ファッション

モデルがランチを食べている姿だけの写真集「アウト・トゥ・ランチ」発売 カメラマンのメッセージは?

ステーキフリットや「ケンタッキーフライドチキン」から、蕎麦や温野菜に至るまでーー。写真家のマーク・アベッグ・ド・ブーシュヴィル(Marc Abegg de Boucherville)による書籍「アウト・トゥ・ランチ(Out to Lunch)」に収められた写真は、目を楽しませるだけでなく、たとえ手軽な食事や路上での飲食であっても、美味しい料理が人と人との絆を深めてくれることを改めて証明している。彼は、「誰もが食事を必要とする。だからこそ二人の人間が向かい合って食事を共にすれば、そこには自然と親密な空気が生まれると思う」と語る。

撮影はフィルム、修正無し
モデルの馴染みの店に同行

2000年代初頭に「イッサ ロンドン(ISSA LONDON)」の最高経営責任者としてファッション業界でのキャリアをスタートし、後に写真家や資金調達のプロフェッショナルへと転身したは、パリでモデルと共にした88回のランチ風景を収めた。すべての写真はフィルムで撮影し、レタッチ(画像修正)は一切加えず、手作業でプリントしている。彼はモデルたちに食事場所を選んでもらい、「ブラッスリー・リップ」や「ボフィンガー」「ル・グラン・コルベール」といった、モデルにとって馴染みの名店に同行した。また公園や駅、路上といった屋外での食事風景も撮影。紙のバケツに入ったフライドチキンを頬張ったり、オレンジやケーキ、クロワッサンを夢中で食べたりするモデルたちの姿を捉えている。人気なのは、麺料理。「レ・ヴィテッローニ」でパスタ・ポモドーロを味わうモデルや、「スーン・グリル」「サンヨウ」「ケコ・モモ」で蕎麦をすするモデルの姿などを紹介している。

ブーシュヴィルは、「ツイックス」の​​チョコレートバーや、マスタードがたっぷりかかったホットドッグにも情熱を持ってレンズを向けた。そして「今の世界は狂気じみている。だからこそ、私は『リアル』なものを作り出し、人間味のある部分に立ち返りたかった。人種や信条、宗教が何であれ、人は皆食事をする。だからこそ、二人の人間が腰を据えて食事を共にすれば、そこにはある種の親密なつながりが生まれる。私はそのつながりを捉えたかったし、人々の『リアルな日常』を知りたかった。そこには物語やストーリーがある。感情があり、リアルで共感できる何かがある」という。

ランチは2人で70ユーロ以下
次回作は、「夕食」編?「朝食」編?

モデルたちが選ぶランチのメニューには、「良い意味で、驚かされることもあった」そうだ。「彼女たちは本当に様々な場所へ連れて行ってくれた。故郷を恋しく思い、地元の味を私と分かち合いたいと願うモデルもいた。アルゼンチン出身のモデルはエンパナーダの店に、日本人モデルは蕎麦屋に連れて行ってくれた。彼女たちは、自分が本当に好きなものを共有したかったんだ。それは、とても自然な思いつき。どこへ行くのか、全く分からないこともあった。ただ現地に行って、その場にあるもので撮影を進めたんだ」と続ける。

書籍は、濃い赤の合皮の表紙に金文字、角には金属の金具をあしらい、フランスのブラッスリーのメニューのようなデザインに仕上げた。訪れたレストランや食事のレシートをコラージュしたモノクロ画像も収めている。モデルたちとの食事代は手頃で、どの食事も会計は70ユーロ(約1万2800円)以下だった。

「アウト・トゥ・ランチ」は、ブーシュヴィルの自費出版。価格は60ユーロ(約1万1000円)でロンドンやミラノ、パリ、ニューヨーク、ロサンゼルスなどで販売している。

パリを拠点に活動するブーシュヴィルはこれまでに「マッシモ・ドゥッティ(MASSIMO DUTTI)」などのブランドや、「ヴォーグ」「アナザー」などの雑誌の撮影を手掛けてきた。ロシアによるウクライナ侵攻から1年近くが経過した2023年には、紛争への関心を維持しつつ慈善活動のための資金を募ることを目的としたマルチメディア・ポートレート・プロジェクト「ウクライナのモデルたち」を立ち上げている。ウクライナ人モデルたちにレンズを向け、ありのままの姿を捉えたモノクロ写真シリーズを制作し、パリのギャラリーで展示した。

彼はすでに次の本の制作に取り掛かっているという。「みんなに『次は夕食?』と聞かれるが、朝食もやるつもりはない。次のプロジェクトはとても楽しくてインタラクティブなもの。突飛なアイデアはたくさんあるが、実際に形にできるのはほんの1%、予算も限られているからね」と話す。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

軽やかに解き放たれるメンズウエア 2027年春夏メンズ・コレクション特集Vol.2【WWDBEAUTY付録:世界のビューティ企業 売上高ランキング TOP100 2025年版】

記録的な熱波に見舞われた今季のメンズ・ファッション・ウイークは、価値観をアップデートする2つの意味での「解放」がキーワードになりました。1つは、堅苦しいイメージも強い伝統的なテーラードスタイルからの解放。もう1つは、「男はこうあるべき」という固定観念からの解放です。「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」や「シモーン ロシャ(SIMONE ROCHA)」に象徴される、繊細さや…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。