なサステイナブル・ファッションを創り出していきたいと考えています。私たちは、ファッションとこの地球に対して愛着を抱いています。ですから、自分たちの周囲の世界に与える影響について、常に考えています。衣服のライフサイクルの各段階、つまりデザインコンセプトからお客さまの手に至るまで、一貫して意識的な選択をすることにより、変化をもたらすことが可能になるのです。とりわけ“コンシャス・エクスクルーシブ”は、新しいサステイナブルな生地を開発し、社内で初めて試すことができるプラットフォームとなっています。そして、サステイナブルなファッションの境界線をこれからも押し広げ続けます。サステイナビリティとファッションは、互いに排他的な関係ではありませんし、そうあるべきでもありません。私は、“コンシャス・エクスクルーシブ”コレクションが、その証明であると確信しています。

WWD:クリエイティブの側面から見たときの“コンシャス・エクスクルーシブ”の位置付けとは意義は?

アン・ソフィー・ヨハンソン=クリエイティブ・アドバイザー(以下、アン・ソフィー):“発展とイノベーション”に焦点を当て、サステイナブル(持続可能)なファッションの可能性を広げていく、上質でハイエンドなコレクションです。H&Mのファッションとサステイナビリティの発展、そしてイノベーションをさらに推し進めることです。サステイナブルな素材に最新の技術を取り入れ、「サステイナブルなファッション」がいかに美しさと両立できるかに挑戦しています。私たちは、見ても美しい、触れても美しい、着る人が大事にしてくれる真にサステイナブルなコレクションを作りたいと思っています。

WWD:今回の目玉新素材「エコニール(ECONYL)」とはどのような素材なのか?

ブランステン責任者:今年初めて導入した、漁業用網やナイロン廃棄物などから再生されたナイロン繊維100%で作られた、気候への影響を軽減し、きれいな海を守る素材です。イタリア企業が手掛けているもので、イタリア、ドイツ、スロベニア、クロアチア、イギリス、アメリカ、タイ、中国の15カ所の工場で作られています。従来は競技用ウエアや水着用として使用されてきたものを、私たちは2つの異なる美しいレースのドレスに作り上げました。今回のコレクションの中心的な役割を果たしています。モックネックとボリュームのある腕部分、ワイドカフを特徴とするスレートグレーの長袖のミニドレスと、ハイネックと膝から緩やかに垂れ下がったフローイング・プリーツを特徴とし、ウエディングドレスとしても着用できる白のノースリーブ・ドレスです。

WWD:「エコニール」が新素材として加わったことで、デザインや表現がどのように進化、あるいは拡張しましたか?

アン・ソフィー:コンシャス・エクスクルーシブ用の素材や生地を選ぶプロセスは、毎年変わります。デザイン主導となることもあれば、最新イノベーションに触発され、直ちにそれらを試してみたい時もあります。今回はレースを開発するというアイディアから「エコニール」にたどり着きました。そして改めてこのプロジェクトは私たちにとっての重要な実験の場になっていると感じました。最新のサステイナブルな生地を小さな規模で試すことを可能にしている一方で、より幅広いコレクションの中に組み込むこともできるようになるからです。

WWD:今回のコレクションのインスピレーション源は?

アン・ソフィー:スウェーデンのアーツ・アンド・クラフツ運動(Arts and Crafts Movement in Sweden)です。私たちはこのプロジェクトでは常に、サステイナブルな素材とプロセスの開発において、テクノロジーとイノベーションに挑戦しています。一見対立するようなテーマに見えますが、どちらも究極的にはクラフツマンシップを象徴しており、物事の起源に対する敬意を表しているのです。デザインのスケッチブックからお客さまのもとに届くまでの全ての過程でサステイナビリティを継続的に意識することは、私たちにとって重要なことです。過去のコレクションやプロセスを基に学習を積み重ね、必要に応じて修正していくこともできるのです。私は、サステイナビリティとファッションを、別々の存在として考える必要はないと考えています。“コンシャス・エクスクルーシブ”は、サステイナブルなファッションが本当に存在するという証なんです

WWD:このタイミングで元祖スーパーモデルとして知られるクリスティー・ターリントン・バーンズ(Christy Turlington Burns)をキャンペーンに起用している。その理由と、そこで表現したかったこととは?

アン・ソフィー:私たちは彼女にこのコレクションの顔となっていただき、とても喜びを感じています。彼女はまさに“スーパーモデル”を地で行く人物。ですが、もっと重要なのは、彼女の長年にわたる世界中の人道的主義に基づく理念と、彼女の献身的な姿であり、畏敬の念を抱いています。彼女の視点と仕事は、H&Mが推し進めたいコンシャスな行動に深く関連付いているので、素晴らしいキャンペーンになると期待しています。

WWD:古着回収や、オーガニックコットンの使用、リサイクル素材の使用などで、最新で掲げている数値目標や、その進捗状況について教えてください。

ブランステン責任者:当社では20年までに、毎年最低でも2万5000tの布製品を古着回収活動を通じて集めることを目指しています。現在、H&Mはベター・コットン・イニシアチブによって認定されたコットンの世界最大のユーザーとなっており、16年には、H&Mのコットンの合計使用量のうち43%がサステイナブルな資源から調達されました。20年までにはそうしたコットンのみを使用するのが目標です。現在、H&Mグループが衣料を製造するために使用する素材のうち26%は、オーガニック素材、再生素材その他のサステイナブル生地となっています。目標は、当社の素材使用量全体に占めるその種の生地のシェアを、毎年増大させていくことです。そのために、私たちはもっと多くの人々に対し、環境に配慮した選択肢をより多く提供し、そうした素材の使用を促す手助けをするとともに、さらなるイノベーションに向けて需要を創出します。また、ほぼ全ての社内業務で再生可能エネルギーを使用しており、そのシェアは15年の78%から16年には96%にまで高まっています。二酸化炭素の排出量は、前年比で47%削減しましたが、これからも削減し続けることに専心します。

WWD:今年1月に開催されたダボス会議で「世界で最も持続可能性のある企業100社(Global 100 Most Sustainable Corporations in the World)」の57位に選ばれた。

ブランステン責任者:H&Mグループの意欲的なサステイナビリティの戦略が、世界が循環型で再生可能なファッションに向かう変化を先導し、社内外の人々に好意的に受け入れられてきたことを誇りに思います。私たちは、協力して透明性の高い働き方でステークホルダーとの関係を強化し続けることに努めています。当然ながら、私は個人的にも、自分たちが成し遂げていることに非常に強い誇りを感じています。私たちの野望をさらに進展させ、私たちの年次サステイナビリティレポートに示された目標に近づくことを、心から楽しみにしています。