PROFILE: 山岸正紀/社長

三菱地所・サイモンは「プレミアム・アウトレット(PO)」の屋号で全国10カ所のアウトレットモールを運営する。2000年に1号施設として開業した御殿場PO(静岡県)は、今や売上高1409億円(25年3月期)で日本最大のショッピングセンターに発展した。
プレミアム・アウトレットの
魅力を磨き上げる年に
WWD:2025年はPO上陸25年の節目だった。
山岸正紀社長(以下、山岸):御殿場POとりんくうPO(大阪府)が25周年を迎えた。さまざまな催しを行い、多くの新しいテナントに出店いただいた。特に御殿場は他に類を見ないブランドラインアップとなった。また、POの根源的な価値を訴えるためのキャラバンイベントを、東京、大阪、名古屋、福岡、仙台の5大都市で行った。POはブランド品を購入するだけの場所ではない。家族、友人、恋人同士など多様なお客さまが訪れ、一日中楽しんで、素敵な思い出を作って帰る。POに行ったことのない方々、しばらく訪れていない方々に改めて魅力をアピールした。
WWD:25年といえば世代が一つ進む年月だ。
山岸:子供の頃に両親に連れられて御殿場POに来ていた人が、自分の家庭を持ち、今度は子供、祖父母の3世代で再訪する。夫婦と子供がショッピングしている間、祖父母は敷地内の日帰り温泉施設「木の花の湯」でリフレッシュする。年月を重ねてお客さまの層が広がった。施設側も合わせて進化する。
WWD:消費市場においてPOはどんな存在か。
山岸:全国10施設のPOの25年3月期の売上高合計は4345億円(前期比6.8%増)。国内アウトレットモールの市場規模は約1兆円と推定されており、4〜5割のトップシェアとなる。上陸当時は、米国で成功していても日本では難しいと見られていた。歴代関係者の努力の積み重ねで、新しい消費文化を浸透させたと自負している。POは都心から100kmほど離れた立地で、超広域商圏から集客する商業施設。ブランド品をお得な価格で購入できる強さ、非日常感を演出するファシリティー、スタッフによるホスピタリティーが一体となって、遠方でも「訪れる価値がある」と思っていただけている。
WWD:今期(26年3月期)の売上高の見通しは?
山岸:極めて好調だった25年3月期を起点にすると、伸ばすのはとても大変だが、どうにか前年クリアを目指したい。さいわい旗艦の御殿場PO、りんくうPO、神戸三田PO(兵庫県)はもちろん、鳥栖PO(佐賀県)なども順調だ。1〜3月の売上高シェアが大きいため、目標達成に向けて今が勝負時だ。
WWD:来期(27年3月期)はどう挑む?
山岸:28年を最終年度にした中期経営計画の3年目に当たる。「戦略的なリニューアルとテナントとの共創による既存施設の強化」「新たな成長機会の獲得」「社員の働きがいと成長性を高める組織力の向上」を柱に据え、新たな価値創造に取り組んでいる。今年は開業や増床の計画はないため、既存施設を磨き上げる年になる。昨年は御殿場POのヒルサイドエリア(20年の4期増床エリア)のブランドが大きく貢献してくれた。また鳥栖POではフードコートを改装し、九州の地元人気店を誘致したことが集客につながった。こうした磨き上げで地力を高める。
WWD:地域カラーもPOの特徴だ。
山岸:POはお客さま、取引先(テナント)、地域社会に支えられている。地元からの期待は高い。昨年、あみPO(茨城県)に「あみ観光物産館 ami colle!」が開店した。オープニングイベントには元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方も出席した。二所ノ関部屋の開所に伴い、阿見町を相撲で盛り上げていこうという機運がある。POはそんな地域発信の拠点になれる。他県など広域から人が集まるからだ。
WWD:御殿場POでは空飛ぶクルマの実証実験を始めた。
山岸:三菱地所およびAirXと共同で昨年10月にデモフライトを実施した。離着陸場を整備し、将来の実装化を見据えている。空飛ぶクルマは、渋滞回避や交通空白地域での移動手段、災害時の利用などに加え、移動時間の短縮や観光などの新たな体験価値の提供など、幅広い展開が期待されている。御殿場POはすでにヘリコプターによる遊覧飛行サービスを提供しているが、空の移動において先鞭をつける。これも地域社会のハブとしての価値創造である。
WWD:顧客のエンゲージメントを高めるためにどんな手を打つか。
山岸:市場は体験価値を起点に、再来訪意欲を高める施策を通じて、ロイヤルティー向上とファン化を図る方向へとシフトしつつあり、施設運営でも「お客さま価値を軸とした判断」がこれまで以上に求められている。そこで23年に導入したアプリ決済サービス「PO PAY(ピーオーペイ)」が基軸プラットフォームとしての重要な役割を果たす。「理解→施策→改善→再理解」の循環でお客さま価値の理解度を高め、「再来訪の創出」「購買頻度の向上」に努めていく。
個人的に今注目している人
6月開幕のサッカーW杯北中米大会で侍ジャパンの指揮をとる森保一監督を応援している。リーダーシップで言えば、支配型というよりも対話を通じて行動を促すサーバント型。強烈なプロ意識を持つ選手たちの共感を集め、しっかり結果を出している。私が目指すリーダーシップのあり方も、共通する気がする。森保さんに重ねるのは口幅ったいけれど。
三菱地所と米国で「プレミアム・アウトレット(PO)」を展開するサイモン・プロパティ・グループの合弁会社。1999年に設立され、2000年開業の御殿場プレミアム・アウトレットを皮切りに、りんくうPO、神戸三田POなど全国で10施設を運営する。テナントの合計売上高は4345億円でアウトレットモールで国内首位。11番目の施設となる(仮称)京都城陽POを計画している(開業年は未定)