ケリングはこのほど、新たなウォーターポジティブ戦略を発表した。同戦略によると、2050年までのネットウォーターポジティブインパクト達成に向け、2025年、30年、35年をキーマイルストーンに設定し、段階的にプログラムを拡大していく。
ウォーターポジティブとは一般的には、消費量を上回る水の量を供給することを指す。ケリングでは、水消費の削減にとどまらず、システム全体の変革を通じて、水の循環や生態系を積極的に再生し、水に良い影響をもたらすことと定義している。
三本柱となるのは、ウォーターポジティブのスチュワードシップ・プログラム、ウォーターポジティブな原材料、ウォーター・レジリエンス・ラボ。25年に開始するスチュワードシップ・プログラムでは、直接的な事業活動とサプライチェーンの両方において水管理を強化する。またクロムフリーや環境に優しいなめし剤などのベストプラクティスや革新的な技術を活用して、水の効率的な利用を促進し、事業地域での水質と水量の改善を目指す。
ウォーターポジティブな原材料とは、リサイクル生地や代替素材など、自然環境や水への負担を軽減する原材料を指す。ケリングの環境損益計算分析によると、現在2/3の水消費が原材料の生産過程で発生しているという。そのため、再生農業由来の素材を増やすとともに、汚染の削減と流域の回復を促進していく。特に30年以降積極的に拡大を図る。
ウォーター・レジリエンス・ラボは、35年までに重点地域10箇所に設立予定。特にストレスがかかる特定の流域や圧力を受ける生態系を対象に、サプライヤーや他の企業、セクター、地域社会、先住民、公共機関など各地の関係者と連携しながら、健全な淡水生態系の再生と回復を目指す。25年秋には、グループやサプライヤーのなめし革業者が多く拠点を置くトスカーナのアルノ川流域に最初のラボ開設を予定している。
ケリングのマリー=クレール・ダヴー チーフ・サステナビリティ・オフィサー兼渉外担当責任者は「各地の関係者と連携して、測定可能なウォーターポジティブの成果を達成し、社会、環境、経済の強靭性を高め、最終的にすべての人々がきれいな水を利用できるように貢献していきたい」とコメントしている。