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連載 中高生のファッション育

三井不動産が表現した“カオス空間” 宮下パークが提案する新たな公園の在り方 中高生のファッション育Vol.17

中⾼⽣のためのファッション育プロジェクト「フューチャー・ファッション・インスティテュート」(FUTURE FASHION INSTITUTE 以下、「FFi」)は、 「ファッション育」を通じて⼦どもたちの感性を磨き、未来の業界を担う⼈材や、センスを活かして働く⼒の育成を⽀援する。所属する中⾼⽣メンバーは、展⽰会訪問や業界⼈へのインタビューを重ね、⾃らの体験を発信。こうしたポジティブな循環を通じて、⼦どもたちが「未来の⾃分」を思い描き、夢に近づくことを⽬指す。

今回のFFiは、渋谷の宮下パークを訪れた。日本を代表する数々のランドマークを手掛けてきた国内トップクラスのデベロッパー・三井不動産から、黒田耕弘 商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部、國嶋航太 商業施設・スポーツ・エンターテインメント本部アーバン事業部に協力してもらい、渋谷のまちづくりの最前線を学んだ。 その様子を、FFiの大学生メンター、松浦ゆら(明治学院大学3年)がリポートする。

まずは館内ツアーから

本プログラムは、2人の説明を聞きながら、実際に宮下パーク内を歩いて学ぶことからスタートした。最初に訪れたのはサウス1階にあるイベントルーム。元々はオフィスルームだった空間を、現在は音楽やアニメなどを中心としたカルチャーのイベントルームにしている。その隣には渋谷横丁という飲食スペースが広がり、訪れたのは平日の昼過ぎにもかかわらず盛り上がっている様子だ。


次にファッション、雑貨からカフェ、レストランなどさまざまなショップが集まる2、3階へ。國嶋さんは「一本の道に沿ってさまざまなジャンルのショップを展開する様子を、多彩な店が集まり人々がにぎわうマルシェに見立てている」と説明した。フロアには時折サイネージや、ポップアップなどのイベントができるスペース、アート作品を展示している美術館のようなスペースが見られ、他の商業施設では体験することのできないテーマパークに来たときのような高揚感が感じられた。

最後に、屋上に広がる渋谷区立宮下公園を訪れた。北側は芝生広場とカフェ、南側はスケート場やボルダリングウォール、多目的施設があり、若者を中心に賑わっている様子だ。國嶋さんは、「宮下パークができる以前、宮下公園には遊具やボルダリングウォールがあった。そのレガシーを残して、公園っぽさのある緑も大切にしている」と過去から現在に続く宮下公園の歴史について説明した。

本来、公園は行政が管理する公共空間。しかし現在の宮下公園は渋谷区が所有し、三井不動産と西武造園が指定管理者として運営を担う。私たちが訪れた際には、「ロッテ(LOTTE)」による「クールシェルタープロジェクト」が実施されていた。芝生ひろばやスケート場内には、お馴染みのアイスクリーム“クーリッシュ”や“爽”のパッケージをイメージした大型シェルターや什器が設置され、厳しい暑さの中でも日差しを避けながら涼しく休憩できる空間がつくられていた。

宮下パークが提案する
新たな公園のありかた

こうした企業との連携も含め、宮下公園は「自走する公園」という新しい公園のありかたを実践する。実際に現地を訪れ、企業と公共空間が関わる具体的な取り組みを見学し、公共空間が新たな価値や賑わいを生み出す仕組みを具体的に学ぶことができた。

続いて三井不動産のミーティングルームに移動し、黒田さんと國嶋さんから、三井不動産の仕事について聞いた。デベロッパーとは、土地や建物を開発して街をつくる会社のこと。ビルを建てるだけではなく、完成後にどう使われ、どう賑わせるかまで考えるのが仕事だ。宮下パークをはじめとした都心商業施設の運営を担当してきた國嶋さんは、施設がより魅力的になるように考えるのが仕事だという。

次に宮下パークの開発概要と、エリア価値向上の取り組みについて説明を受けた。従来の宮下公園には耐震性や利用上の課題、また社会の変化に伴うさまざまな改善点があった。そこで2014年に渋谷区が公募プロポーザルを実施し、15年に三井不動産が渋谷区と基本協定を結んだ。そして20年、宮下パークが開業したのだ。

「宮下パークの立ち上げ、リーシングを行う際に意識していたことは、"いい意味でのカオス"」と黒田さん。渋谷には既に渋谷スクランブルスクエアや渋谷パルコがあり、表参道にはラグジュアリーブランドが立ち並び、原宿にはストリートショップが人気を博していた。そんな街の中でどう差別化を図るのか考えた時に、ラグジュアリー、ストリート、クラブ、横丁が一直線に並ぶ"いい意味でのカオス"を宮下パークの象徴にしたいという結論に至ったという。このカオス感こそが他の商業施設との違いを生み、また施設内をいたときに感じた高揚感の理由の1つなのだろう。

「中高生が訪れたくなる」宮下パークとは?

