ファッション

ゴルフを変え、社会を変える 「パーリーゲイツ」の信念

 TSIの「パーリーゲイツ(PEARLY GATES)」は国内のゴルフ市場のトップブランドでありながら、伝統を重んじるゴルフの世界では“異端”でもあり続けてきた。ミニスカートやカモフラージュ柄のウエアなど従来のゴルフウエアの常識を打ち破る新しいスタイルを開拓し、根付かせてきた。既成概念にとらわれない挑戦こそ、ブランドの哲学だ。足元ではゴルフブームが加熱する中、業界のリーディングブランドとして「ゴルフの本質的な魅力を伝え、持続可能な文化とし、その先にある人や社会のつながりすら変えていく」(酒井昭征パーリーゲイツ企画責任者)という大きな志を持ち、さまざまな取り組みを進めている。

ゴルフファッションの
常識を変える
ブランドの挑戦の歴史

 ゴルフ場にエポックメイキングなスタイルを生み出してきた「パーリーゲイツ」。中でも2000年代中盤、上田桃子ら女子プロゴルファーの活躍でゴルフの女性人口が増える中、ミニスカートやカモフラージュ柄、ハイカットシューズといった斬新な提案がヒット。“攻め”を重ね、新しいゴルフ場のおしゃれをつくった。

 「パーリーゲイツ」が枠にはまらないのは、ウエアのデザインだけではなかった。コレクションの発表に合わせて、カタログやムービーなどのプロモーションを徹底的に作り込む。“ニューヨーク”がテーマのシーズンは、展示会場に摩天楼を模した巨大なモニュメントを造形。“パーリーゲイツ・エアライン”と題して架空の航空会社をイメージしたシーズンは、展示会場を丸々空港に変えて、搭乗ゲートや免税ブースに商品を展示し、来場者を空の旅に誘った。“アラスカ”がテーマの冬は、極寒の雪原でロケを敢行してカタログを作った。「世界観をつくるためには妥協しない。多少押し付けがましくても、すてきでしょう?着てみたいでしょう?とお客さまを夢中にさせる。そんなアグレッシブさがアイデンティティーだった」と酒井氏は振り返る。

作り手にも光を当てる
“エッセンシャルライン”

 だが2020年初頭に新型コロナ禍が到来し、ブランドの存在意義を見つめ直すことになる。「ゴルフは今の世の中に必要なのか」「果たしてゴルフウエアを作るべきなのか」と思案を巡らせた末、21年春に打ち出したのが“エッセンシャル”と銘打ったベージュ一色のコレクション。アイデンティティーともいえるポップな世界観を封印したのは、「激変する社会に必要不可欠な存在になるため」であり、「そのためには全てをリセットすることも厭わない覚悟」を示すためだった。「『らしくない』と社内からの反発はあった。全国の店長一人一人と丁寧に対話を重ねていくと、中には共感してくれて涙を流す人もいた。ブランドが一つになり、より強くなっていくのを感じた」。

 21年秋から常設化された“エッセンシャルライン”はセーターやブレザーなどを定番品として展開し、ゴルフスタイルの自由化が進む中、ベーシックなデザインを上質な素材で作ることに意味を見いだす。同ラインは日本のブランドとしての価値を高めるべく国内生産にこだわり、23年春からはタグの2次元コードを読み込むことで縫製工場の情報がトラッキングできるようにする。「ゴルフが本来持つエレガントさや優雅さを、モノ作りの面からも掘り下げ、伝えていきたい。今、ゴルフにたくさんの人が興味を持ってくださっている中だからこそ、マーケットリーダーとしてやるべきこと、そして誰もやらないことをやろうと考えている」。“THINK GOLF”をスローガンに掲げてゴルフをサステナブルなスポーツにするための取り組みも進めていく。商品の素材も、可能なものは順次環境に配慮したものに切り替えている。

コロナを経て得た確信
人とのつながりがゴルフの価値

 ブランド本来のエネルギッシュなデザインを徐々に取り戻しながら、「ゴルフが本来持つ人と触れ合う温かさ、かけがえのなさ」にも光を当てていく。22年春のコレクション“LOVED ONE”はアイドルグループのTWICE、家具の「イデー」、愛玩ロボット“LOVOT”とコラボし、フィールドを超えてさまざまな愛の形を表現した。

 「コロナで疎遠になっていた仲間と、久々にゴルフ場で集合することを待ち望んでいる方がたくさんいる」。今冬のコレクションは“ゴルフキャンプ”(キャンプ=仲間)をテーマに、4人チームで着用すると一つのメッセージやデザインが完成する仕掛けを施す。「『今度のゴルフは何を着ていこう?』という、当たり前のことのようだけれど、ゴルフだからこそ感じられるウエア選びの楽しさ」に改めて焦点を当てる。

ゴルフコミュニティーを深耕
ブランドは新たなステージへ

  年に30回開催するブランド主催のゴルフコンペ「パーリーゲイツカップ」を軸とした顧客とのコミュニティー形成にも力を入れる。「その土地ならではの風土や文化と結びつけ、オリジナリティーがにじむ大会をたくさん作っていければ、それぞれの地域のコミュニティーは無限に広がっていくはずだ」。一旦はほどけた人と人のつながりも、ゴルフを通じてより強く結び直すことができる。コロナを経てゴルフの本質に立ち返った「パーリーゲイツ」は、30年来の歴史の中で大きなターニングポイントを迎え、再び新しい一歩を踏み出そうとしている。

問い合わせ先
パーリーゲイツ
03-6748-0392

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