ファッション

レザーバッグのD2Cが市川渚と共に“ドローン専用バッグ”を作った理由

 “イノベーターのためのワードローブ”をコンセプトに、バッグなどのレザー製品を販売するD2Cブランド「オブジェクツアイオー(OBJCTS.IO以下、オブジェクツ)」が、ドローンメーカー大手、DJI社の製品“マヴィック エア(MAVIC AIR)”専用のバッグ(5万円)を発売した。同ブランドが新たにスタートしたコラボレーション・プロジェクト“コ・プロトタイピング(Co-Prototyping)”の第一弾として、ファッションやデジタルの業界で活動するクリエイティブ・コンサルタントの市川渚氏とタッグを組み、製作したモノだ。「オブジェクツ」は2018年のスタート以降、顧客のフィードバックを受けながらiPadやMacBookなどのガジェットに対応したレザー製品を数多く開発してきたが、なぜ今回“ドローン専用”というニッチなアイテムを作り出したのか。同ブランドの角森智至・製品開発責任者兼デザイナーと市川氏に聞いた。

WWD:新プロジェクトの“コ・プロトタイピング”をスタートした理由は?

角森智至「オブジェクツアイオー」製品開発責任者兼デザイナー(以下、角森):独自の価値観や感性を持っているイノベーターの方と協業することで、より尖ったプロダクトを作れるのではと考えたからです。「オブジェクツ」は普段から、“プロトタイピング”として、製品開発の初期段階で作った試作品を、実際に理想の顧客に近い周囲の方々に使ってもらい、フィードバックを得ながらクオリティーを上げていく手法を取っています。“コ・プロトタイピング”はさらに一歩進み、僕らが持っていない知識や経験、感性を持っている人に製品企画の段階から参加してもらう。それにより、一緒にプロダクトを作ったイノベーターの方とその周囲の方に刺激を与えることができるのでは、と考えました。

WWD:新プロジェクトの第一弾の相手に、市川氏を選んだ経緯は?

角森:ファッションとデジタルの領域で活動していて、ガジェットにも詳しい渚さんとはどこかでお会いしてみたいな、と考えていました。ただ、最初に渚さんとお会いした時は、コラボレーションしようといった話にはなりませんでしたよね。

市川渚(以下、市川):そうでしたね。共通の知人を介して集まりましたが、最初はD2Cブランドの話だったり、モノ作りの話だったりをして。そこから「オブジェクツ」がもともと作っていたバックパックを貸していただけることになりました。

角森:先ほどお話した“プロトタイピング”の一環でした。その後、貸したバッグの返却の際に、渚さんが僕たちのショールームを遊びに来てくれたのですが、別カラーの白いバックパックを見て、「使ってみたい」と言ってくれたんですよね。渚さんは僕と同じ文化服装学院出身でモノ作りについて共感できる点が多かったこともあって、そこから徐々に話が広がっていき、“コ・プロトタイピング”として一緒にプロダクトを作ろうという話になりました。

WWD:最初からドローン専用バッグを作ろうと考えていた?

市川:色はホワイトで作ることは決まっていたんですけど、どのようなバッグにするかはいろいろと違う案も出ていました。結果的にカメラのレンズ専用のケースとドローンバッグにまで絞り込み、最終的に私が撮影の時に使用する、“マヴィック エア”専用のバッグにしました。

ドローン専用バッグはどのようにして作られた?

WWD:コラボレーターである市川氏の知識や経験は、具体的に製品のどういった点に生かされている?

角森:基本的には、渚さんがドローンを使って撮影する際のスタイルや要件などをいろいろとヒアリングしてデザインの骨組みを作っていきました。まず、渚さんがドローンを使う際に持っていくモノが全て入り、かつ機動力を失わないようにボディーバッグ型にしました。あとは、バッグの開閉部分もあえて全部開ききることがないようにしたり、ドローン本体が体側になるような設計にしたり。「オブジェクツ」では通常、製品化するまでにサンプルを何度も作って詳細を詰めていくことが多いのですが、今回に関しては最初のサンプルの段階でかなり詳細まで作り込めました。恐らく渚さんから聞いた要件がとても良かったからだと思います。

市川:ドローンを使った撮影時の動きのデモンストレーションとかもしましたよね。多分、ドローンのためのバッグってかなりニッチなので、その分要件が詳細になったんだと思います。結果的には私がお願いしたポイントがほぼ抑えられているモノができた。ガジェット用のバッグって、機能偏重なイメージが強いけれど、今回は機能要件を満たしつつ、洗練されたデザイン性を持っているという、「オブジェクツ」らしさを出したモノになったな、と。実際に中国にあるDJI本社でも話題で、私の身の回りでドローンを使っている人たちからも好反応でした。

角森:嬉しいです。ほかのプロダクトに関してもそうですが、一カ所でも手を抜くと、見た目が一気にチープになってしまうんですよね。例えば今回のバッグに関しても、渚さんの服装とかを見てスクエア型にしたんですけど、“箱感”が強くならないよう、ショルダーの形を変えたり、それぞれに使うレザーのパーツに厚みを持たせたり。金具も機能とデザインが両立できるよう、コブラバックルにしました。ディテールに関しては話し始めるとキリがないです(笑)。

WWD:今回の“コ・プロトタイピング”を通じて、「オブジェクツ」の既存の商品にも生かせるようなフィードバックなども得られた?

角森:定番製品にはない驚きや製品への周囲の反応、そして一緒にモノ作りをするコラボレーターの方の意見を通じて自分たちの可能性をさらに拡張できると感じました。今回使ったシルエットを出すための芯材構造を、直近にリリースしたトートバッグにそのまま応用するなど、今後のモノ作りにおいて新たな気づきを得ることができましたね。今回はドローン専用でしたが、同じ型で、中を変えて別の使用用途にすることも考えています。実際に渚さんもドローン以外を入れて使っていることもありましたよね。

市川:レンズを付けたカメラがちゃんと入るので、たまにそういった使い方もしています。形としては、かなり汎用性があると思います。

角森:僕らもドローン用に設計はしたけれど、別の使い方をしていただいても面白いなと考えています。実際に渚さん以外の方がどのような使い方をするのか、反応が楽しみです。

WWD:今後も“コ・プロトタイピング”として、ほかのイノベーターとのコラボレーションは続ける予定か?

角森:渚さんとも継続的に作っていきたいし、ほかの方とも協業するつもりです。カメラ領域や、音楽領域などでプロダクトを作ってみたいですね。あと、定番製品ではより高級な製品や、高機能で軽い山登りとか音楽フェスなどにも使えるような高機能製品など、シリーズを増やしていきたいです。

最新号紹介

WWD JAPAN

アウトドア消費の現在地と未来 ブームは一過性か、それとも日常に定着するか

「WWDジャパン」11月30日号は「アウトドア」特集です。アウトドアウエアが日常的に着用され、商業施設の目玉テナントとして誘致されるなど、市場を席巻しています。キャンプやハイキングなどはコロナ禍に最適なレジャーとしても注目されていますが、このブームは一過性のものなのか、あるいは日常に定着するのか。特集では、自然の豊かさを多角的に発信するアウトドア企業のトップや、ファッション視点で市場を見てきた名物…

詳細/購入はこちら