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「第二の皮膚」が商品化! 花王バイオミメシスヴェールを1カ月使ってみた

 2018年11月の技術発表後、大反響を呼んだ花王の「ファインファイバー テクノロジー」。化粧用のポリマー溶液を1マイクロメートルの極細線維として肌に噴射し、一枚の薄いベールを形成する技術だ。塗布した時、違和感のない「第二の皮膚」として、話題を呼んだこの技術を搭載した第一弾製品が、いよいよ12月4日から発売される。製品のスペックや花王の販売戦略は本誌に任せるとして今回、発売を前にお試しできる機会をいただいたので「いち女性の視点で、実際に使ってみた」感想を記したい。

それは「ひと晩中貼っておける湿潤マスク」

 ファインファイバー テクノロジー搭載の第一弾製品とは、美容液「エスト バイオミメシス ヴェールエフェクター」(以下、エフェクター)と、ファインファイバーを肌に塗布する「バイオミメシス ヴェール ディフューザー」(以下ディフューザー)だ。開発段階では「人工皮膚?」「メイク製品?」など、さまざまな憶測を呼んだが、この製品を一言で表すなら「ひと晩中貼っておける湿潤マスク」が最も近いと思う。

 使い方は、普段のスキンケアの最後に専用美容液のエフェクターを塗布し、その後にデュフューザーで、ファインファイバーの薄膜ベールを形成する。そのまま一晩就寝し、翌朝にはがすというステップだ。今回花王が注目したのは、医療分野における「湿潤療法」。肌を理想的な湿潤環境に導くことで、バリア機能をサポートするという。

使いこなすまでには、少々慣れが必要

 まず、製品を使用する前に、一度カウンターなどできちんとレクチャーを受けることを強くオススメしたい(特に、私のような機械操作やマニュアルを読むのが苦手な方はぜひ)。カートリッジのセット方法や、使用前に毎回必ずスイッチをしずく型の部分に合わせ、水滴を出す(ファイバーを正しい方向に均一に噴射するために必要)、保存時には必ずキャップをカチッと音がするまで閉める(きちんと閉めないとまれに液漏れすることも)など、使用の際にいくつかポイントがあるからだ。

 噴射の方法も、少々慣れが必要だと思う。ディフューザーと肌との距離は、グーを握った拳1つ分くらい。スイッチを押しながらゆっくりと本体を動かすと、まるで蜘蛛の糸(もしくは綿)のようなファイバーが肌を覆っていく。本体と肌の距離が適切でなかったり、早く動かし過ぎたり、塗布するファイバーの量が少ないと、均一な「一枚膜」が形成できないことがある。コツをつかむと簡単で、1分程度で均一に塗布できるようになる。

見た目もつけた感じも違和感のない「究極の一体感」

 実際に塗布してみよう。極細線維を噴射し、重なり合った綿のような状態を、そっと指の腹で押さえると……? 写真のように透明な一枚のヴェールに変わり、ピタッとフィットする。見た目にも分からず、つけている違和感もない(厳密には、布直後は肌がピンと引っ張られる感じがするが、すぐに気にならなくなる)。これは正直、驚きの体験だった。

 表情の動きにもついてくる究極の肌との一体感は、まさに「第二の皮膚」と呼ぶにふさわしく、感動を覚えずにはいられない。そして、閉塞感を感じないのも特徴の1つ。これは1マイクロメートルという極細線維が折り重なって1枚の膜を形成するため、通気性に優れているからだという。シールド感がありつつ、息苦しさを感じない、既存のシート状マスクやクリーム等の保湿材とは全く違う使用感だ。

 既存のシート状マスクには、不織布に美容液を浸透させたもの、美容液をゼリーのように固めたものなどがある。いずれも乾くと浮いてきたり、下を向くと落ちてきたりする。これらとファインファイバーのベールが最も違う点は、「一晩中貼っておけること」だろう。うっかりシート状マスクをつけたまま寝てしまうと、シートが乾いて逆に肌の水分が奪われることがある(忙しい女性は、1度くらい経験があるのでは…?)。ファインファーバーの薄膜ベールは、一晩中肌に寄り添い、「理想的な湿潤環境」に保ってくれるのだ。

翌朝の肌の質感は、かつてない感動体験

 翌朝起きたら、一晩塗布した薄膜ベールをピリピリとはがし、いつものように洗顔を行う。この剥がしたあとの「肌感覚」に、正直とても驚いた。しっとりと潤いで満たされ、表面は実に滑らか。キメがきちんと整っている感じがする。夜に濃密なクリームで保湿すると、翌朝はベタついたり脂が浮いてくることもあるが、あと肌がロウのように滑らかで、つるんと整っている。感覚的な表現で恐縮だが、「本来の潤いを過不足なく保持している」「バリア機能があるべき状態に整っている」というのが近い。

