ファッション

ビームスが立ち上げたビーアットってなんなん? 半年後の“現在地”を社長に直撃

 ビームスが2021年1月、デザイン会社のフロウプラトウ(東京、千葉秀憲社長)との合弁として設立した企業がビーアットだ。4月には、ラフォーレ原宿の6階にビーアット スタジオ ハラジュクをオープンした。公式ホームページを見ると、「東京からまだ見ぬカルチャーを生み出すためのカルチュラル・アパートメンツ」とあり、さらに「メディアであり、スタジオであり、ラボであり、ショップでもある」と続く。う~ん、難しい……。ならばと、土井地博社長を直撃。今さら聞けない……と二の足を踏む業界関係者の代わりに、あれこれ質問してみた。

WWD:業界内には“ビーアットとは?”をつかみかねている雰囲気がある。ずばり、ひと言で言うと?

土井地博ビーアット社長(以下、土井地):クリエイターが集う場、それをつくる会社だ。スマホ一つで誰でも表現者になれる時代に、クリエイター同士、またクリエイターと企業をつなぐのがビーアットのミッションだ。

WWD:実は、事前に僕なりに答えを考えてきたのだが(笑)、それは“長年コミュニケーションディレクターとしてヒト・コト・モノ、またさまざまな企業・ブランドをつなげてきた土井地社長のアクションを最大化=マネタイズするための組織”だった。

土井地:おおむね正解でよいと思う(笑)。40年を超えるビームスの歴史の中で、コミュニケーションディレクターという肩書を持つのは、これまでに僕しかいない。僕自身、会社いちの“人たらし”を自負している。一方で、何かを自ら生み出すタイプではないことも自覚している。

WWD:ラフォーレ原宿が、本来ラフォーレミュージアム原宿である6階を長期レンタルするのは初だ。これもやはり土井地社長のコミュニケーション力があってこそ?

土井地:それはぜひラフォーレ原宿に聞いてほしいが(笑)、荒川信雄ラフォーレ原宿社長をはじめ、ビーアットのコンセプトに共鳴してくれたことに感謝している。

WWD:「レッツゴーアップ マ・フォーレ」という、ラフォーレ原宿の魅力をビーアットのスタッフが再発見するユーチューブコンテンツも製作している。

土井地:ユーチューブまでチェックいただき、大変ありがたい。御礼というわけではないが(笑)、おかげさまで好評を得ている。僕のような40代男性にとって、ラフォーレ原宿はいささか場違いに感じるかもしれないが、今も昔も原宿の情報発信拠点であるし、こんな状況でも日々にぎわっている。ファッション&ビューティ業界人であれば、定期的にチェックしておくべき商業施設なはずだ。

WWD:ビーアット事業は、ビームスという組織の中ではできなかった?

土井地:ビームスは長らく、実店舗を主とする小売業を生業としてきた。そのビームスが、次のステップに進むために参考にしたのがGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoftの米国巨大IT5社)だった。10年ごろから、現地を視察するなど研究を重ねてきた。それと前後するように、車やホテルなど服以外のビジネスにもタッチするようになった。その内、ビームスの冠がない方がスムーズに進行する事案も出てきた。これがビーアット設立のモチベーションだ。

WWD:土井地社長はビームスの執行役員も務めるが、今後ビーアットのような合弁会社を増やす予定はある?

土井地:現状として具体はないが、可能性は多いにある。僕には夢があって、それは“生活の中にビームスを息づかせること”だ。例えば朝起きて、その日にやるべき10のことの中にビームスが入っていたい。そのためには、服以外にもフィールドを広げなくてはならない。

WWD:ビーアットを走らせて約半年。目標地点には到達できている?

土井地:合弁会社を設立し、社長を務めるというのは、ビームスにとっても僕にとっても初めてのことだった。コロナの影響でラフォーレ原宿が閉館するなど、予期しない事態ともなったが、ここまでは“成功”と言える。また当初から、半年は“立ち上げ”ととらえ、地力を蓄える期間でもあった。秋からはクライアント仕事が増えていく予定なので、成果を見せたい。

WWD:“つなげる”を行う際、土井地社長が最も気を付けていることは?

土井地:“答えを導かないこと”だろうか。自分も含めてビックリしたいわけで、つまり答えなんて自分の中にはないはず。コミュニケーションの先に化学反応が起き、結果として答えが生まれるのだと思う。

WWD:タレント豊富なビームス軍団の中で、土井地社長の“これだけは人に負けない”を教えてほしい。

土井地:お話した通り、僕は“才能がある人”ではないが、“才能がある人”とコミュニケーションし、そこで得たものを第三者に効果的に伝えることは得意だ。また、インプットとアウトプットを常にセットで考えていることも特徴かもしれない。

WWD:ビーアットの今後について聞きたい。

土井地:アート、教育、福祉といった、日本でいまだ抽象的と考えられているものに積極的に働きかけ、コンテンツ化していきたい。また、都内の空き物件などでビーアット スタジオをサテライト展開することも考えている。

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