“縫製工場4.0”キーマンが語る日本の工場の危機

テクノロジーインタビュー

2016/12/29 (THU) 12:00

 「WWDジャパン」12月19日号の特集「fashion4.0-IoTで服作りが激変」では、国内外で進む服作りのIoT化の最前線をレポートした。同号にも登場したデニムの企画・生産を手がけるエッジブルーの安井義博・社長は、同社が20%を出資する中国のパートナー企業である山東拉峰服装が世界初とも言える“縫製工場4.0”を実現したことを踏まえ、「このままでは日本の工場は中国に負けてしまう」と日本のもの作りに警鐘を鳴らす。いまそこにある日本の縫製工場の危機とは?

WWDジャパン(以下、WWD):「WWDジャパン」12月19日号でも取り上げたが、なぜ“縫製工場4.0”を進めたのか?

安井義博エッジブルー社長(以下、安井):2年ほど前にドイツの半導体産業や自動車産業から、製造装置にネットを繋ぐことで大量生産型だった生産システムをマスカスタマイゼーション化する“インダストリー4.0”が出てきた時に、アパレルもキャッチアップしなければ、と。インダストリー1.0が水蒸機関、2.0が電気、3.0が自動化、4.0がIoTだとすると、労働集約型のアパレル産業は現在でも2.5といったところ。このままではアパレルは立ち遅れると思った。そこで1年半前に、20%を出資する中国のパートナーである山東拉峰服装の李相哲・社長に持っていったら、即「やろう!」と。実はその過程で、話を持ちかけた僕の方が「やっぱり無理じゃないか」と諦めかけた時にも、李社長は決して諦めず、彼からは「絶対に出来る!」と何度も言われた。李社長自身が北京大学出身で、他にも薬品工場を上場させるなど他の業界経験のあった起業家だったことも大きかった。

READ MORE 1 / 2 生産性向上へ飽くなき挑戦

WWD:4.0化できたポイントは何だったのか?

安井:もともとデニムの縫製工場は、他のウエアなどに比べて、パーツの数が少なかったり、工程がシンプルだったり、というのが大きい。ベーシックなアイテムなので、大まかなデザインや設計は決まっているし、ポケットを付ける工程などでは自動化ミシンの導入も進んでいる。さらに山東拉峰服装自体が日本のベテランの技術者を招聘して作った工場だったので、ベースの部分のレベルも高かった。その上で李社長が既存の生産管理や工程管理のソフトウエア、RFIDといった新しいツールの実装に、粘り強く取り組んだ。生産性が落ちたら何の意味もないので、あくまで生産性の向上をゴールにして追求する、という中国人らしいリアリスティックな姿勢も良かった。量産とカスタムを混在させたIoT化ラインは半年ほど前に稼働を開始。最初の1カ月こそ生産性は落ちたが、その後は量産だけやっていた以前と比べても、逆に4割以上生産量が増えた。サイズや設計データの修正といった、生産前の工程も自動化されているので、実質的にはさらに増えている。

WWD:今後は?

安井:今後デニムの縫製工場は、加工工程でさらに自動化が進む。加工工程は大きく、シェービングなどでヒゲを付けるドライプロセスと、洗いをかけるウェットプロセスの2つに分けられるが、いずれのプロセスも革新機械が登場している。例えばシェービングはロボットによるレーザー加工機が登場しており、山東拉峰服装でも導入予定だ。この部分の自動化が進むと、さらにクイックにバリエーション豊かな加工が可能になる。

READ MORE 2 / 2 このままでは世界に置いていかれる

WWD:なぜ日本の工場にとって危機なのか。

安井:1つめはお金だ。今回は新しい加工機械なども含め、山東拉峰服装は総額2億円を投資した。日本の縫製工場で今これだけの投資ができる余力がある工場がどれだけあるか。ただそれ以上に僕が危惧しているのは、このままでは世界に置いていかれるという、現実への危機感の欠如だ。中国では山東拉峰服装は、16年末に中国政府から表彰を受けた。国家としても積極的にバックアップしていることもあり、山東拉峰服装には、すでに多くのメディアや関係者が見学に訪れているが、日本の関係者の反応は総じて鈍い。今後のアパレル生産で “縫製工場4.0”がスタンダード化すれば、ほぼ確実に日本の古いタイプの工場は立ち行かなくなるにも関わらず、そうした部分への感受性みたいなものが非常に低い。これは製造面だけに限ったことではなく、流通面にも言えることだ。インダストリー4.0の核になるのは、流通を巻き込んだカスタマイゼーション化だが、中国ではすでにバーチャルフィッティングの機械も急速に普及している。新しいテクノロジーや技術を貪欲に受け入れる姿勢が強いからだ。総じて言える、“新しいこと”への不感症のような状態が最も大きな危機だと思っている。

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