 仕事柄、これまでさまざまな保湿アイテムを使ってきたが、確かにこの肌感覚は過去に経験がなく、既存の保湿アイテムとは一線を画すと言っていい。たった1回の使用でこの保湿感が実感できるのも感動的だ。数日間継続して使うと、さらに表面が滑らかに整い、毛穴の引き締め感が増していくように思う。試していたのは寒さが増していく初冬の時期だが、乾燥して粉を吹くような状態に陥らなかった。花王は毎日の使用を推奨しているが、最初に集中して使い、ある程度肌状態が整ったら、乾燥がひどい時など週2~3回の使用でも良いかもしれない。

専用の美容液は併用しないとダメなのか?

 一方で、使っていて気になった点もいくつかあった。まず最初の頃は、一枚膜の均一なベールを形成するのが難しく、翌朝はがす時にポロポロと破けてしまったこと。花王に問い合わせてみると、ディフューザー本体と肌の距離が適切でない可能性や、噴射量が少ない可能性があるという。白い綿のようにファインファイバーが肌を覆うまできちんと噴射すると、確かに一枚膜ではがれるようになった。

 また、素朴な疑問として、「専用美容液の『エフェクター』は、必ず併用しなくてはいけないのか?」ということもある。スキンケアの最後にクリームを使用する場合、エフェクターのほうが、テクスチャーが軽く浸透していく感じがしないこと。あとは単純に「クリームの上にそのままファイバーを噴射し、ベールで覆ってはダメなのか」という疑問も。

 この問いに対する花王の回答は「専用のエフェクターは併用して欲しい」だった。なぜなら、エフェクターとファインファイバーのベールがセットとなった時、最も理想的な湿潤環境が整うからだ。今回の製品はベールの薄膜感、肌との一体感ばかりが注目されがちだが、ファインファイバーの優れた特徴の1つは、極細線維の「毛細管現象」(液体に細い管を入れると、液体を引き込む力のこと)にある。肌の上に張り巡らされた極細線維の膜に、このエフェクターを効率良く毛細管現象によって引き込み、湿潤環境を整えるよう設計されている。もちろん、クリームの上にファイバーのベールを塗布しても毛細管現象は発揮されるが、「最も理想的な湿潤環境」をかなえるのは、エフェクターであるという。ちなみにこの湿潤環境実現のために、花王は100以上の処方を検討し、現在のエフェクターにたどり着いた。

 それを聞いて、クリームや乳液など、色々なアイテムの上にベールを重ねてみたが、確かにエフェクター使用時が最も膜感が均一で、翌朝の保湿感もバランスが良かったように思う。一方で、使い続ける場合は、消耗品としてのコストを考慮しないといけない。エフェクターは約3カ月分、本体にセットするファイバーのポーションは1カ月半分とのこと。個人的には、これらのランニングコストが、もう少し手の届きやすい価格だとありがたく思う。

メイクや医療分野への応用に期待!

 前述のように、使用法やコストの課題はありつつ、花王のファインファイバー テクノロジーが、かつてない技術であることは間違いない。今回は健常肌の人に向けた製品だが、個人的には、バリア機能が低下した肌(たとえばアトピー症状の肌など)にこそ、シールド膜として役立つのではないかと思う。さらに一歩進んで、寝たきりの方の褥瘡や、傷跡の治療など、「医療分野」への応用にも可能性を秘めている。これらを実現するためには、薬剤の開発や安全性の確認など、さらなる研究及び知見の集積が必要だが、現代特有の皮膚疾患や高齢化社会への貢献が期待できる。

 そして、一女性としては、いずれ「メイク分野」への進出も、期待せずにはいられない。朝シューッと噴射して、見た目には分からない均一な肌を演出し(まさに疑似皮膚として!)、夜帰宅したらはがすだけ、というメイクが実現したらどんなにいいか……!花王も今回は「第一弾」と称しているように、現在もファインファイバーを応用した製品の開発が進んでいるそう。新たな製品の登場に、心から期待したい。

宇野ナミコ:美容ライター。1972年静岡生まれ。日本大学芸術学部卒業後、女性誌の美容班アシスタントを経て独立。雑誌、広告、ウェブなどで美容の記事を執筆。スキンケアを中心に、メイクアップ、ヘアケア、フレグランス、美容医療まで担当分野は幅広く、美容のトレンドを発信する一方で丹念な取材をもとにしたインタビュー記事も手掛ける