キャリアコラム

元「アンタイトル」デザイナーが独立 最大の武器は“発想力”

 デザイン事務所レス イズ モアの平山展子・代表は、ワールドの「アンタイトル(UNTITLED)」でデザイナーとして長らく働き、2016年7月に独立した。20年以上にわたり大手アパレルで服作りに関わってきた平山代表はその経験を生かし、企業のブランディングやコンサルティングから売り場のディレクション、自分のブランド「レス イズ モア プラス(LESS IS MORE +)」にいたるまで幅広い分野で活動している。それぞれの分野で出会った人々と横断的につながりながら新たなプロジェクトに挑戦していくユニークな働き方だ。大手アパレルでの経験をどう今のキャリアにつなげているのか、平山代表に話を聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):ワールド入社後のキャリアは?

平山展子・代表(以下、平山): 入社3年目の1997年に「アンタイトル」に配属されて、2004年までデザイナーとして働いていました。従来のデザインワークと並行して、内装、カメラマン、外部ディレクターといった社外の人たちと社内をつなぐ仕事をしていて、その時期にトレンド、時代の流れ、ものの価値などを見ながらどう商品を決定していくのかを感覚的に学びましたね。外部の人と社内とでは考え方も感覚も違うので、それをどうすり合わせるかを考えていました。

WWD:その感覚はどう養っていったのですか?

平山:服のデザインからVMDにいたるまで、お店に足を運んでお客さまの様子を見たり、自分なりの検証やトライを繰り返しました。商品も、確実に売れそうなもの、トライするもの、検証すべきものと3つに分けることができます。ただ自分の感覚と会社の指標は違うので、そこのすり合わせも考えていました。自分がプライベートで通っていたセレクトショップにも行ってディスプレーや考え方の違いを観察したりしていましたね。

WWD:具体的にはどういう違いを感じましたか?

平山:例えば商品の置き方一つとっても企業によって差は明確です。同じサンダルでも手に取りやすい1万円の商品をフロントに置くショップもあれば、5万円の商品を置くショップもあります。5万円のサンダルを前面に出すとお客さんは引いてしまいそうですが、それに合うトップスを買いやすい値段にしてフロントで見せることもできるなどの工夫ができるんだな、と学びました。

WWD:その後、新ブランド立ち上げや海外事業部を経て「アンタイトル」に戻られました。

平山:13年に「アンタイトル」のリブランディングを任されました。新しい要素を入れていかなくてはいけないということで、他ブランドに先駆けてMA-1の買い付けや、スニーカーブームに乗って「ケッズ(KED’S)」とのコラボスニーカーを発売しました。展示会では刺しゅう作家のテレサ・リムさんの作品や、ホンマタカシさんが撮影したビジュアルの展示など、服だけではないブランドの見せ方を工夫しました。

WWD:服だけじゃない見せ方を考えた理由は?

平山:服は女性のその時の気分を表現していくと同時に、新しい女性像と生き方を提示していく役割もあります。“こういう風になれたらいいな”というのを刺激できる一つのツールが服。その役割を発揮するためにも、服だけを見せるより世界観全体を表現した方がより伝わりやすいと考えました。

WWD:独立されて立ち上げたデザイン事務所ではどのような業務をされていますか?

平山:企業のブランディングやコンサルティング、アドバイザー、売り場のディレクションなどをメーンに行っています。「レス イズ モア プラス」という自分のブランドも立ち上げ、17-18年秋冬から本格始動します。

WWD:クライアントはアパレル企業がメーンですか?

平山:アパレル企業よりも生地メーカーや個人のクリエーターなどが多いですね。その他にもタオルメーカーや百貨店などさまざまです。生地メーカーや工場というところでいくと、今の時代にあった商品の作り方や流通の仕方などのアドバイスを行っています。工場がデザイン力を持つようになればそれをそのまま販売できて、消費者にもメリットが出やすいと考えています。若手クリエーターのデザイン力を生かして工場がものを作り、それを私がディレクションに関わっている売り場で販売するなど、少しでも良いものを作りやすい環境と流通の仕組みを実現する方法を考えています。同時に、小売りやメーカー側にもアプローチをします。これまで培ってきたトレンドの先読み力を生かし、次のシーズンのトレンドを小売りに伝えると同時に、彼らがメーカーに提案しやすいような資料を作成しています。

WWD:具体的にはどういう取り組みをされているのですか?

平山:例えばジャカードがトレンドになりそうであれば、ジャカードが得意な工場を提案することもあります。在庫を持つアパレルメーカーにとっても、小売りからの提案があれば商品が作りやすいですよね。今は消費者の方が情報を持っていたりするので、価値のつけ方がすごく難しい時代です。メーカーは情報を持ってはいますが、在庫というリスクを考えるとなかなかチャレンジングなことができないのが実情。これからの時代はそこを小売りがサポートして、一緒に供給していく体制を作っていかなければいけないと考えています。

WWD:独立して自分のブランドや事務所を開こうと思っている若手へのアドバイスは?

平山:常に考えて、常にアイデアを出すことが大事だと思います。状況に負けない発想力、想像力と言ったらいいんでしょうか。ある意味で反骨に似た精神が必要だと思います。大手メーカーは、実行していくための手立ては持っているけれど、最初のアイデアが思いつかなかったり抜けていたりするので、そこに対する提案はすごく重宝されるし、喜ばれます。あとはやってみようかなと思わせるまで、根気よくアプローチしていくことも重要ですね。

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