
ビューティ賢者が
最新の業界ニュースを斬る
ビューティ・インサイトは、「WWDJAPAN.com」のニュースを起点に識者が業界の展望を語る。今週は、トレンドとの向き合い方の話。(この記事は「WWDJAPAN」2025年7月28日号からの抜粋です)
PROFILE: 渡邉弘幸/ウカ代表取締役CEO

【賢者が選んだ注目ニュース】

サロンのお客さまが「ラブブ」のバッグチャームを付けているのが目に留まった。優雅で大人な印象のある人がどうしても欲しくなってメルカリで購入したというから驚いた。それ以来、電車で移動するときやショッピングセンターに視察に行ったときに、バッグについているものに注目するようになった。先だって関西に出張に行った際には高校生だけでなくインバウンド客のバッグにたくさんのチャームが付いているのをよく目にした。そういったことから記事で取り上げられている「ラブブ」の勢いを感じたのだった。現在はファッションブランドとのコラボが話題だが、今後はビューティブランドとのコラボに期待がかかる。
スタッフとバッグチャームについて話してみたところ、30代のスタッフたちにとってはなんだか懐かしい感覚があるようだった。学生時代にスクールバッグや携帯電話をたくさんのマスコットでデコったという。大人たちは懐かしさを感じる一方で、10〜20代にとっては明るくポップな雰囲気が平成レトロとしてトレンドになっている。新しさと懐かしさを兼ね備え、幅広い年齢層に受け入れられているようだ。
振り返れば「ウカ」ではネイルオイルのデビュー2年後に、「ア ベイシング エイプ®」とコラボしてネイルオイルをはめ込めるベイビーマイロ®︎の携帯ストラップとホルダーを数量限定で制作した。親交があったNIGO®さんが提案してくれた。あっという間に売り切れて、その後高値がついたのをふと思い出した。ネイルオイルは常に爪につけていてほしいという思いから開発したアイテムだったので、バッグチャームにしたら相性が良いだろうと、改めて思ったのだった。
直近ではネイルケアへの意識が高まり、ネイルオイルが改めて人気を集めている。同時にジェルネイル人口が増え、サブスクでケアや単色ネイル、クイックジェルなどを提供するサービスが登場している。はやっているバッグチャームのアイデアを借りて、ネイルケアをプロモーションするのもありかもしれない。
日本の香水市場の盛り上がりは続くか
毎年初夏に北海道から九州まで全国のウカストアを視察し、エリアマネージャーたちとその館特有の顧客の来店環境や製品の動きなどを確認し、店長やスタッフとコミュニケーションを取っている。ウカストアは主にビューティブランドが集まるフロアに出店しているが、昨年あたりから顕著に感じているのがフレグランスブランドの勢いだ。
フレグランスブランドの店頭は試験管やガラスドームで香りを試す人たちでにぎわっている。平日であれば学校帰りと思われる10代を見かけるし、週末になればインバウンド客で大盛況だ。記事にある通り、一挙に香りブームが押し寄せている。日本らしさのある香水を求めるインバウンド客も多く、この調子で盛り上がり続ければ香水市場といえば日本とまでなるのかもしれない。
僕は香りの仕事に携わって長いが、駆け出しの頃日本人は香りに疎いといわれていた。しかしコロナ禍を経て、欧米のように対人的に香りを楽しむだけでなく、自分の心地よさや癒やしのために香りをまとう習慣が花開いた。EUから輸入する原料は高騰しているため、国産の香料はバブルともいえるほど盛り上がりを見せている。これまで香水といえばフランスだったが、日本の原料や調香師が挑戦する環境が整い始めている。「ウカ」でも8月2日に“プチューム ガールズ オンザ ビーチ”を発売する。ヘアオイルとして人気があり、多くのお客さまから香水を出してほしいと熱望されていたためフレグランスに落とし込んだ。レモンやミント、バニラ、ムスクが香る夏にぴったりの香りを提案する。
盛り上がる一方で気にかかることもある。良いものから悪いものまで、あらゆる製品が市場に出てきている昨今。AIによって短期間で香水を作る手法も出回り始め、ファッションやビューティブランドの新規事業といえば香水というムーブメントがある。もともと香水砂漠といわれるほどパイが少なかった市場ゆえに盛り上がりの大きさにばかり目がいっているのではないだろうか。あっという間に競合が溢れ、花開こうとしていた市場に悪影響が出てしまうのではないだろうか。せっかく訪れたチャンスを逃さないために、モノ作りの姿勢を崩すことなく向き合いたい。