ファッション

コンセプトは“地元のお土産屋さん” 人気のポップアップショップ「フッドマート」とは?

SNSで人気のポップアップショップ「フッドマート(Hoodmart)」。2023年から不定期でポップアップを行っており、徐々にインスタグラムを中心に話題となっている。扱うアイテムはアニメのフィギュアやキーホルダー、古着、オリジナルキャラクターのmacoちゃんアイテム。中でも特に人気なのが、異なるキャラクターをセットにしたキーホルダーで、ポップアップの初日には、オープン前から行列ができるほどだ。どのような経緯で「フッドマート」を始めたのか、店主の松坂生麻にアトリエで話を聞いた。

趣味が仕事に

WWD:「フッドマート」を始めた経緯は?

松坂生麻(以下、松坂):2023年1月に「フッドマート」を始めたんですが、それまでは12年ほどメンズブランドで働いていました。でもコロナがあって、一時的に店を閉める状況もあったりして、いろいろと考える時間が増えて。もともと高校生のころから趣味でアメコミや日本のアニメなどのフィギュアや雑貨などを集めていて、社会人になってからもずっと集め続けていました。それが家にも置けないくらいの数になってきて、「これを仕事にできないかな」と思ったのが「フッドマート」をスタートしたきっかけです。実際にポップアップを始めたのは23年4月からで最初はフィギュアの販売が中心で、翌月の5月から今のようなキーホルダーの販売も始めました。

WWD:「フッドマート」の名前の由来は?

松坂:「フッド(Hood)」は、地元という意味で、最初から店舗は持たず、全国でポップアップをやろうと思っていたので、「どこでやっても誰かの地元」という意味も込めて、「フッドマート」という名前にしました。コンセプトは“お土産屋さん”。扱うアイテムもお土産屋さんに置いてあるような、フィギュアやキーホルダー、雑貨、地名が書かれたスエットやTシャツをイメージしていました。

WWD:今はキーホルダーが人気ですよね。インスタグラムを見ていると、オープン前に行列もできていたりしています。

松坂:キーホルダーも最初は5セットぐらいから始めたので、正直驚いています。当時はガチャガチャで集めたキーホルダーや小さなフィギュアを透明のポーチに詰める「ガチャ詰め」が女性に流行っていて、それをカバンにつけたりしていました。ただサイズが結構大きかったので、これは男性はつけないだろうなと思ったんですけど、もしかしたらガチャガチャしたキーホルダーだったら男性もつけるかもと思い、それで3つのキーホルダーを1組にした3連キーホルダーを作ってみたら、ありがたいことにすごく人気が出てきて。

WWD:その3つの組み合わせのバランスが絶妙だなと思うのですが、どうやって選んでいるんですか?

松坂:フィギュア好きの人って、例えば「ONE PIECE」のフィギュアが好きな人は、「ONE PIECE」のフィギュアをバーって並べると思うんですけど、僕は普段隣り合わせにならないキャラクターが一緒になっている方が面白いなと思っていて。例えば、ドラミちゃんの横に、「HUNTER×HUNTER」のキャラがいるとか。キーホルダーも同じ感覚で、普段交わらない3つを1組にしています。

その上で、一番は色合いを重視していて、なるべく同じ色味で統一するようにしています。あとは、丸いフォルムのキャラには普通の8頭身のキャラを合わせたり、人間キャラと動物キャラ、海外のキャラと日本のキャラなど、基本的には全然違うもので組み合わせていきます。だから、キーホルダーの数もかなり必要なんです。例えば3つで1セットのものを、10セット作るとしたら最低30個あれば組めると思うんですけど、僕の場合はその3〜4倍はないと組めない。なので、基本的には毎日キーホルダー用のアイテムは探し続けています。

1990年代の裏原系のデザイナーの事務所が憧れ

WWD:このアトリエにもかなりの量のキーホルダーやフィギュアがありますが、今どんな種類がどれくらいあるのかって把握できているんですか?

松坂:フィギュアは分かりますが、キーホルダーは正直把握できてないものもあります。だから、キーホルダーのセットを組む場合は、一度全部を机に広げて、そこから組んでいくんです。一応、箱ごとに自分なりに1軍、2軍、3軍と分けていて、各セットで1軍、2軍、3軍から1つ選んでセットにしています。

WWD:「フッドマート」さんの影響なのか、キャラクターもののキーホルダーは結構人気が出てきていますが、探せばまだ良いものはあるんですか?

松坂:ありますけど、もうキーホルダーはとんでもなく高騰しています。半年前まで1000円以下で買えていたものが、高いものだと1万円以上になったりもしていて。「ONE PIECE」や「HUNTER×HUNTER」だと1つで2万円以上とかするので。今後はキーホルダーの数はあまり出せなくなっていくかもしれないです。

WWD:キーホルダーを買っていくお客さんは女性、男性どっちが多いですか?

松坂:キーホルダーに関しては女性の方がちょっと多いぐらいですかね。でも半々よりちょっと多いぐらいで、女性55%、男性45%くらいだと思います。最初は男性ばかりだったんですけど、女性が徐々に増えてきています。

WWD:フィギュアに関してはどうですか?

