文化服装学院とSHIBUYA109エンタテイメント、ZOZOが連携し、古着を使って制作した作品を通じて社会課題を発信する産学連携コラボレーションを実施。1月24日、「Z世代が感じる社会問題×アップサイクルファッション」をテーマにした15作品の公開プレゼンテーションを文化服装学院で行った。
この取り組みは、学生たちが社会課題を深く理解し、ファッションを通じた解決策の発信が目的だ。文化服装学院ファッション流通専門課程の1年生250人が40チームに分かれ、ZOZOの物流拠点を訪れ選んだ取扱基準に満たないゾゾユーズド(ZOZOUSED)の古着約600点を使用して作品を制作。その中から選出された15作品がプレゼンテーションを行った。
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学生たちはチームごとに社会課題を探し、データや資料をもとにその課題における現状と自分たちの考えを、ビジュアルと共に説明。その課題に対しての自分たちなりの回答を、古着を用いて作品に落とし込んだ。それぞれ作品をモデルに着用させて短い動画も制作し、メッセージと世界観を伝えた。「自殺」や「学びの格差」「飢餓」「原爆の風化」「睡眠障害」「アイデンティティクライシス」など、学生たちが選んだテーマは多岐にわたった。
審査基準はテーマ発見・分析力、コンセプト発想力、アップサイクル度、ビジュアルクリエーション力、プレゼン力の5項目。最優秀賞を獲得したのは、佐瀬はるかさん率いるチームで、課題は「ルッキズム」だ。「日本の10代の女性で自分の容姿に自信がないと答えたは93%」といったデータと共に外見至上主義の要因と現状、対策をポップでカラフルなビジュアルにまとめ、個性を認め合う世界を求めて、“唯一無二の華“をテーマに作品を作った。個性を象徴する花と蕾に、人々の感情を表す目と個性を認め合う心を表すモチーフがにぎやかに組み合わされたドレスを披露した。
2位は飯山紗世さん率いる「学びの格差」。誰もがしたい学びをできる社会の実現を願い、右半身が富裕層、左半身が貧困層をイメージしたドレスを制作。ボディーを横から見せ、貧困層側からは富裕層側の華やかなドレスが見えるが、富裕層側からは貧困層側が見えないという問題提起をうまく織り込んだ。
3位は明比貴奈子さん率いる「痴漢や性被害の二次被害について」。性被害に遭った際の「スカートが短いから」といった周囲の反応、偏見、固定観念による問題を指摘。そうした偏見に傷つきながらも対抗心を燃やすエネルギーを“女王蜂”をテーマにした作品で表現した。ボロボロな心と希望を左右の羽で表現し、「被害者は何も悪くない、ファッションの自由を奪うな」というメッセージを込めてロングスカートを切ってミニスカートにした。
ZOZOによる特別賞、ソウゾウのナナメウエ賞を獲得したのは、榎本苺さん率いるチームの「いじめ」。赤と青と紫をそれぞれ加害者、被害者、傍観者として、“表裏一体”をテーマに、「誰がどの立場になってもおかしくない」という自分事化を訴えた。
ファッションで社会問題を自分事化する

SHIBUYA109エンタテイメントは2021年から文化服装学院と産学連携プロジェクトを実施している。入賞チームの作品を渋谷109で2月25日から、そのほかの12点を3月4日から展示する(3月10日まで)。審査した石田直裕プロモーション・SNSリサーチ担当ディレクターは、「多様で、深い部分の社会課題に取り組んでいて、学びが多かった。こういう作品を展示できてうれしい」と語った。
ソウゾウのナナメウエ賞を選出したZOZO CI本部フレンドシップマネージメント部の梅澤孝之ディレクターは、「いじめについて、自分の体験をベースに、被害者、加害者だけでなく傍観者の視点を入れたことがナナメウエに感じた」と評した。同賞と最優秀賞は、ゾゾタウン(ZOZOTOWN)内のサステナビリティ情報発信コンテンツ「elove by ZOZO」に掲載される。同部の李銀珠さんも「どの課題も考えさせられるテーマだった。皆さんと同じ世代であるメインユーザー層に見せていきたい」と語った。
同じく審査員を務めた鈴木ゆうみ「ユウミアリア」デザイナーは、「自分たちのアイデアを最後までよく仕上げた。これからも自信を持って活動してほしい」と語り、文化服装学院の相原幸子学院長は「普段の作品とは違い、社会問題とアップサイクルの組み合わせの審査は難しかった。1位は、作品が際立っていて、見ている私たちを元気にしてくれる。文句なしの1位だった」と総評。「入選しなかった作品も含めてどれも良かった。参加したことに意義がある」と学生たちを激励し、会を締めくくった。
学生たちがピックアップした社会問題も興味深かったが、その課題についての考えをどう服で表現するか。ただ問題提起するだけでなく、「一緒に考えよう」と促す作品が多く、感心した。渋谷109やゾゾタウンで発信されることで、さらに輪が広がるだろう。