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UA原宿本店改装のキーマン、小木&栗野氏に直撃

 ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、以下、UA)が旗艦店であるUA原宿本店を次世代型店舗として刷新し、9月7日にリニューアルオープンする。「ユナイテッドアローズワン」をコンセプトに近接するウィメンズ館をクローズし、メンズ館に統合。ジェンダーフリーでファッション好きが集まる館を目指す。ディレクターを務める小木基史UAバイヤー兼UA&サンズ・ディレクターと、クリエイティブ・アドバイザーの栗野宏文・上級顧問に、その背景と狙いを聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):UA原宿本店をリニューアルするに至った経緯は?

栗野宏文・上級顧問(以下、栗野):僕らは1989年に会社を創り、90年に1号店を渋谷に開いた後、92年10月に旗艦店として原宿本店をオープンしました。当時は「男の人がオシャレにスーツを着ること」が店の基軸にありました。おかげさまで99年に上場したり、会社が大きくなる一方で、大人がスーツを着るオシャレというものが伝わっていないという危惧が生まれ、小木君たちも心配してくれていました。彼らにはファッションに対する熱い思いがある。そこで、次世代にスーツを着ることを伝え続けていこう、ファッションの楽しさをもう一度表現しようと考えました。原宿本店が25周年を迎えるという節目の年でもありました。

小木基史UAバイヤー兼UA&サンズ・ディレクター(以下、小木):2006年に南青山のフロムファースト内にコンセプトストア「リカー、ウーマン&ティアーズ(LIQUOR,WOMAN & TEARS)」をオープンしたところに話が遡りますが、海外ではファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)やカニエ・ウェスト(Kanye West)のようなヒップホップアーティストが、従来のようなアクセサリーをジャラジャラ付けてダボダボなスポーツウエアを着るのではなく、スリムなサイズ感のアイテムやスーツを着るなど、スタイルが変わってきたと感じていたんです。そこで、会社に企画書を上げ、ヒップホップとトラッドをミックスした店をオープンしたいと提案したんです。それが認められて「シュプリーム(SUPREME)」と「フェンディ(FENDI)」「ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)」などをミックスして品ぞろえをしたり、今でこそ当たり前になりましたが、スーツにスニーカーを合わせるようなスタイルも提案しました。

栗野:当時ファレルやジョン・レジェンド(John Legend)など、アフリカンアメリカ系のオシャレな人が世に出てきていました。今でこそファッショニスタだが、僕みたいな音楽好きな一部にしか知られていませんでしたが、カッコよかったんですよね。ヒップホップデュオのアウトキャストのアンドレ・ローレン・ベンジャミン(Andre Lauren Benjamin)も、後に(08年に)「ベンジャミン・ビクスビー(BENJAMIN BIXBY)」のブランドを作ったりもするようになりました。小木君はそういった流れに先駆けて店を作り、UAのある種のスピリットを伝える伝道者になりましたね。

小木:当時、いろいろなミュージシャンなどが来てくれましたね。ナズや、カニエの元スタイリストで今は「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)も来てくれていましたね。ある雑誌で、ヴァージルは「あの店が好きだったから、青山に店を出したかった」と語ってくれていたのを聞いて嬉しかったですね。ビジネス的にはうまくいかず09年に閉店しましたが、やりたかったことは「UA」が培ってきたスーツスタイルを若い子に伝えることだったので、「UA」本体に戻り、「ユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SANS)」という形で、原宿本店メンズ館の地下で、「ザ スタイリストジャパン(THE STYLIST JAPAN)」や「ダブルタップス(WTAPS)」など、ストリートテイストとスーツをミックスした提案することになりました。もう少し軽くスーツを着られるようにと、当時は一般的ではなかった、スーツの下にTシャツを着るようなスタイルも打ち出しました。14年ごろにはLA発のラグジュアリーストリートの波が来たこともあり、フロアを1階まで広げたりもしてきました。今回は、25周年の節目でもあり、初心に返り、メンズ、ウィメンズを一つに集めて全館を「ユナイテッドアローズワン」の考え方で進化させようと考えました。

栗野:当社は店舗数も増えましたが、過去5年ぐらいは「成長イコール店舗数」「成長イコール企業戦略」的な部分がありました。でも、ファッションビジネスってそういうものじゃない。素敵なモノを提供することで、皆さんが支持してくれて、買ってくださることで、数字もついてくるというもの。あらためてそう考えたときに、原宿にメンズとウィメンズを2軒持つ必要はないから統合しようということになりました。小木さん自身は1年前からその構想を持っていたらしく、クリエイティブ・ディレクターとして名乗りを挙げました。そこに、UA業態のクリエイティブ・ディレクターの鴨志田康人に加え、僕はただのおせっかいとして、創業メンバーの一人として、クリエイティブ・アドバイザーという立場でこのプロジェクトにかかわることになりました。小木、鴨志田、栗野の3Kがそろいました。あ、濃い、汚い、こうるさい、の3Kではないですよ(笑)。

小木:僕自身、「リカー、ウーマンズ&ティアーズ」時代にラスベガスの展示会に行ってみたら、ヒップホップの人たちが集まっているゾーンがあったのですが、みんな濃い人ばかりで、誰もUAなんて知らないし、アジア人はみんな同じに見えるみたいで。それで、覚えてもらおうと、僕の濃いキャラクターができあがってきたのですが。

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