松坂:フィギュアは男性の方が圧倒的に多いですね。中でも「スター・ウォーズ」が人気です。ただフィギュアは、自分が好きなものを買い付けて売っているので、即完というよりかは徐々に売れるという感じですね。もともとフィギュアに関しては、デザイナーズ家具やビンテージ家具の端っこに、キャラクターのフィギュアがポンと置いてある、その抜け感みたいのを作りましょうとインテリア提案をしているので、1つ置いてあるだけでちょっと気分が上がるものを探しています。僕の一番の憧れというか、影響を受けたのがやっぱり1990年代の裏原系のデザイナーの事務所で、おしゃれなインテリアの中にフィギュアが置いてあったり、遊び心がありましたよね。

WWD:特にNIGO®さんとか。

松坂:そうですね。「仕事場なのにこんなことしていいんだ」みたいな。そういうカルチャーが東京らしいし、僕もそれを追っかけ続けているところはあります。

いろんな人が楽しめる工夫

WWD:たまにウェブでも販売していますが、基本的にポップアップで売るのは変わらず?

松坂:やっぱりフィジカルでやっていこうと基本的には考えています。お店に行った時に、フィギュアやキーホルダーが並んでいる雰囲気みたいのは現場でしか味わえないと思うので。それをぜひ見てほしいなっていう思いはあります。いろいろな地方の方から、「地元でやってほしい」と依頼はあるんですが、なかなか地方には行けないので、そういう人に買ってもらえる機会を作ろうと思って、ウェブでの販売はやっています。去年はあまりできなかったので、今年はもう少しウェブでの販売も増やしていきたいとは思っています。

WWD:ポップアップする場所はどう決めているんですか?

松坂:最初にやったのは「グッドシング(good thing)」という美容室で、そこは僕からやらせてほしいと声をかけさせていただきました。あとは基本的にお声がけいただいて、やらせてもらっています。今一番やってるのが「ユルク(jurk)」という美容室で、本当に仲間みたいに受け入れてくれるんで、「次はこんなことをやりましょう」と話をしています。「ユルク」は東京と名古屋に店舗があって、それぞれ2回ずつ、年に4回ポップアップをやらせていただいています。最初に2つだけ組んであって、最後に1つお客さんに選んでもらうというのも「ユルク」だけでやっています。

WWD:ポップアップで古着に「フッドマート」のロゴを印刷するサービスもやられてますよね?

松坂:あれは23年の9月ぐらいから始めました。最初は単純にオリジナルでアイテムを作るお金がなかったから(笑)。スタンプカードみたいな感覚で、古着を買っていただいたら、それにロゴを入れる。それはポップアップでしかできないことだし、お子さんも一緒にできて、喜んでくれるので、家族で遊びに来てもみんなが楽しんでくれたらっていう気持ちで始めました。やっぱりポップアップをやる時は老若男女、いろいろな人に楽しんでもらいたいので、「フッドマート」プラスお花屋さんや飲食店と組んでやるっていうのが自分のスタイルではあります。

オリジナルキャラクター、macoちゃん

WWD:オリジナルキャラクターのmacoちゃんも人気ですね。

松坂:24年4月に初めてmacoちゃんを使ったアイテムを販売したのですが、「『フッドマート』といえば」っていうキャラクターがいた方がいいかなと思って。その1年前くらいからずっとイラストレーターの方と相談しながら、海外でも人気になりそうなキャラクターというイメージで、macoちゃんのキャラクターを固めていきました。

macoちゃんもどんどんどん成長していく予定で。一番最初に出した「Hood(地元)のmacoちゃん」は14歳ぐらいの設定で、最近出した「おめかしmacoちゃん」は成長して16歳になっています。今日、僕が着ているパーカーは15歳の「不機嫌macoちゃん」。反抗期で怒っているという設定で。今年は特にこのmacoちゃんのキャラクターを海外も含めて、より多くの人に知ってもらいたいと思っています。

WWD:これからはmacoちゃんを中心にオリジナルも増やしていく?

松坂:そうですね。macoちゃんのグッズは今のところキーホルダーとスエット、Tシャツだけなんですけど。今日、僕が着ているスエットがすごく評判が良くて。macoちゃんというキャラクターができたので、やりたいことがたくさん増えて、できれば最終的にはフィギュアまで作れたら最高だなと思っています。

でも、もともとのコンセプトが「お土産屋さん」なので、シャツとかパンツとか、アイテムの種類を増やす予定はなくて、基本的にはキーホルダーとスエット、パーカー、Tシャツくらいで考えています。

ただ、例えばコラボでmacoちゃんを使って何か作りたいと言われたら、積極的にやっていこうとは思っています。個人的にはサンリオの企業理念がすごく好きで、キティちゃんってコラボはほとんど断らないらしくて、いろんな企業とコラボしているじゃないですか。さすがにmacoちゃんはあそこまでキャッチーな感じにはなれないかもしれないけど、ぜひいろんな企業とコラボはやってみたいです。

WWD:今後やりたいことは?

松坂:個人的には「パーソナルフィギュアコーディネーター」みたいに、その人のインテリアに合わせてフィギュアを買い付けて飾りますっていう仕事がやりたいなとは思っています。そんな需要があるのか分からないですけど(笑)。フィギュアやおもちゃに関して、少しアドバイスが欲しいとか、この辺のフィギュアが好きなんで集めて提案してくださいって言われたら、やってみたいですね。あとはやっぱりmacoちゃんというキャラクターを大きくしたいなと思っています。

もともと「フッドマート」を始める時に、地下アイドルっぽくしたいと考えていて、ポップアップに行けば見られるけど、あまりウェブとかで露出しないみたいな。そうやってお客さんと一緒に成長していきたいし、ぜひ「フッドマート」の成長を応援してほしいです。

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