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反撃に出た英国毛皮産業 毛皮はサステイナブルだと主張

 英国の毛皮使用反対および賛成団体は4月18日、環境食糧農林委員会による審問の一環として、議会で毛皮使用の是非について供述を行う。同委員会は「毛皮業界がどうすれば消費者に透明性を提示できるか」を考えているという一方で、長期的には「英国政府はEU離脱をきっかけに毛皮輸入を規制する法制定を考えるかもしれない」ともしている。

 「グッチ(GUCCI)」や「ヴェルサーチ(VERSACE)」など多くのブランドが毛皮使用廃止を表明する中、反毛皮活動家は毛皮輸入を禁ずるように英国政府に圧力をかけ始めている。ことの発端は、英国のEU離脱が正式に決まった昨年、ハウス・オブ・フレイザー(House of Fraser)、ミスガイディッド(Missguided)、ボーホードットコム(Boohoo.com)といった小売業者が、毛皮製品をフェイクファーと偽って販売していたことが発覚したこと。この件について小売り各社は、意図的なものではなく単なるミスだと主張している。

 反毛皮運動が盛り上がる一方で、毛皮賛成派の活動も広がりつつある。英国の毛皮業者の組合は、毛皮を使用するかどうかは選択の自由だと訴えるとともに、毛皮はフェイクファーに比べてはるかにサステイナブルで、環境にも優しい素材だと主張している。

 「毛皮問題に関し、選択の自由とは何を指すのか?全ての人が菜食主義者というわけではないし、多くの人は肉を食べ、シルクを使うことに対してはなんら疑問を感じていない」と、英国毛皮貿易協会のマイク・モーザー(Mike Moser)最高経営責任者(CEO)は不満を語る。動物の権利保護を求めるのなら、論争は毛皮に限らず、羽毛、羊毛、シルク、エキゾチックレザー、そしてレザーにもすぐ飛び火するとモーザーCEOは続ける。

 「毛皮産業の動物に対する基準は実はとても高い」といい、毛皮のためだけに動物を飼育することはもうしていないという。「欧州の毛皮農場で育てられた動物は、肉は畜産業者に売られ、脂はバイオ燃料となり、骨は有機肥料となる。動物は余すところなく使われている」。欧州の毛皮メーカーは、毛皮農場が動物をどう扱っているかを監視するプログラムを作成中といい、2020年までに欧州と北米の全毛皮メーカーが同プログラムの認証を受ける予定だ。

 また、毛皮製品の環境に対する負荷は非常に少なく、石油から作られるフェイクファーは環境負荷が多大だと指摘する。一部のフェイクファーは、土に還るまでに1000年かかるのだという。

 さらに、EU離脱に伴って英国でさまざまな法律が精査されるタイミングを、反毛皮団体のザ・ヒューマン・ソサエティ(THE HUMAN SOCIETY)は毛皮規制に利用していると語る。一方でザ・ヒューマン・ソサエティは、毛皮売買に対する英国民の嫌悪をくんで、政府は毛皮を法律で禁止すべきと要求している。モーザーCEOによれば、毛皮製品の売上高は、16年に1億6200万ポンド(約247億8600万円)に達し、これは11年の3.5倍だという。「正当な産業をわざわざ規制する理由が分からない。規制すれば、1億6200万ポンド分の経済的打撃があり、雇用も失うことになる」。

 「グッチ」「ヴェルサーチ」の他、「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」「フルラ(FURLA)」「マイケル・コース(MICHAEL KORS)」などのビッグブランドが、毛皮の使用をやめると表明した。モーザーCEOは、そうしたブランドの姿勢が消費者の意識に少なからず影響を与えていると話す。また、こうしたブランドの決定は、昨今の反毛皮ムードに追随したものであり、エキゾチックレザーやレザー、羽毛は今も変わらず使い続けているブランドがある、それを消費者は知るべきだと続ける。たとえば、「ヴェルサーチ」などのトップブランドは、生後3カ月の子牛の皮をはいだ高品質なレザーを使っていると指摘する。

 世の中の反毛皮の動きに反して、若いデザイナーや学生は素材としての毛皮に引き続き興味を抱いているとモーザーCEOは見る。英国毛皮貿易協会は英国ファッション協議会(以下、BFC)とともに、動物の福祉に関する学習の機会を提供しているという。

 加えて、ハーヴェイ・ニコルズ(HARVEY NICHOLS)などの大手小売りは反毛皮の方針を取り下げ、「カナダグース(CANADA GOOSE)」は、欧州での旗艦店初出店地にロンドンを選んだ。18-19年秋冬ロンドン・メンズ・コレクションでは、デンマーク人のデザイナー、アストリッド・アンデルセン(Astrid Anderson)が、フィンランドの毛皮メーカー、サガファー(SAGA FURS)、ノオミラパス(NOOMI RAPACE)との協業商品を発表した。「実際の生産工程を知ると、毛皮はとてもサステイナブルなもの」とアンデルセン=デザイナーは語った。

 現在、毛皮産業には厳しい目が向けられている。PETA、サージ(SURGE)、ザ・ヒューマン・ソサエティなどの反毛皮団体はBFCに対し、ロンドン・コレクションのランウエイショーで毛皮使用を禁止するよう求めている。18-19年秋冬のロンドン・コレクションの会場周辺でも、反毛皮活動家はさまざまな抗議活動を行った。不気味なスケルトンの服を着て、「お前たちの手は血に染まっている」「恥を知れ」と叫んでいた活動家もいた。

 BFCは毛皮業界との対話を続けており、業界に対して持続可能な産業の在り方を推奨している。だからといって、ブランド側に何を作るかを強制することはできないという。「英国のファッション産業を代表するわれわれの役割は、デザイナーの自由なもの作りを助けること。デザイナーが何を作るかに口を出す権利はない。人間と動物の基本的権利を尊重したいし、エシカルなもの作りを表現する場としてロンドン・コレクションを活用したいというデザイナーがいるなら、その思いを応援したい」と、BFC代表は話す。