メンズとウィメンズ、オートクチュールとプレタポルテを自由に行き来して「ディオール(DIOR)」という1つの世界観を築くジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の2027年春夏ウィメンズ・コレクションは、これまで発表したさまざまなコレクションの要素を融合しつつ、軽やかに、極限まで繊細に仕上げたかのようだ。
まずは、酷暑の中で開かれた先のメンズ・コレクションに通じるアイデアから始まった。ファーストルックは、メンズ同様にシルクシフォンで作ったピンストライプのダブルのジャケット。その原型はメゾンの3代目のデザイナーを務めたマルク・ボアン(Marc Bohan)のビンテージジャケットにあるという。ジョナサンが自身が購入したものだ。そして彼は、このようなジャケットの制作をオートクチュール部門のお針子たちに依頼。するとジャケットは極薄の生地による、まるでドレスのように軽やかな1着に生まれ変わった。全ての部門を統括するからこそ、それぞれの得意技をよく知るジョナサンならではの昇華法だ。合わせたのは、同じくシルクシフォンで作ったボーダーのシャツブラウスと、アイボリーのシフォンを10枚も重ねたミニスカート。今シーズンは、レイヤードしたシフォンを贅沢に用い、メンズとの連動は色濃くしつつも、オブジェなどのフォルムに魅了されてきた過去のウィメンズとは異なる新境地を見せる。
シフォンを巧みに操るのは、クチュールメゾンならではだろう。ジャケットには千鳥格子などのチェック柄をプリントして、クラシカルなスタイルを伝統には縛られない軽やかなムードに変換。同じ柄のシフォンからは、ファスナーを取り付けたブルゾンも作った。ドレスのイメージが強い素材をカジュアルに楽しむ。ファーストシーズンではデニムやチノパンなどの日常着に加えた多数の“ひだ”、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)による名作“デルフト”に由来するディテールもシルクシフォンに。淡いイエローやピンクに染めると、甘いガーリーな世界が広がる。同じ素材で作ったペタル(花弁)を無数にあしらったノーカラージャケット、ハリのあるプリーツ入りのペプラムスカートに薄いガーゼのようなアンダーレイヤーを組み合わせた「コロラ(花冠)・スカート」は、過去2回のクチュール・コレクションに通じる花々への愛の表現方法。淡いカラーリングで統一したスタイルは優しい世界を描く。ジョナサンは、「木々、水、煙……、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)の絵画のように、すべてが溶け合っていくようなイメージ。そしてブランドが持つヘリテージ(伝統)の重苦しさを、何とかして取り払いたかった」と話す。
デザインコードのアップデートか?
一度発表したスタイルの再提起か?
もう一つの大きな特徴は、アシンメトリーだ。上述したプリーツを寄せたスカートを筆頭に、下腹部に大きなリボンをあしらったジャケットなどは左右非対称のシルエットだし、柔らかなファブリックを用いたピアスも片方だけ。風になびくからさらに偶発的な美しさを醸し出す。
早くも自身のデザインコードをアップデートしたかのような印象もあるが、同時に一度問いかけたスタイルを時間をかけてさらに洗練させつつ、新しい表現として再び確立していこうという意欲にも思える。ジョナサンは、「クチュールメゾンでは、忍耐強さが必要。最終的な答えにたどり着くことなんてできないだろうし、それこそがファッションの醍醐味。もし答えにたどり着いてしまったら、もう進むべき場所などなくなってしまうから」と話した。