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「ブルネロ クチネリ」が表参道に作った日伊の懸け橋は、優しく穏やかで明るい“家”

 「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」は3月26日、東京・青山のフロムファースト通りに表参道店をオープンした。地上2階、地下2階の4フロアからなる専有面積約915平方メートル(売り場面積約600平方メートル)のショップは国内最大。設計は、世界中の「ブルネロ クチネリ」の店舗を手掛けるイタリア人建築家のロレンツォ・ラディ(Lorenzo Radi)が担当した。コンセプトは“イタリアと日本のデザインの融合”だ。

自然光が差し込む店内では
随所で日伊が融合

 「ブルネロ クチネリ」表参道店に足を踏み入れたゲストは、まずグレージュの空間に包まれる。ブランドらしい、優しく穏やかで明るい色の世界だ。ウッドとメタルを組み合わせた店内に配置したのは、丁寧に修復したアンティークのソファやテーブル。2階にしつらえた木製の大型什器は、18世紀に北イタリアの教会で使われていたアンティークだ。イタリアのプロダクトを日本のショップに持ち込んで異文化を融合したほか、片田舎で見つけたビンテージに再び命を注ぎ込むことで、「ブルネロ クチネリ」らしい地元愛やサステナブルな精神を表現する。

 日本古来の文化に対するリスペクトも特徴で、カウンター横の2階に続く階段には、“ルーバーウォール”と呼ぶ日本の障子をイメージした木製の鎧戸のような装飾を施す。壁面の一部には掛け軸をモチーフに、ジュート(麻)にセメントを重ねたテクスチャー感のある壁紙を採用した。また全ての家具・資材をイタリアから輸入した。日本とイタリア、伝統とコンテンポラリーなど、「ブルネロ クチネリ」表参道店は地理的・時間的な隔たりを超越する。

地下フロアには
テーラードスペースと“知の空間”を

 地下1階のメンズの売り場も空間をぜいたくに使い、ゲストの居心地を重視する。一角には、ブランドが“サルトリア ソロメオ”と呼ぶメードトゥメジャー(カスタムメード、以下MTM)を受け付けるテーラードスペースを設ける。MTMは、「ブルネロ クチネリ」でも人気のサービスの一つ。ベスト1枚から注文を受け付け、ブランドが推すセパレートのコーディネートも完璧なフィッティングで楽しめる。リネンやコーデュロイなど季節の素材も充実し、MTMスペシャリストや地下2階には2人のテーラーも常駐し心強い。

 約6メートルと天高な地下2階に広がるのは、ブランドの本拠地であるイタリア・ソロメオ村の劇場や図書館のように、広く一般に開放する学びのアートスペースだ。日本とイタリアの懸け橋になるべく、初回は陶芸家・辻村史朗氏の器を並べた。辻村氏は「私のモットーは“好きなことを、好きなように、好きなだけやる”。だから、お客さまにも私の作品を好きなように楽しんでほしいです」と話す。今後は、世界中の店舗に先駆けた“知の空間”として、ゲストアーティストにちなんだワークショップも開催予定だという。

 地下2階の壁面にディスプレーするのは、イタリア・ウンブリア州の職人が手掛けるセラミックの食器や花器、カッティングボード、大理石のテイストを持つ箸&箸置きセットなどの“ライフスタイルコレクション”で、その奥には本を愛するブルネロ・クチネリ会長兼クリエイティブ・ディレクターにちなみ、ブランドの哲学を知ることができる“ライブラリー”も構えた。

「恐れを希望に変えて、
共にリスタートしましょう」

 表参道店のオープンに際してクチネリ会長は、「この美しい街に、新たな店舗をオープンできて大変うれしく思います。これを機に、あらためてわれわれの商品と哲学を日本の皆さまに知っていただきたいです。日本のアート、そしてサムライスピリットは常に私を魅了します。あなた方の同胞であるパオロ・ナガイ(被爆者であり医師・作家の永井隆)は『希望のない人生は生きるに値しない』と書き残しています。だから、恐れを希望に変えて共にリスタートしましょう」とエールを送る。

 また宮川ダビデ・ブルネロ クチネリ ジャパン社長は、「コロナ禍での出店準備となりましたが、クチネリ会長は常に私をサポートし、『現状を見るのではなく、10~100年先を見るように』と励ましてくれました。われわれは表参道店を“カーサ・クチネリ(クチネリの家)”と呼んでいます。顧客のみならず、全ての人がイタリアと日本の文化・芸術を分かち合える懸け橋としたいです」と述べた。

イタリアに生き、
イタリアから発信するブランド

 「ブルネロ クチネリ」は1978年に創業。ブランドコンセプトに“スポーツ・シック ラグジュアリー”を掲げ、今なおメード・イン・イタリーにこだわる。カラーカシミヤで一世を風靡したのち、85年にクチネリ会長の妻の故郷であるイタリア中部のソロメオ村にある14世紀に建てられた城を購入。修復して本社とした。村民を雇用し、村に新たに劇場を作るなど地域の発展に寄与。2013年には、職人の技術を継承するための“ソロメオ学校”を開校した。18年には、次世代に美しい大地と風景を残す“A Project for Beauty(美のためのプロジェクト)”により、東京ドーム約18個分の平野に公園を作った。

問い合わせ先
ブルネロ クチネリ ジャパン
03-5276-8300