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「見終わったら若返っているかもしれないよ」 カルティエCEOに最新展覧会の見所と狙いを直撃

 「カルティエ(CARTIER)」は12月16日まで、東京・六本木の国立新美術館で開催中の展覧会「カルティエ、時の結晶」(主催は日本経済新聞と国立新美術館)にメゾンもしくは顧客が所有するハイジュエリーを一堂に並べている。今月初旬のオープニングには、フランスからシリル・ヴィニュロン(Cyrille Vigneron)=カルティエインターナショナル最高経営責任者(CEO)も来日した。写真を交えながら、シリルCEOに展覧会の見所はもちろん、皆が買えるわけではないハイジュエリーを広く公開する意義などを聞いた。

WWD:単刀直入に、今回の展覧会で見せたかったのは、何?来場者に何を感じてもらいたい?

シリル・ヴィニュロン=カルティエインターナショナル最高経営責任者(以下、シリルCEO):非常に多くのハイジュエリーが一堂に会するが、この規模感は「日本初」というワケではない。加えて私たちは今夏、中国・北京でも大規模な展覧会を開催したばかりだ。だから「カルティエ、時の結晶」では、時系列にハイジュエリーを並べるような、一般的なキュレーションとは違う試みに挑戦したかった。

WWD:それでも展覧会の主題は、「時」だ。

シリルCEO:時系列に並べたから「時」ではなく、石に着目したから「時」なんだ。石は太古の時代から存在しており、比すれば私たち人類の歴史なんてちっぽけなものだ。今回は19世紀のアーカイブから、1970年代以降に私たちが販売したプライベート・コレクション、世に送り出してわずか1、2年の時計やジュエリーが混在しているが、メゾンの百数十年の歴史なんて、石と比べればほんの一瞬。石にしてみれば1分、いや1秒くらい刹那な時間かもしれない。そう考えたら、時系列にこだわらなくても良いんだと勇気がもてた。また、ジュエリーの地金に用いるプラチナやゴールドは、隕石の衝突によって舞い上がったホコリやチリが長い時間をかけて変容したものと言われている。貴石・半貴石もそれぞれの歴史を有しているし、そんな石を用いたジュエリーには数奇な運命を過ごしたものもある。会場のディスプレーに用いた火山岩も神秘的な過程を経て今、こんな大都会に鎮座しているのだろう。石は、ある一時をその石ならではの特徴に留めながら、時代を超越するんだ。だから展覧会を見に行けば、きっとあなたも時代を超越できる。会場を出たら、ちょっと若返っているかもしれないよ(笑)。

WWD:会場のディスプレーの話をすれば、火山岩はもちろん、屋久島の杉の一枚板や掛け軸、器など、現代美術家の杉本博司と建築家の榊田倫之が主宰する新素材研究所の収蔵物との陳列もユニークだ。

シリルCEO:「悠久」という言葉に代表されるように、かつての日本にはゆったりとした「時」の流れが存在したのに、現代の東京は何もかもがスピードアップしている。ヨーロッパがまだまだのんびりしているのに比べると、驚異的だ。だからこそ、「悠久」の時代のアンティークを使うことに意義がある。「カルティエ」のコンテンポラリーな作品と、1000年も昔のアンティーク。コンテンポラリーとトラディショナルの融合は「時」を考える契機になるだろうし、「カルティエ」のジュエリーがタイムレスであることを証明するだろう。日本のアンティークと、西洋のジュエリーを1つの空間で見せることは、ダイバーシティー(多様性)の表現方法とも解釈できる。

WWD:会場に並ぶハイジュエリーは、誰もが買える代物ではない。それでも、それを広く公開することに意味がある?

シリルCEO:ハイジュエリーの展覧会は、来場者にネックレスを販売するという直接的な目的のためだけに行っているワケではない。私たち「カルティエ」は、さまざまな角度から皆さんにアプローチできるブランドだと思っている。美しいジュエリーに魅了されるお客さまもいれば、メゾンの歴史に興味を持つ方もいるだろう。レッドカーペットのセレブから「カルティエ」の名前を聞く人もいれば、友達のデイリーユースの時計やジュエリーからブランドを知る人もいる。「カルティエ」は20世紀には国際的なメゾンへと成長を遂げ、世紀を超えて世界中の人と時代を歩み、時代を目撃している。さまざまなイベントを開くのは多様な人とつながるため。「カルティエ」のコミュニティーをもっと大きく、人々との絆をもっと深くするためだ。今回のイベントも同じ。ビジネスに大きなインパクトを与えるというより、消費者一人ひとりの感情にインパクトを与えることを願っている。