
イータリー(EATALY)は9月15日まで、宮崎県産食材をイタリア料理で楽しむプロモーション“ヴァカンツェ・ア・ミヤザキ(Vacanze a Miyazaki)”を、銀座、丸の内、日本橋、原宿、湘南の国内5店舗で開催している。
今回の主役は、宮崎県日向市発祥の香酸柑橘“へべす”。宮崎県産鶏肉と組み合わせた2種類のプレミアムバーガーをはじめ、宮崎県産クラフトジンを使ったカクテル、ノンアルコールドリンク、マンゴーを使ったドルチェなどをそろえる。
テーマは、いわば「宮崎の食材をイータリーが料理したらどうなる?」。試食会ではバーガー3種類を食べ比べ、さらに“へべす ジントニック”“へべす アイスティー”、宮崎県産マンゴーを使ったパンナコッタも味わった。
そもそも“へべす”って何?
“へべす(平兵衛酢)”は、宮崎県日向市発祥の香酸柑橘。江戸時代末期に地元の長曽我部平兵衛が山中に自生する木を発見し、地域に広めたことが名前の由来とされる。皮が薄く、種が少なく、果汁が豊富。すだちやかぼすなどと比較して酸味がまろやかで、爽やかな香りを持つのも特徴だ。日向では焼き魚や肉料理に絞ったり、焼酎に加えたり、そうめんの薬味として使ったりと、“天然の調味料”のように親しまれている。
今回、イータリーが着目したのもその汎用性だ。バーガーにはカットしたへべすを添え、自分で絞って味わうスタイルを採用。料理に酸味を加えるだけではなく、果実そのものの香りまで体験できるようにした。
実際に複数の料理で試してみると、「酸っぱい柑橘」と一言でまとめるにはもったいない。まろやかな酸味、香り、わずかな苦味が重なり、合わせる食材によって違う役割を見せるのがへべすの面白さだった。
ジューシーさなら“へべすと味わう 宮崎県産チキン ソテー バーガー”
“へべすと味わう 宮崎県産チキン ソテー バーガー”(単品1880円、セット2680円)は、宮崎県産鶏肉をジューシーに焼き上げ、バンズでサンドした一品。別添えのへべすを絞って味わう。
かじった瞬間、プリッとした鶏肉から肉汁と旨みがジュワッと口いっぱいに広がる。そこへへべすを絞ると、単純に“さっぱりする”だけではない。爽やかな酸味と香りによって鶏肉の味の輪郭が際立ち、肉そのものの旨みまで強く感じられる印象だ。
3種類のバーガーの中でも、宮崎県産鶏肉のジューシーさをストレートに楽しみたいなら、まずはこちらを選びたい。
香ばしさなら“へべすと味わう 宮崎県産チキン コトレッタ バーガー”
同じ宮崎県産鶏肉でも、全く違う表情を見せるのが“へべすと味わう 宮崎県産チキン コトレッタ バーガー”(単品1880円、セット2680円)だ。鶏肉をイタリア風カツレツのコトレッタに仕立て、マヨネーズをベースにした地中海風ソースとともにサンドする。
細かなパン粉をまとった衣はサクサクと軽く、揚げ物ながら油っぽさはほとんど感じない。そのままでも香ばしいが、へべすを絞ることで衣の香りと柑橘の爽やかさが一体となり、さらに軽快な食べ心地に変化する。個人的に、ジューシーさを楽しむならチキンソテー、香ばしさとへべすの香りの組み合わせを楽しむならコトレッタという印象だった。
同じ鶏肉×へべすでも、調理法が変わるだけで果実の存在感まで異なって感じられるのが面白い。
肉々しさをへべすが引き締める“プレミアム ビーフ バーガー”
“へべすと味わう プレミアム ビーフ バーガー”(単品2680円、セット3480円)は、150gのビーフパティを使ったボリュームのある一品。力強く焼き上げたビーフパティに、こちらにもへべすを添える。
一口目は、ワイルドな肉感と濃厚な旨みが主役。しかし、へべすを絞ると爽やかな香りと酸味、わずかな苦味が加わり、後味がすっと軽くなる。チキンでは素材の旨みを“引き出す”印象が強かったのに対し、ビーフでは濃厚な肉の味わいに奥行きを与えながら、全体を引き締める役割を果たしている。
肉の存在感を残したまま食べ疲れさせない。へべすが“付け合わせ”ではなく、料理を完成させる調味料として機能していた。
飲む前から香る“へべす アイスティー”

バーガーだけでなく、へべすの個性はドリンクでも発揮される。ノンアルコールの“へべす アイスティー”(800円)は、紅茶にへべす果汁を加えたシンプルな一杯。
グラスを近づけた段階から、へべすの爽やかな香りがふわっと広がる。実際に飲むと酸味は穏やかで、紅茶の香りを覆ってしまうことがない。むしろ紅茶の風味に明るさを加えるように働き、後味もすっきり。暑さが続く夏に自然と手が伸びそうな組み合わせだ。
“柑橘入りアイスティー”として想像するよりも、両者の香りの相性の良さが印象に残った。
香りを楽しむなら“へべす ジントニック”

アルコールドリンクでは“へべす ジントニック”(1380円)を試飲した。宮崎県の尾鈴山蒸留所が手掛ける「OSUZU GIN Original」に、へべすの酸味とほろ苦さを合わせたカクテルだ。
こちらは“爽やか”だけでは終わらない。ジンのボタニカルな香りとへべすの華やかな香りが重なり、非常に香り高い。酸味の奥にはコクや旨みも感じられ、ほんのりと残る苦味も後を引くことなく、むしろ爽快な余韻をつくっている。飲みやすさがありながら、味は単調ではない。へべすの持つ香り、酸味、苦味を最も立体的に感じられた一杯だった。
最後は宮崎マンゴーを濃厚なパンナコッタで
食後には“パンナコッタ 宮崎県産マンゴーソース添え”(1280円)を。自家製のベイクドパンナコッタに、宮崎県産マンゴーを使ったソースを合わせたドルチェだ。
パンナコッタはむちっと弾力を感じる濃厚な食感。一方、マンゴーソースはフレッシュで、口に含むと宮崎マンゴーらしい華やかな香りが広がる。濃厚なパンナコッタだけでは後半に重さを感じそうなところを、マンゴーのフルーティーさが軽やかに整える。コクと果実味が交互に現れ、最後まで飽きずに楽しめる一皿だった。
宮崎の食材を“イタリアンのフィルター”で知る
イータリーは“Eat Better, Live Better”を掲げ、2024年から日本各地の食材をイタリア料理として紹介する取り組みを続けている。今回の“ヴァカンツェ・ア・ミヤザキ”では、全国的に知られたマンゴーだけでなく、まだ県外での認知が十分とはいえない地域固有の食材にも光を当てる。その象徴が、へべすだ。
今回の試食で特に興味深かったのは、へべすが料理によって役割を変えることだった。チキンソテーでは肉汁と旨みを引き立て、コトレッタでは揚げ物を軽やかにし、ビーフでは濃厚な肉感の後味を整える。アイスティーでは紅茶の香りに寄り添い、ジントニックではジンとともに香りそのものが主役になる。
すだちやかぼすは知っていても、「へべすはまだ食べたことがない」という人も少なくないはず。そんな食材との最初の出会いを、郷土料理の再現ではなく、バーガーやカクテルといった親しみやすいイタリアンからつくる。“ヴァカンツェ・ア・ミヤザキ”は、宮崎の味を知る新しい入口になりそうだ。