PROFILE: 小田切潤/社長

大型商業施設や店舗、飲食店といった商空間から、オフィス、教育、ヘルスケア、ホテル、余暇施設など幅広い分野において、船場は国内および海外で空間創造事業を展開する。2025年3月にアクセンチュアやオンワードホールディングスで要職を務めた小田切潤氏が社長に就任し、事業拡大に邁進する。
上場以来最高の業績達成の見通し
WWD:社長に就任して1年弱。船場の強みとは?
小田切潤社長(以下、小田切):最大の強みは“人”だ。従業員約550人のうち、一級建築士・一級建築施工管理技士などの資格者が約120人在籍しており、これが価値の源泉になっている。そして、デザイン・設計だけでなく、最終的な物件の良し悪しに影響のある施工力が圧倒的に高い。創業78年の歴史で培ったクオリティーはもちろんだが、スピード感においても評価されている。また、事業領域の幅広さも強みだ。得意とする店舗・商業施設からオフィス、ホテル、病院、空港、学校、公園、図書館まで多分野を手掛けており、異なる領域のノウハウを横断的に提案に生かせている。さらに、海外事業比率が15%程度あり、国ごとの規制や審美性の差異を熟知しながら、設計や施工ができる点も魅力だ。経営のプロとして、エキスパート集団の強みをより発揮させながら、事業を拡大していきたい。
WWD:着任してからこれまでを振り返ると?
小田切:人材強化に最も注力した期間だった。「人材戦略会議」を毎月開催し、今期約80人を新規に採用した。エキスパート人材の増強による現場の負荷軽減と売り上げ拡大のための基盤づくりと同時に、PRや海外担当などへの異業種の優秀な人材の積極採用で、コーポレート戦略機能の強化を図っている。これまで職人的文化が強く、PRに重きを置いてこなかったが、意識改革を推進し、露出を増やしたところ、新規案件獲得や採用促進、株価上昇にも寄与した。社内の経営改革賞でPR担当者が高く評価され、社内の士気も上がった。
WWD:異業種との提携発表も矢継ぎ早に行った。
小田切:多様なオフィスニーズに対応すべく、コクヨとのグローバル戦略的業務提携、グローバル大手企業向けに世界的な組織・人事コンサルティングファームのマーサージャパンとの連携を発表した。石膏ボードメーカーのチヨダウーテとは、廃石膏ボードの回収・再資源化・再利用についてより連携を深める提携をした。また、3D建築ソフトBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)開発のグローバル最大手、米オートデスクとも「戦略的提携に関する覚書」を締結した。企画・設計・施工・維持管理までの一連のプロセスをデジタルで行うべく、船場はBIMを早くから取り入れ、設計業務の高度なDXを進めてきた。提携により、BIMの普及と定着に注力するとともに、オートデスクと共にデザイン・設計におけるAIの活用も引き続き研究していく。
WWD:25年の商況や成果は?
小田切:25年12月期の売上高は前期比10.5%増の320億円、営業利益は同9.5%増の21億円の見通しだ。16年の上場以来最高の業績になる。先述の人材確保によるキャパシティーの拡大、アライアンス強化、ブランディングおよび戦略的PR活性化、DX推進が奏功した。戦略・戦術の下地が1年弱でほぼ整ったので、実行フェーズに移していく。
WWD:サステナビリティにも積極的だ。
小田切:解体・施工に伴う廃棄物については1次リサイクル率94%を誇っている。“アジアNo.1のエシカル空間創造企業”を掲げており、“コンテンツ(Contents:54の世界エシカル実践調査)”“コマース(Commerce:現場への実装)”“コミュニケーション(Communication:対外発信)”の3C戦略でさらに推進する方針だ。一般公開するようになって3回目、10月に虎ノ門ヒルズで開催した「ETHICAL DESIGN WEEK」も反響が大きく、社会的評価が高まった。
WWD:26年に注力することは?
小田切:良いものを提供するには、良い人材が必須。人材開発が最重要事項であることは、まず経営の本質だ。その上で、“グローバル”“エシカル”“ラグジュアリー分野”を強化する。ホテルやオフィス、商業施設、病院、公共施設など既存領域をさらに広げたい。ワークフローのデジタル化・3D化も推進する。同時にクリエイティブ分野も強化する。日本空間デザイン賞2025で入賞した福岡空港国際線ターミナルのデザインを手掛けた平田晶を26年1月1日付でプリンシパルデザイナー(執行役員扱い)に昇格した。彼女の能力発揮の場をさらに拡張することや、外部の新進気鋭のクリエイターの起用など、クリエイティブ領域の強化を図る。また、各コミュニケーションポイントにおいても同様だ。27年12月期で今年度比25%増の売上高400億円を計画している。ラジカルな経営改革で年商1000億円を目指す中で、シナジーを生める企業とのM&Aも検討している。候補の精査も行っており、良い案件があれば、健全な財務体質を活用し積極投資をしていく考えだ。
個人的に今注目している人
83歳にしてなお第一線でデザインし、経営も行う稀有な存在。私自身のライフテーマである「クリエイティブ×経営の高次元融合」を最も体現している人物だ。「コム デ ギャルソン」で常にクリエイティブな商品を生み出しながら、「プレイ・コム デ ギャルソン」などのラインで収益基盤も作り、店舗とサービス力を重視する経営判断も卓越していると感じる。消費者としても“圧”を感じ続けることができるブランドで、現在も唯一無二の刺激を与えてくれる。
1947年創業。商業施設やオフィス、公共交通空間、余暇施設などのさまざまな空間づくりにおいて、調査・企画・デザイン・設計・施工・メンテナンスまでトータルサポートする。2025年9月末現在、社員数は542人。24年12月期の売上高は289億円、純利益は15億円。国内8カ所のほか、台湾、シンガポール、上海、ベトナム、マレーシアに事業所を構える
船場
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