ビューティ
特集 CEO2024 ビューティ編

【タカラベルモント 吉川秀隆会長兼社長】ハードとソフトでサロンの美と健康を追求

PROFILE: 吉川秀隆/タカラベルモント会長兼社長

吉川秀隆/タカラベルモント会長兼社長
PROFILE: (よしかわ・ひでたか)1949年大阪市生まれ。日本大学経済学部卒業後、自動車販売会社勤務。74年に祖父の吉川秀信が創業したタカラベルモントに経理担当で入社した後、デンタル・メディカル機器の営業および製品企画、理美容機器の営業を担当。85年に東京支社長に就任。89年に40歳で社長就任後、99年から会長を兼務している PHOTO : YOHEI KICHIRAKU

理容室・美容室の設備機器、エステ・ネイルサロンおよび歯科・医療クリニックの業務用設備機器や化粧品などを製造販売しているタカラベルモント。2023年は給湯機市場をはじめ、サロンの基盤であるインフラ整備にも注力。理美容機器業界をリードするメーカーとして課題解決や事業創造に取り組み、未来の健康に向き合い自分らしく生きるためのサポートを行う。(この記事は「WWDJAPAN」2024年1月29日号からの抜粋です)

2028年に掲げている
全体売り上げ1000億円を目指す

WWDJAPAN(以下、WWD):2023年に特に注力したことは?

吉川秀隆会長兼社長(以下、吉川):コロナ禍の収束から業績は右肩上がりが続いている。23年は、サロンの水まわりアイテムに注力した。21年に開発したサロンのシャンプー台で施術する新体感メニュー「頭浸浴」は、リラックスできるほか、ヘアカラーの仕上がりも良くなるとリピート利用も多く、新たなサロン体験を創出した。当社の23年3月期の売上高は654億円だが、上期も順調に推移しており前年超えも期待できる。またグローバルにおいてデンタル部門の売り上げがけん引した。もともと歯科機器は日本国内からの輸出量トップを誇っているが、中でもイギリスを中心に歯科用椅子と治療用装置が一体になった歯科ユニットのシェアがNo.1。当社は在庫や備蓄能力が高く、海外マーケットでのシェアを獲得できている。

WWD:昨年10月には住友電設所有の給湯装置事業や冷凍サイクル事業を展開するスミセツテクノを買収。同企業をグループ化した狙いは?

吉川:スミセツテクノはベルモントテクノ京都としてタカラベルモントグループの一員となった。給湯装置事業や冷凍サイクル事業は継続していく。しかし、狙いは給湯機など生産能力の強化。なぜならサロンのインフラ整備は、お客さまの快適さや心地良さにつながるものであり、中でも給湯機は必要不可欠なもの。コロナ禍においては、価格高騰などの影響で給湯機パーツが品薄になり安定供給できないこともあった。また、海外では給湯温度が安定しないという事例も多々ある。そのため、サロン独自で給湯設備を整えるのはとても大変なことだった。美と健康を追求した設備や空間、経営、教育、さらにハード面の生産能力強化は、大きな強みだと言える。

WWD:“コミュニケーション”に着目したスマートデバイスミラーのローンチはサロンビジネスにどのような可能性を広げるか?

吉川:あらゆるシーンでDX化が進んでいる現代において、サロンのお客さまとスタイリストとのコミュニケーションの“DX化”として、23年10月に待望のAI搭載スマートデバイスミラー「エシラ(ECILA)」を発売。「エシラ」は、お客さまの要望や悩みを共有できるプロファイル、新たな一面を発見できる顔診断、カラーシミュレーション、写真・動画撮影などあらゆる機能を有している。これら機能を活用し、サロンの課題であった“お客さまとスタイリストとのコミュニケーションギャップ”を解消し、お客さまの好みやなりたいイメージを引き出すほか、スタイリストがより自信を持って提案できるサポートを行う。導入サロンでは「操作性が良くスマホ感覚で扱えるのも魅力」と評判は上々。新たなサロンビジネスの可能性を広げるアイテムとして期待されている。利用者データを蓄積することでより使いやすいものに進化させ、お客さまが異なる店舗を利用しても情報が共有される仕組みにしていく。

WWD:毛髪に関する研究も高い成果を挙げている。

吉川:化粧品研究開発部は、昨年12月に行われた「日本化粧品技術者会 学術大会」において毛髪に特化した研究内容を3題発表した。同大会前身の「SCCJ 研究討論会」も含めた過去10年間(12~22年)で、毛髪に関する研究内容が同一企業から同時に3題選出されたことは当社が初となる。研究では、これまで不可能といわれた毛髪を縦にきれいに切る技術を習得。これにより、働きが解明されていない“未知の領域”だった髪の中心部・メデュラの2つの構造を解明することができた。

WWD:サステナビリティの施策で注力していることは。

吉川:モノ作り企業としての持続可能な社会を目指し、これまでも事業を通じて社会や環境に対する活動を行っていたが、23年に改めて、人・地球環境・関わる産業と地域・ガバナンス・ウェルビーイングの5つの領域と6つのマテリアリティ(重要課題)からなる「サステナビリティポリシー」を設定した。サロンスタッフの働きがいと理美容業界の発展の両立、排水処理設備の設置、バイオマスプラスチックやリサイクル素材の採用など多岐にわたる活動を行っているが、昨年は廃棄レザーのアップサイクルプロジェクトとして創業の地である大阪・西成発のファッションブランド「NISHINARI YOSHIO(ニシナリヨシオ)」と協業し企画展を実施。当社のプロ用椅子の製造過程で生じる廃棄レザーを活用したTシャツやパンツなどを制作し、ファッションショーを行った。

WWD:24年に注力することは。

吉川:当社は25年大阪・関西万博にて大阪府・市の「大阪ヘルスケアパビリオン」に出展参加を表明。主力事業の美容と医療を融合した「未来のヘルスケアサロン」の実現のため準備を進める。また、化粧品事業においては、開発ならびに生産能力の強化を図る。国内では、化粧品工場を新設予定のほか、海外では、拠点があるベトナムでも、生産する予定。化粧品事業の売り上げアップを図り、28年に掲げている全体売り上げ1000億円を目指す。

会社概要

タカラベルモント
TAKARA BELMONT

1921年に鋳物工場としてスタート。31年に理容椅子の製造を開始し理容・美容業界に進出。56年にニューヨークに現地法人を構え、海外事業をスタート。67年に歯科・医療機器の製造を開始。73年に日本初の機器を使用したエステティックを紹介し、77年に自社化粧品ブランド(現ルベル)を立ち上げる。82年には基礎化粧品の発売をスタート。2021年に創業100周年を迎えた

問い合わせ先
タカラベルモント
06-7636-0856(広報室)

TEXT:WAKANA NAKADE

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