PROFILE: ペニー・ルオ/社長

1923年にバーニー・プレスマンがニューヨーク・マンハッタンの7番街17丁目に創業し、唯一無二のスペシャリティーストア(専門店)として世界的に知られたのが「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」(以下、バーニーズ)だ。その精神は、バーニーズ ジャパンに色濃く受け継がれている。ペニー・ルオ(PENNY LUO)社長の下、復活に向けて「スクラップ&ビルド」が進む。
お客さまの潜在的ニーズをさらに深掘りして
ファンを作る

WWD:7月1日に社長に就任した。2024年を振り返ると?
ペニー・ルオ=バーニーズ ジャパン社長(以下、ペニー):チャレンジの年だった。23年からバーニーズに携わっているが、7月に代表に就任し、組織を変え、新しいメンバーも加わった。世間では百貨店やラグジュアリー市場が盛り上がっていたが、バーニーズはその波に乗れなかった。今の時代の波に乗れない理由を分析し、「ビルド」を行う準備段階、「スクラップ」の期間だった。
WWD:具体的にはどんな点が課題なのか?
ペニー:経営の土台となる収益構造の見直しや、新規顧客の獲得、ブランド価値と認知度の向上の必要性など。コロナ禍から販促費の抑制を続けていたので、マーケティングやPRがうまくできていなかった。扱う商品の価格帯も、物価高騰による価格改定で必然的に高くなり、手に取りやすい価格の商品が薄くなっていた。ラグジュアリーなイメージを保ちながら、これから消費力がついてくる方々に向けた商品とブランド、ファッション感度の高い方たちに刺さるような商品や旬のものを戦略的にそろえていく。われわれの顧客の95%が国内に住むお客さまで、インバウンドのお客さまを取り込めていないことも波に乗れなかった要因の1つ。逆に、強い顧客基盤も改めて見えた。いろいろと勉強したので、これからはアクションを大胆に実行していくフェーズに入る。
WWD:11月に銀座店で行った顧客向けクローズドイベントも購買意欲の高い顧客がショッピングを楽しんでいた。
ペニー:銀座本店を皮切りに旗艦5店で特別な体験をロイヤルカスタマーに提供する機会を作り、反応もお買い上げ実績もとても良かった。本当のニーズを知るいい機会になり、売り場のモチベーションアップにもなった。並行して、自社ブランドにも力を入れてきた。若い層に向けて新ロゴを発表し、スエットやトートバッグなどカジュアルで買いやすいアイテムを発売した。2月2日まで神宮前にポップアップストアを出しており、そこでは約300種類から選べる有料ワッペンでカスタマイズも楽しめる。新ロゴもポップアップも社内から出てきたアイデアで、挑戦するのにはいい機会だと考えた。ファッション感度の高い若い層にアプローチでき、バーニーズを知るインバウンド客も来店している。ここで出会ったお客さまにどう旗艦店にも足を運んでもらうかが重要。各旗艦店でもアート系やカルチャー系を含めてポップアップを積極的に開催し、お客さまの潜在的ニーズをさらに深掘りしてファンを作っていくつもりだ。
WWD:改めてバーニーズの強みとは?
ペニー:“バーニーズ”自体がブランドであること。商品知識とバーニーズへの愛にあふれ、お客さまとの深い関係作りや販売力に長けた社員、人というソフトの部分こそ、最大の強みだ。加えて、銀座をはじめ、六本木、横浜、神戸、福岡といった主要なエリアに立派な旗艦店を持っている。スペシャリティーストアとして、買い取りビジネスをこれだけの規模で展開できている企業は少ない。「マジックミックス」という言葉がバーニーズにはあるが、さまざまなブランドとオリジナル商品の組み合わせによるスタイリング提案ができるのも強みだ。
WWD:25年の計画は?
ペニー:まずは収益をきちんと確保するため、ビジネスモデルを見直す。同時にストアとしての魅力を再構築する。高揚感や心動かす仕掛けを作りつつ、ロイヤルカスタマーに対してはより特別感のあるサービスを提供できるスペースを作る。銀座本店から始めて、順次に店舗の改装に着手する。また、メンバーシップ「マイバーニーズ」を事業の新たな柱にする。飲食や旅行の情報提供や車や家の相談など、ライフスタイルコンシェルジュ的な役割を担えるようにしたい。ロイヤルカスタマーに向けたサービスをすることで派生する新規事業もあり得ると考えている。下期にはいろいろなプロジェクトを披露できると思う。
WWD:未来に見据える可能性は?
ペニー:スペシャリティーストアとして唯一無二のポジションの確立にあると思う。バーニーズで受け継がれてきた“TASTE, LUXURY, HUMOR”というステートメントがあり、それを磨き上げ、商品、サービス、環境を通して具現化する事によって必然的にマーケットにおいて差別化できる自信がある。日本の事業基盤を再構築し、アジアマーケットへの進出、ニューヨークへの再出店を社の大きな目標として掲げている。グローバルでも最近メキシコにバーニーズ レジデンスが立ち上がり、ブランドビジネスを拡大している。日本は、スペシャリティーストアとしての独自性を磨きつつ、これからはアジアのデザイナーのインキュベーターとしても機能したい。
実現の可能性はゼロじゃない私の夢
エベレストやK2など、さまざまな山があるが、アマチュアが登れる1番高い山がキリマンジャロ。トレッキングが好きだが、登るのは大変。でも登り切ると全部忘れて、また「登りたい!」となってしまう。ハードな山に登りたいタイプ(笑)。
1923年創業の米国発スペシャリティーストア「バーニーズ ニューヨーク」のライセンシーとして、89年設立。イタリアを中心としたヨーロッパおよびアメリカの紳士服、婦人服、洋品雑貨、フレグランス、ギフト雑貨などを販売及び輸入する。銀座、六本木、横浜、神戸、福岡に旗艦店を構え、アウトレット、期間限定ストアを展開する
バーニーズ ジャパン
050-3615-3600