韓国発のファッションブランド「マルディメクルディ(MARDI MERCREDI)」の勢いが止まらない。大きなフラワーのグラフィックで若者の心をつかみ、日本や中国、インドネシアなど世界8カ国に販路を拡大している。2025年6月に日本1号店である東京・代官山店をオープン。待望の2店目を7月12日、大阪・茶屋町に構えた。ウィメンズウエアに特化した店として、定番の人気アイテムから大阪限定品まで、ブランドらしさを詰め込んだラインアップがそろう。
なぜ2号店を大阪に?
人のパワーが溢れる街の魅力
大阪を次なる出店地に選んだ理由について、ブランドの創業者であるパク・ファモク=ピースピーススタジオ最高経営責任者(CEO)は、「東京と同じくらい人のパワーがあふれる魅力的な街だったから」と話す。大阪梅田駅からほど近いエリアに建つ商業施設「NU茶屋町」のリニューアルの一環として、ビルの“顔”である1階に1フロア約162㎡という広々とした空間で人々を迎える。大阪はインバウンド客が多い土地柄であるものの、ファモクCEOがそれ以上に重視したのは、いかに多くの日本の「マルディメクルディ」のファンと出会えるかということだ。「ローカルなお客さまが来店しやすく、活気あふれる楽しい場所を選んだ。日本を代表する都市になじむような存在になりたい」と意気込みを話す。
日本を特に重要な市場と位置付けている。他国の店舗が現地のディストリビューターに店舗の設計から運営までを依頼している一方で、日本の店舗はピースピーススタジオの直営だ。以前取材した際にファモクCEOは、日本は著名なブランドやデザイナーを生んだ国だからこそ、認められたい思いが強いと語っていた。日本にとりわけ強い敬意を抱いているからこそ、「“土足”で日本文化に上らないために、日本の商業施設の慣習を守りながら、われわれの世界観を発信しようとしている」という。
「マルディ」流、
日本文化を再解釈したおもてなし空間
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ローカライズした店作りで日本での知名度を上げるために、「マルディメクルディ」が意識したのは、大阪らしいパワーと、韓国の視点から見えた日本文化のユニークさを表現することだ。従来、淡いイエローやピンク、ホワイト、グリーンなど優しいカラーパレットをアイテムや店舗で使用してきたが、大阪店では初めて黒を基調に採用した。テナントに入る「NU茶屋町」がスタイリッシュな建物だからこそ、親和性も図ったようだ。
「韓国ブランドを好むお客さまは、韓国らしいテイストを楽しんでいる人も多いだろうが、韓国というフィルターを通して見える日本の良さも伝えたかった」。日本の古民家をイメージして、入り口は小上がりを作ったり、床材をさりげなく畳のような配置にしたり、木目をあえて生かした什器を多用したり。井草を思わせる壁面のグリーンは、あえて透明感のある色を選択した。「日本に和紙があるのと同様に、韓国にも韓紙(はんし)がある。両国の文化から着想した質感を追求した」。また、ファモクCEOによれば、日本は手仕事を尊重する国だという。やみくもに外国人から見たステレオタイプな“日本っぽさ”を作り上げるよりも、日本人の仕事の丁寧さを内装に落とし込むことで、静かで力強いムードを演出した。
もちろん、韓国らしい心遣いも同居する。日本では、商品への汚れを避けるため、店内に飲食物を持ち込まないよう配慮する文化があるが、韓国では顧客が自由に出入りできるように、店頭にドリンクホルダーを設置するケースが少なくない。「マルディメクルディ」大阪店でも入り口すぐのスペースにホルダーを作り、周辺の商業施設で買った飲み物を置ける“おもてなし”をしている。
海を越える、人気のグラフィックたち
デザインのこだわり
世界各国で快進撃を続ける「マルディメクルディ」の強みは、一目見たら忘れないキャッチーなグラフィックデザインにある。もともと韓国の服飾専門学校を卒業し、ストリートブランドでデザイン経験を積んでいたファモクCEOは、監査役であり妻のイ・スヒョンとともに、人の心をつかむロゴの開発に日夜励んでいる。
中でもブランドのアイコンになっているのは、大きな一輪の花が印象的な“フラワーマルディ”と、ファモクCEOの愛犬のダックスフントをモデルにした“ディーダンジ”だ。今や「『マルディ』といえば花」という程度にまで認知度を高めているが、ドックプリントについても、韓国人人気アーティストのクォン・チョルファ(Kwon Chul Hwa)とコラボして新たなイラストをプリントしたTシャツが人気を集めるなど、ブランドを象徴する存在になっている。
ファモクCEOは、「インパクトは大きくとも、どんなコーディネートにも合うシンプルさを意識してグラフィックを作っている。『マルディ』に限らず、他のブランドのアイテムともマッチすることで、お客さまのワードローブに寄り添いたい」と話す。
定番から一ひねり効いたアイテムまで
大阪店の注目ラインアップ
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“ユニセックス Tシャツ ロングスリーブ
フラワーオオサカニューブロッサム”
(9350円)
大阪店限定で書き下ろした「ニューブロッサム」のグラフィックは、エネルギー溢れる大阪をイメージした黄色のフラワーが咲き乱れるデザイン。ショートスリーブタイプもあり(7700円)、秋口にかけても活躍しそうだ。
“Tシャツ トリプルフラワー”
(6050円)
3つの花が並んだ「トリプルフラワー」モチーフが印象的。シンプルなシルエットと軽やかなコットン素材が、暑い季節でも着心地のよさをかなえる。「マルディメクルディ」のTシャツにさらなるバリエーションが加わり、新定番となりそうな一着。
“スエットショーツ フラワー”
(9350円)
ロゴTが定番の「マルディメクルディ」だが、スエット素材のショーツが登場。シグネチャーのグラフィック「フラワーマルディ」を配置し、リラクシングながら愛らしいムードに仕上げた。
“リンガーTシャツ フラワーマルディ”
(7150円)
ビンテージライクな配色で、カジュアル過ぎない絶妙なバランスを保つ。肩周りにあしらったゴールドのラインやナンバリングで、リンガーTシャツのスポーティーなディテールも忘れない。
“クロップドTシャツ ディーダンジ”
(5500円)
クロップ丈とタイトなシルエットがトレンドのY2Kスタイルを踏襲。遊び心のあるダックスフントのロゴ「ディーダンジ」が“外しアイテム”としての効果を後押し。ジャケットやシャツのインナーに着てもスッキリまとまる。
“ジャージー マキシ スカート
ダブルラベル”
(9900円)
「マルディ」の得意技であるミニマルなデザイン性を発揮したアイテムだ。Iラインシルエットの細見なロングスカートながら、ジャージー素材でカジュアルダウン。杢グレーの落ち着いた風合いも魅力。
「マルディメクルディ」にとって大阪は未知の土地だ。今後、取り扱いのラインアップはシーズンによって変わるものの、オープンまもない今は特に“自己紹介”の意味を込めて、ブランドの顔であるグラフィックを用いたアイテムも豊富にそろえているという。「東京・代官山の実店舗に行きたくてもなかなかかなわない人のために、できることは何か?を考えた」(ファモクCEO)。定番から一ひねり効いたアイテムまで、注目のウエアを6つ紹介する。
マルディメクルディ ジャパン