クワイエット・ラグジュアリーの潮流が続くメンズファッションでは、テーラードジャケットやコート、ミリタリーウエアやジーンズといったメンズワードローブのステイプル(定番)を基底に置いたスタイルが、引き続き提案の主軸。この間に目まぐるしく続いたデザイナー・シャッフルの様相に反して劇的な変化は見られないものの、デザイナーたちの思索の深層では、新たな価値転換が起こり始めています。
不安定な現実が横たわり、不透明な未来に気後れする昨今。だからこそ、デザイナーたちの思索は、「過去」へ。豊かな学びや経験、温かな思い出に浸ることによる救いや癒やしを、デザイナーたちは洋服を通じて表現します。象徴的な表現の一つが、“愛着”。服についたシミやシワ、破れやほつれといったディテールを、個人の記憶、体験と紐付け、私的なラグジュアリーとしての価値を深めていました。
これまで“新しさ”“完璧さ”をひたすらに希求してきたファッションの世界。今季のメンズ・コレクションに通底する、“愛着”や“経験”に豊かさを見出す視点は、これまでにない価値軸をもたらすでしょう。では、この新たに浮かび上がってきた“愛着”という価値観を、どのように落とし込めば高揚感のあるスタイルに転換できるのでしょうか?本特集では2026-27年秋冬メンズコレクション取材から見えた4つのムード、キーアイテムを読み解き、そのヒントを探ります。
特集に続いてフォーカスするのは、ユナイテッドアローズの「コーエン」をはじめ「マックハウス」「ジャヴァ」などを立て続けに買収したジーエフホールディングスです。事業構造改革が必要な企業を次々と傘下に収める狙い、祖業である物流とどのようなシナジーを描くのか、ファッションジャーナリストの松下久美氏が児玉和宏会長に聞きました。
そして、生成AIの進化により検索、購買などファッションビジネスのあらゆる“起点”がAIに移行しつつある昨今。ブランドは何を注視し、何を準備しておくべきなのか。「WWDJAPAN Educations」BXパートナーで300Bridge代表取締役の藤原義昭氏が「AIレコメンド時代」を見据えた一手を説きます。
(COVER CREDIT)
BRAND:DRIES VAN NOTEN
ART DIRECTION & DESIGN:CHIAKI SATO(WWDJAPAN)
CONTRIBUTION:JUN YABUNO