PROFILE: 篠﨑祥子/代表取締役

百貨店の外商顧客を起点に、独自の存在感を築いてきた完全オーダーメードスキンケア「イプシア(IPSYA)」とプレミアムスキンケア「テウズ(TEUDU)」が1周年を迎えた。広告投資に頼らず、一人一人との対話を積み重ねるビジネスモデルは、富裕層マーケットで着実に支持を広げている。科学的エビデンスを軸に、スキンケアから美容医療、カウンセリングまでを横断したモノ作りと体験設計は、エスヴィータの大きな強みだ。「究極の美と健康」を追求する同社は今年、インナービューティ分野にも領域を広げ、内外からのアプローチを強化する。
対話が育てた信頼起点のブランド戦略
WWD:1周年を迎えた自社ブランドの手応えは?
篠﨑祥子代表取締役(以下、篠﨑):事業推移は順調だ。マスに広げるのではなく、百貨店の外商顧客や富裕層コミュニティーを中心に展開してきたが、この戦略に非常に手応えを感じている。時間はかかるが、信頼を軸にしたビジネスを着実に積み上げている。
WWD:「テウズ」への顧客の反応は?
篠﨑:当社の顧客は、食や健康、美容への意識が高い。医師や士業など、医学的・科学的な知見を持つ人も多く、ごまかしは一切通用しない。その分、納得いただけた顧客のリピート率は85%を超えている。年齢は40〜60代が中心だが、20〜30代の早期エイジングケア層や、将来を見据えた予防目的の顧客も増えてきた。客単価は約100万円と高額の人も多く、まとめ買いやギフト需要も多い。遠方から足を運んでくださる人もおり、「ふに落ちたら選ばれる」ブランドになりつつある。一方で、食やスキンケアに強いこだわりを持つ人が多いので、理解と納得を得るまでには時間がかかる。1人あたり2時間以上かけて接客し、エビデンスやモノ作りの姿勢、サンプル使用後の体感まで含めて厳しく評価される。簡単なビジネスではないが、その分やりがいは大きい。
WWD:顧客との接点はどのように生まれている?
篠﨑:百貨店の外商顧客が中心だが、口コミによる広がりも大きい。日本橋三越本店や東急百貨店の外商サロンでは毎月イベントを実施しており、伊勢丹新宿本店では昨年3回ポップアップを開催した。会期前には、外商のトップ顧客を招いた事前勉強会も実施。百貨店の営業部と外商部が連携するかつてない取り組みで、会期中の成果を押し上げた。
WWD:エステ事業の位置付けは?
篠﨑:あくまで、製品の正しい使い方やホームケアの重要性を理解してもらうための付加価値だ。製品と比べて手頃な価格で体験でき、エステでの体感をきっかけに、肌測定やホームケアへとつながる流れができてきた。今後は月1回のエステと肌測定、製品購入を組み合わせたセットプランの提案も視野に入れ、「エステ・肌測定・ホームケア」の三本柱を、より意味のある体験価値として打ち出していきたい。
WWD:「イプシア」の商況は?
篠﨑:非常に好調だ。現在は十数人規模だが、健康意識を目的とした申し込みが多い。採取したiPS細胞培養上清液から化粧品を開発する人もいれば、点滴メニューを選ぶ人もおり、ニーズは多様だ。百貨店での正式展開はハードルが高いが、口コミを中心に認知が着実に広がっている。
WWD:「イプシア」の顧客層は?
篠﨑:健康意識が高く、表面的なケアだけでは満足できない層が中心だ。男女比は4:6で、男性からの反響も大きい。そうした層に支持されている理由の一つが、肌の新陳代謝に必要不可欠な栄養である成長因子やサイトカインなどを含むiPS細胞培養上清液という素材だ。肌環境を整える上で理にかなったアプローチだと考えている。
WWD:価値と価格についてはどう考えている?
篠﨑:自身の細胞を素材に、採取から管理、製品化までを行うため、原価はどうしても高くなる。スキンケア製品の製造で約1000万円、点滴として用いる場合でも約500万円かかる。量産を前提とした素材ではなく、扱える数量や生産のスピードにも限りがある。また即効性を求めるものではなく、状態が安定しているうちから取り入れることで、将来的なリスクを抑えることにつながる。「イプシア」は、そうした予防的な視点で選ばれるブランドでありたい。
WWD:事業構成比に変化は?
篠﨑:1年前と比べると大きく変わった。「イプシア」「テウズ」のメーカー事業とクリニック運営が全体の6.5割、PR事業が2.5割、コンサル事業が1割だ。今後はジェイアール京都伊勢丹や大丸東京店、銀座・和光との外商取引も始まるため、メーカー事業を一段と強化する。
WWD:2026年に注力することは?
篠﨑:引き続き一対一の接客を重視しながら、顧客の信頼を積み重ねていく。3年以内には旗艦となる自社店舗を構え、量り売りなど環境配慮型の仕組みも取り入れたい。スキンケアメーカーというイメージが先行しがちだが、「究極の美と健康」という当社のビジョンをより明確に伝えていく。また、外側からだけでなく内側からも美と健康をサポートするため、インナービューティ分野にも挑戦する。まずは腸内環境へのアプローチを軸に、体に取り入れた際の実感につながる食品を計画している。
個人的に今注目している人
私自身、小中高と卓球に打ち込み、インターハイでは3位を獲得した。推薦での進学という選択肢もあったが、別の道を選んだ。そうした経験もあり、女子ダブルスで世界ランキング1位に立った長﨑美柚選手には強く共感し、応援している。かつて卓球は地味な印象もあったが、今は緻密な戦略性と瞬発力、全身の筋力を要する競技として注目されている。私自身、厳しい練習で培った体力と精神力が、今の仕事を下支えしている。
化粧品の戦略PR企画やEC事業、美容医療クリニック運営などを手掛けるワンストップ型の美容・健康コンサルティング会社として2016年に創業。社名は“サステナビリティ・ファースト”と“サーキュラーエコノミー”の頭文字であるS、“命”や“生き方”という意味を持つVITAに由来し、サステナビリティや地域貢献にも力を注ぐ。24年に完全オーダーメードスキンケア「イプシア」と、プレミアムスキンケア「テウズ」を立ち上げ、化粧品メーカーとして事業を拡大