ファッション

松屋発ジュエリー「エネイ」が支持される理由 スタイリスト推しとポップアップでファンが拡大

松屋が展開するジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」が好調だ。同ブランドは2021年8月にデビューした。日常のファッションの一部としてジュエリーを楽しんでほしいという思いが込められたブランドでラボグロウンダイヤモンドを使用。「セルヴォーク(CELVOKE)」などのビューティーブランドを手掛けた田上陽子がブランディングディレクターを務めており、松屋がブランドコンセプトから生産、販売まで手掛ける。

販売は、松屋銀座本店のコーナーとEC中心で、国内各地でポップアップショップを開催。デビューして約2年で、国内各地のファン層を広げている。「エネイ」を手掛ける島田成一郎・松屋銀座 事業推進部 スタートアップ事業課 課長に話を聞いた。

スタイリスト推しでEC売り上げがアップ

「エネイ」は、ショールームでスタイリストへ貸し出ししながら、インスタグラムなどのSNS発信を行ってきた。島田課長は、「3月〜7月はブランド全体で前年同期比70%増だった。ECは同4倍と伸長し、ファンが着実に増えていると感じる」と語る。現在売り上げの割合は、ECが55%、店頭は45%とEC比率が高いのも特徴だ。「エネイ」はスタイリストに人気が高く、雑誌などへの露出が多い。2月に大草直子が主宰するメディア「アマーク(AMARC)」で「エネイ」を紹介したところ、大きな反響があった。「『エネイ』では、スタイリストやタレントのおすすめが売り上げに大きく反映される。それにより、現物を見ないでECで購入する層が増えており、都内の顧客もいる。消費者がECでジュエリーを購入することに慣れたということだろう」と島田課長。D2Cジュエリーブランドが増え、ジュエリーをECで買うことに抵抗がなくなってきているとはいえ、ブランドの認知がないと、なかなかファンはつかない。

ポップアップで地方のファンを獲得

ブランドの認知度アップに一役買っているのがポップアップだ。「エネイ」は、全国の百貨店中心に年間8回ポップアップを開催する。島田課長は、「デビュー時の発表後すぐに伊勢丹新宿本店(以下、伊勢丹新宿)から、インスタグラムを通してアプローチがあった。ポップアップは、実物を見てもらういいチャンス。地方のファンが増えたし、ブランドの認知度がアップした」と話す。2022年1月に伊勢丹新宿でポップアップを開催後、阪急うめだや京都大丸、名古屋高島屋、阪急博多、ニューマンなどでも行った。「2年が経過し、ブランドが浸透してきた。リピート率が高く、1ヶ月後には別のものを購入するファンもいる」と同課長。百貨店が運営するジュエリーブランドという点で、安心感があるのも一つのポイントだ。

アクセサリーのデザインを本物(地金)で提供

島田課長は、「『エネイ』はコーディネートを楽しむジュエリーだ。多様性がテーマなので、ファッションの一環として楽しみながら個性を表現できる。それが今っぽくて受けているのだと思う」と語る。華奢なデザインとボリュームのあるものやゴールドとシルバーなど地金を自由にミックスするのが「エネイ」のスタイル。コーディネート提案は、店頭やインスタグラムで行う。「デザインは社内のチームで方向性を決めて、フリーのジュエリーデザイナーに依頼する。ファッションとしてジュエリーを提案しているので、季節感も考えながら、年間4〜5つのコレクションを提案する」。

売れ筋は、デビュー時に登場した“ピクセル”シリーズ。18金とプラチナのボールチェーンのジュエリーで、1連リングは1万円台から、ネックレスは7万円程度と値頃感抜群。ずっと売れ続けているという。18金を使用したゴージャスな印象の“ヘリンボーン”も人気で、ブレスレットが5万円、ネックレスが9万円と、18金の割には手に取りやすい価格帯だ。シルバーのコインネックレスも好調で、コインとチェーンのセットで5万〜9万円。この価格が実現できるのは、松屋が独自でデザイン、生産、販売まで行っているから。「ファッション感覚のアクセサリーのようなデザインを、本物(地金)で提供するブランドはなかなかない。社内で運営しているので、価格のコントロールがしやすい」。

ゆくゆくは、海外での展開も視野に

日本では、ポップアップを開催しながら卸を始める検討をしている。島田課長は、「ブランドは流行らせると数年で終わる。だから、地道にファンをつくっていきたい。卸は、大手セレクトや地方のブティックなどセレクティブな販路を考えている」と話す。いい物件があれば、2店舗目出店も考えているという。「欧米やアジアなど、海外での展開も視野に入れ、『エネイ』に興味を持ってくれるところと話をしている」と同課長。日本で着実にファンを増やしつつ、海外のファッション感度の高い層へもアピールするブランドとして育てていくようだ。

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