プログラム後半は、「中高生が訪れたくなる宮下パークの施策を考えよう」というテーマのもと、中高生メンバーが1人ずつ施策を考え発表。それぞれが課題点を考え、他の商業施設や各々の経験談などをもとにアイデアを膨らませた。発表では、宮下パークにマーケットやゲームセンター、カプセルトイのブースを作るといった具体的な案のほか、「公園だけではなく施設内に注目が集まるようにしたい」「こたつで日本文化を伝えたい」など、中高生ならではの斬新な発想が多く挙げられた。

中高生の柔軟な発想と的確な提案に驚いている様子の國嶋さんと黒田さんには、デベロッパー目線でのフィードバックをもらい、質疑応答の時間に。キャリアや不動産業についてなど、さまざまなトークが繰り広げられた。

日本を代表する流行と若者文化の発信地であり、常に大規模な再開発が進む活気あふれる街・渋谷で、存在感を放ち続けている宮下パーク。その裏には、三井不動産の経験と実績に基づいた、枠にはまらない斬新なアイデアがあったのだ。1つの施設を通して街を作っていく、デベロッパーという仕事のおもしろさを身をもって感じた貴重な時間となった。

参加した学生のリポートから

「今回のインターシップに参加し、自分の得意なことが新しく見つかった。今までアイデアを出すことに苦手意識があったが、三井不動産が誰をターゲットにしているかというヒントを参考にしたら、自分でも驚くほどアイデアが生まれ、自分の新たな可能性を見つけることができた」(I.O/高校1年) 
 
「人気スポットの裏側を知る貴重な機会だった。宮下パークについて、渋谷に訪れる多様な人々が楽しめるユニークな工夫がされていることを知れた。高級店から大衆的な店まで、幅広いテナントがそろい、他の商業ビルと明確に差別化されている点が勉強になった。公園から見える位置にも広告を設置するなど、建物だけではなく、周囲も巻き込んで商業化されている点が印象に残っている。話題の場所にただ遊びに行くだけではなく、違った視点で物ごとを見ることの大切さを学ぶことができた」(Maria Umezawa /高校1年) 

「これまで宮下パークに行くことはあまりなく、自分向けの施設ではないと感じていた。屋上の公園にはSNS用の撮影をしている人も多く、落ち着かない印象を持っていた。しかし今回、施設のテナントの特徴や入れ替えの話も聞くことができ、また友だちと行ってみたいと感じた」(A/高校1年) 
 

「“モノを買う”という従来の目的から、圧倒的な“体験価値”を提供する、商業施設のの変化を感じることができた。特にスポーツエンターテインメントやメディア発信を融合させ、施設自体を1つの文化装置として機能させるアプローチは圧巻だった。行くたびに新しい流行が生まれる渋谷という地で、商業施設と公園を掛け合わせる画期的な空間に触れ、常に新しい挑戦を吸収し進化し続ける姿に強く引かれた。この経験を通じ、インバウンドや若者など、多様な人々をひきつける仕掛けを学び、街のポテンシャルを引き出してより日本を盛り上げるデベロッパーの仕事をしたいと、さらに強く思った」。(FFi大学生メンター/久住琉菜) 
 
「今回は企画立案から構成、当日の司会進行まで担当した。宮下公園の課題解決や渋谷のまちづくりなどから始まった宮下パークの開発運営に、民間と行政の垣根を超えてさまざまな人が携わっていることを学んだ。特に『カオスをテーマにしている』という表現が印象に残っている。ラグジュアリーとストリートを同じフロアに展開することで、渋谷という街を表していると聞き、新しい視点で商業施設を見るきっかけになった」(FFi大学生メンター/松浦ゆら) 
 
「生徒同士で積極的に質問したり、相手からの問いに対してアイデアを出し合ったりする中で、異なる意見が融合し、新たなアイデアが生まれる楽しさを実感できた。実際の仕事に触れながら、新しい視点や考え方を得ることができ、とても有意義な経験になった」(FFi大学生メンター/えり) 
 
「最初にデベロッパーという仕事を聞いたときは、なかなかイメージがつきづらい部分もあったが、三井不動産による土地の取得から開発の経緯を聞き、その背景にいるさまざまな人とのつながりや、それぞれの想いが感じられた。企業や部署の中で完結することは決してなく、ジャンルを横断したさまざまなプロフェッショナル、ときには行政とつながりながら開発を行っていることを知り、この仕事の規模の大きさと面白さを強く感じた」(FFi大学生メンター/臼田幸平)

「私がこれまで持っていた宮下パークのイメージは“ナンパスポット”だった。しかしもともとは皇族の住まいの近くにある公園だったことを知り、現在の姿との大きなギャップにとてもおどろいた。また話を聞く中で、宮下パークがメディア化されていることについて知り、印象が大きく変わった。建物そのものが広告としての価値を生み出していること、メディア化することにより経済効果につながることを知り、建物や空間が持つ新たな可能性について考えるきっかけになった」(FFi大学生メンター/秋山寿) 
 

今回のリポーターについて

松浦ゆら(まつうら・ゆら):福岡県出身。明治学院大学文学部フランス文学科3年。幼い頃からファッション業界や芸術分野に興味があり、FFiの活動を通じてファッション業界への理解を深めながら自身の可能性を広げる。半年間の仏・パリ留学を経て、現在はフランス語、ヨーロッパの文学や芸術を学習中。グローバルで活躍できる職業を志す。最近はVLOG制作にも挑戦中

INFORMATION

PHOTOS:RYOTARO TANI

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