ファッション

三陽商会が「服育活動」を続ける理由 服作りを通じ、物を大切にする子供を育てる

 三陽商会は、子供たちの“服を長く、大切に着る”心を育む「服育活動」に力を入れている。同社のデザイナーやパタンナーが都内の小学校に足を運び、服作りにまつわる出前授業を実施してきた。コロナ禍で中断を余儀なくされるも、動画配信に切り替え、地道な発信を続けている。

 出前授業では、デザイナーの商品企画やコンセプト設計のプロセスをクイズ形式で分かりやすく紹介。野球ボールなど身近な物の型紙の見本を見せることで、服にまつわる仕事への興味を刺激してきた。コロナ禍以降は、「綿ってなに?」「デザイナーとパタンナーって、どんな人?」などをテーマにした動画を自社ホームページで公開している。

 「服育活動」は、同社の社員3人が中心となり運営・実施する。「小さな規模の取り組みだが、『服育活動』は当社の大切な使命だと考えている」と運営を主導する岩崎麻佐子・三陽商会 経営統轄本部 企業コミュニケーション部長。「子供たちが身近な服がどう作られているか知ることは、アパレルという仕事の入り口になるだけでなく、物を大切にする意識の醸成につながる」と考える。「創業80年を迎える当社の最大の価値はモノ作りの中にある考えてきた。世の中にアパレル企業はたくさんあるが、私たちはデザインから設計、製造までを一貫する。一着の服は、たくさんの人の仕事によって作られている。私たちだからこそ、温度感を持って伝えられることがある」。

 同社の「服育活動」にまつわるもう一つの取り組みが、2018年に企業賞として創設した「SANYO服福賞」だ。新宿区とNPOが主催する区内の小学生対象の「新宿区『みどりの小道』環境日記コンテスト」に協賛し、服や布をテーマにした優れた日記を書いた子どもを毎年表彰している。22年度は、賞の創設以来最高となる24校1204点の応募があった。子どもたちは、着られなくなったTシャツやスカートを他の服やエコバッグに作り変えたり、ペットボトルがリサイクルされる過程をまとめたりといったがんばりを、熱心に日記をしたためた。岩崎氏は「何度もコンテストに応募する子や、兄弟や上級生を見て『私もやってみたい』と挑戦してくれる子が出てきている」と手応えを話す。

 コロナ禍が収束した後は、動画発信を継続しつつ出前授業を再開する。「撒いた種を深く根付かせていくことが大事」と岩崎氏。「『服育活動』を通じて『物を大事にしよう』と考える子が増えれば、安易に物が作られ、捨てられる社会を変えていくことにつながる。小さな子どもたちが服作りに興味津々な顔を見たり、真剣に手を動かす姿を見ることは、社員にとってもいい刺激になるはずだ」とし、「今後も三陽商会にしかできないコンテンツを増やし、活動の充実を目指していきたい」と語った。

※『服育Ⓡ』は株式会社チクマの登録商標であり、株式会社チクマの使用許諾に基づき使用しています。

問い合わせ先
三陽商会 企業コミュニケーション部
03-6380-5055