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英国がEU離脱へ ファッション業界から嘆きの声続々

 イギリスは、6月23日に欧州連合(EU)からの離脱の賛否を問う国民投票を行い、賛成52%、反対48%で離脱派の勝利が確定した。残留を訴えていたデイヴィッド・キャメロン(David Cameron)=イギリス首相は10月に退任する意思を表明。EU離脱という衝撃的な決断に、ファッション業界人からも相次いで嘆きや悲しみの声が聞かれた。

 もともとイギリス人デザイナーや大学、ファッション関連機関の多くは、貿易と人民の移動の自由がファッションビジネスやクリエイティビティーに恩恵をもたらすと主張し、残留を支持していた。エイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)=コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)兼ドーバー ストリート マーケット(DOVER STREET MARKET)最高経営責任者(CEO)は、「まるで中世に戻ったようだ。EU離脱は、後ずさりしたようで、とても現代的ではない。現代社会は他国と共存し、協業することだ。私は絶望した。人の自由および移動の自由を望むし、私にとって(今回の結果は)アンチ・クリエイティブな思考だ」と「WWD」に話した。また、「ロエベ(LOEWE)」を手掛ける北アイルランド出身のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)=クリエイティブ・ディレクターは、残留に投票した多くのイギリスの若者への同情を示し、「彼らの声は、もう聞こえない。この状況は大変不快なものだ」と語った。ロンドンを拠点とする自身のブランド「J.W.アンダーソン(J.W.ANDERSON)」のビジネスへの影響については「正直どうなるのかわからない。今はとても不安だ」とコメントした。

 SNSにもデザイナーやクリエイターからの多くの投稿が集まった。ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)はセックス・ピストルズ(Sex Pistols)の代表曲「ノーフューチャー(未来がない)」のロゴを投稿。クリストファー・レイバーン(Christopher Raeburn)は、夜のビッグベンを背景にウィンストン・チャーチル像を写した写真に、「とても暗い1日になった。長期的なインパクトの解決策を探るため、そしてヨーロッパ人の友人と一緒に仕事を続けるため、17年春夏コレクションのセールスでパリに向かっている」というコメントを添えて投稿した。また、17年春夏ロンドン・メンズ・コレクションのショーに"EU残留"を意味する「IN」と書かれたTシャツを着てフィナーレに登場したコゼット・マッククリーリー(Cozette McCreery)「シブリング(SIBLING)」共同デザイナーは、「分裂してしまった国、残念な首相。これほど自分の国に呆れたことはない」など度々悲痛な思いを発信した。その他、ファッションフォトグラファーのニック・ナイトやスタイリストのケイティ・グランド、ブロガーのスージー・バブル、ブランドでは「アーデム(ERDEM)」「ロクサンダ(ROKSANDA)」「ニコラス カークウッド(NICHOLAS KIRKWOOD)」などがSNSにメッセージを投稿した。

 また、イギリス国外からもコメントが集まった。パスカル・モランド(Pascal Mourand)=フランス オートクチュール・プレタポルテ連合会エグゼクティブ・プレジデントは「経済的なインパクトの域を越え、政治や文化への影響もある。離脱はとても内向的な衝動で、ファッションとは真逆だ。ファッションは国際性、デジタル、美的感覚現において現代の先頭に立ち、オープン・マインドなもの。われわれは、これまで以上に結束を強め、前に進んでいかないといけない。これは価値観の問題だ」と話す。フランソワ・マリー・グロー(Francois-Marie Grau)=フランス婦人プレタポルテ組合マネジング・ディレクターは「とても悪いニュースだ。洋服の輸出においてイギリスは5番目に大きいクライアントで、昨年は750万ユーロ(約8億5200万円)を輸出した。ポンド安によりコレクションの価格が高騰する他、イギリス人の消費の低迷により輸出産業への悪影響が見込まれる」とコメント。「イギリスは2年間自由貿易協定を交渉することができる。もし関税同盟を結ぶことができれば、これまでと何も変わらない」と続けた。

 今回の国民投票に先立ち、2月にはクリストファー・ベイリー(Christopher Bailey)=バーバリー(BURBERRY)CEO兼チーフ・クリエイティブ・オフィサーやニール・クリフォード(Neil Clifford)=カート ガイガー(KURT GEIGER)会長ら198人の英国企業のトップがイギリスのEU離脱への抗議文に署名。また、6月14日には、英国ファッション協議会(ブリティッシュ・ファッション・カウンシル、BFC)がイギリスを拠点に活動するデザイナーを対象にイギリスのEU離脱に対する調査を行い、参加者の90%がEU残留を支持していた。

 アナリストは今回の結果を受け、ドルとユーロに対するポンドの下落は、ヨーロッパでビジネスを行うラグジュアリー・グッズやファッション企業に影響する可能性があると分析する。

WWD STAFF

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