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「自分の感覚で、残り98%改善の余地がある」 ZOZO研究所が考えるAIのポテンシャル

 ファッション業界にもAIの波が押し寄せている。弊紙「WWDジャパン」でも9月24日号でファッションAIに関する特集を行ったが、その中で日本国内におけるファッションAIの現状について先進企業5社を紹介した。ウェブでは先進企業5社に聞いたAIに対する考え方をインタビュー形式で紹介する。最終回にあたる第5回は、「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZO(旧スタートトゥデイ)傘下でAIをはじめとする技術研究を行うZOZO研究所をピックアップ。“ゾゾスーツ”などアパレル業界にいながらもテクノロジーとの関係が深い同社が考えるAIの可能性とは。

WWD:あらためて、ZOZO研究所の立ち位置とAIの扱い方とは。

金山裕樹CINO(以下、金山):設立の目的は“ファッションを数値化する”こと。実はZOZOとして人工知能という言葉はあまり使っていないのだが、現段階で活用している機械学習やディープラーニングが本当に“知能”なのかというと、まだまだAIと呼べるものではない。そもそも、AIを前に押し出すことはなく、やるべきことは課題解決。AIは手段だ。もちろんAIはありとあらゆるところで使っていくだろう。

WWD:最近では“ゾゾスーツ”を使わずともピッタリなサイズを提案できるサービスをスタートしたが、あれはAIとは呼べないのか。

金山:実は“ゾゾスーツ”についてもAIではなく、“独自の体型推測アルゴリズム”と表現している。“ゾゾスーツ”の計測には確かに機械学習を使っているが、われわれの考えるAIは、人間と比べても比較できないくらい賢いものだ。

WWD:ZOZOが考えるAIはまだまだ実装されていない?

金山:形になってお披露目できるのはまだまだ先になるだろう。それを実現できる人材の獲得に難しさがある。そもそも人材が少ないが、われわれはファッションに特化したAIを模索している。アパレル業界にはAIを使える余地がたくさんあって、産業として面白いということをもっとアピールしなければ市場自体が盛り上がらないだろう。

WWD:危機感はあるか。

金山:このペースではいけないと思う。第二創業期として「ゾゾタウン」の成長に加えてプライベートブランドなどやることは大幅に増えている。その一方で、人員が倍になっているわけではない。つまり、質を変える必要がある。そのためには社内の環境や社員の意識改革も必要だ。

WWD:具体的なAIの活用法については見えているか。

金山:やることはたくさんある。設立後に社内でのヒアリングを続けてきたが、自分の感覚でいえば活用できるのは2%くらい。残りの98%は改善の余地があるということだ。

WWD:AIを使えばどんなことができるのか。

金山:例えばアプリの検索精度の向上や高度なリコメンドなどは鉄板だが可能だろう。その他、ECのささげ作業や需要予測など、裏側でも人間がやっている作業を効率化できると思っている。やるかどうかは別として、ダイナミックプライシング(売れ行きに応じた価格変更)なども物理的には可能だろう。

WWD:AIのできることが2倍になれば、売り上げも2倍になると?

金山:もしAIの活用率が50%になれば、売り上げは2倍どころか、50倍くらいになるかも知れない。指数関数的な成長が期待できるだろう。

WWD:今後、開発したAIサービスを外部に向けて提供していく可能性はあるか。

金山:もちろん共有すべきナレッジが生まれたら、オープンソースとして発表していくし、「ゾゾタウン」の外にシステムを広げていくプロジェクトも計画している。中期経営計画の一環としてBtoB強化を掲げているが、当社で作ったものをこういった形で社外に提供していくことは大いにありうる。

WWD:そもそも、AIの開発・研究までを自社でやる意義とは?

金山:他社のリソースを使うと、圧倒的に仕様変更などの環境変更に弱い。また、スピード感を持って対応できない場合も多い。もちろん、ベーシックなものは外部と提携してもいいし、当社も一部サービスは外部と連携しているものもある。しかし、内製化する部分を見極めることは重要だ。

WWD:ZOZO最大の特徴は、学習に活用できるデータをどのアパレル企業よりも持っていることだと思う。

金山:大量のデータから法則性を導き出すことがAIなので、データが全て。ファッションに関してはデータが全てそろっているので、有利な状況にいるだろう。ただ、石油と同じでデータは精製しないと意味がない。