「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」の創業者であるデザイナー、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)の300点以上の活動初期作品が、オークションに出品されることが明らかになった。オークションは、パリのモーリス オークション(MAURICE AUCTION)とロンドンのケリー テイラー オークションズ(KERRY TAYLOE AUCTIONS)の共催で、2025年春夏オートクチュール・ファッション・ウイークの初日である25年1月27日(現地時間)、パリ11区のヴォルテール大通り沿いにある廃墟で開催される。なおオークションに先駆け、同月25日から同会場で出品物を展示する。
今回のオークションは、1988〜94年にマルタンが手掛けた初期作品のみが300点以上出品され、彼の作品を対象とした単一オークションとしては過去最大規模だという。全ての出品物は、イタリアで高級ブランドのアパレル生産や自社ブランドを展開するキャスター(CASTER)のアンジェラ(Angela Picozzi)とエレナ・ピコッツィ(Elena Picozzi)創業者姉妹の私物だ。彼女たちは何十年にもわたってマルタンの作品を収集しており、これは母親のグラツィエラ・ピコッツィ(Graziella Picozzi)からの影響だと話す。というのも、グラツィエラはイタリアファッション界の重要人物として知られ、当時無名だったマルタンを80年代後半から支援していた人物なのだ。
グラツィエラは87年、ジャン・ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)のスタジオから独立したマルタンを自身のブランド「デニ クレール(DENI CLER)」のコンサルタントとして採用すると、その才能に感銘を受け、彼に自身のブランドの設立を説得。こうして、89年から94年までの約5年間、「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」の衣装制作に協力したのだ。
アンジェラは、「母グラツィエラとマルタンの出会いは、両者にとって非常に重要な瞬間だった。私たちは、当時のアイテムをファッション史における重要な一部と考え、保護するべきだと感じていたが、時間が経つにつれて彼の才能とビジョンが広く知られ、研究され、語られ、そして可能ならば着用されることがいかに重要であるかを実感した。それが今回、これらの作品を出品する理由だ。マルタンの初期の美学を、改めてファッション界に提示できれば」と語った。
出品物の中には、多くの未着用デザインをはじめ、オリジナルのパッケージに保管されているものや当時は店頭に並ばなかった非売品など、博物館に展示されるにふさわしいアイテムも含まれるが、落札しやすい価格帯のものもあるという。その中でも目玉は、ガーゼ素材を使用したドレスのように着用するビッグベストや取り外し可能な袖が付いたスーツ、複数の方法で着用可能なクリアビニールトップ、ジャボ風のブラ、パニアバッグ付きのパンツ、ペイントジャケットなどの90年春夏コレクションのアイテムで、これらは1200〜5000ユーロ(約19万〜81万円)での落札が見込まれている。また、91-92年秋冬コレクションのカーテンスカートのセットやティール色のウールニットセーターも注目で、この2つは2000〜4000ユーロ(約32万~65万円)と見積もられている。
さらに、最も予想外の出品物としては、マルタンが「メゾン マルタン マルジェラ」を立ち上げた88〜89年頃に手掛けていた、グラツィエラと「デニ クレール」とのコラボブランド「!」のアイテムだろう。「!」は、名前のないブランドという彼のアイデアに基づいたもので、88年に制作したジャケットやウエストコート、89-90年秋冬コレクションのオリジナル手描きスケッチ70点をまとめたフォルダーなどが登場予定だ。
モーリス オークションとケリー テイラー オークションズは、これまでも何度かオークションを共催しており、過去に「シャネル(CHANEL)」のオートクチュールのコロマンデルコートが31万2000ユーロ(約5023万円)で、ティエリー・ミュグレー(Thierry Mugler)のヴィクトワールのプラスターン&スカートが5万8500ユーロ(約941万円)で、ジャン・ポール・ゴルチエのレキュム・デ・ジュールのフェザリードレスが37万7000ユーロ(約6069万円)で落札された。