ファッション

「エーグル」がパリコレに初参加 ポンピドゥーで自然への想いを発信

 「エーグル(AIGLE)」は2023年春夏シーズン、パリ・ファッション・ウイークの公式スケジュールに加わって初参加した。23年から協業を始めるパリの総合文化施設ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター(以下、ポンピドゥー)を会場に、アウトドアのルーツを重んじたミニマルで都会的なコレクションを披露した。アーティスティック・ディレクターを務める「エチュード スタジオ(ETUDES STUDIO)」の創業者オレリアン・アルべ(Aurelien Arbet)、ジェレミー・エグリ(Jeremie Egry)、ジョゼ・ラマリ(Jose Lamali)にコレクションに込めた思いを聞いた。

「自然と都会に境界はない」
の想いをパリの中心で発信

 「エーグル」の23年春夏コレクションは、ポンピドゥーの屋上、目の前に広がるパリの市街地と、はるか彼方の山や丘の稜線が美しい空間で披露された。パリの街並みにも、郊外の豊かな自然にも溶け込むミニマルなユーティリティーウエアは、今シーズンのトレンドとも合致している。

 淡いベージュから濃いブラウン、カーキまでの1トーンや1カラールックには、機能性にこだわったアウターとノースリーブのシャツやプリーツスカートなどのアーバンアイテムが同居し、眼前の景色同様、都会と自然に明確なボーダーラインは存在せず、現代人はその双方を自由に行き交っていることを教えてくれる。足元には、創業時からのアイコンであるラバーブーツ。農作業に携わる人を想い世に送り出しつつ現在はタウンユースの愛用者も多い天然ゴム製のラバーブーツ同様、足元でも静かな水面とデジタルミュージックを交錯させ、演出においても相反するものの融合を説く。3人はこうして「エーグル」の過去を未来につなげる。

コンセプトは
歴史と今をつなぐ「サイクル」

 
WWD:パリでの発表をどう振り返る?

オレリアン・アルベ(Aurelien Arbet、以下アルべ):パリのウィメンズ・ファッション・ウイークに初参加した今回は、確実にブランドにとってのステップアップになった。ショーはシルエット全体を見せる演出がベストだと考えた。観客がそれぞれのルックやモデルのアティチュードをじっくりと眺め、私たちからのメッセージを受け取れる空間を作り出せたと思う。

WWD:具体的に届けたかったメッセージとは?

アルベ: テーマは過去と現在を行き来する「サイクル」だ。「エーグル」は長い歴史がありながら、今日においても非常にアクティブなブランドだ。ブランドの過去をリサーチし、170年近く洋服やラバーブーツ、アクセサリーを作り続けてきた歴史が、今日においてどんな意味を持つかを考えた。私たちがコレクションで表現したかったのは、そんな歴史と現在のつながりだ。

WWD:ブランドの伝統に新しいエッセンスを加えたということだが、特に今回のコレクションに取り入れた伝統的な要素とは?

ジョゼ・ラマリ(Jose Lamali、以下ラマリ): 「エーグル」の歴史を振り返って新しいと感じたのは、初期に発表していた街を歩くためのゴム製の“オーバーシューズ”だ。その当時から「エーグル」は、都会に住む人々のために商品を提案していた歴史があり、自然とのつながり方が面白いと思った。僕たちはすでに代表商品であるラバーブーツとレインコートに着目し、その機能性を上質なトレンチコートやフィッシュテイルパーカなどに広げてきた。全ての素材がアウトドア仕様であることも表現したかったことの一つだ。もちろん、モダンな生地や新しい技術も取り入れて今までにないシルエットで表現した。

WWD:ノースリーブのシャツドレスや、ブラックパンツ、プリーツスカートなど、タウンユースなアイテムとユーティリティーウエアのスタイリングが多かった。街でも、「エーグル」を楽しんでもらいたいという思いからの提案だった?

アルベ: 私たちは、自然の中で着る服と都会で着る服に違いがあるとは捉えていない。もちろん特定のシーンを想定した商品もあるが、ブランドとしては常にどちらもクロスオーバーできる提案を考えている。

ジェレミー・エグリ(Jeremie Egry、以下エグリ): フランスのブランドとして、アウトドアを今までにない方法で語りたいと思った。よりクラシックに、自然にインスパイアされながら都会に生きる人々のための商品を意識した。

WWD:アーティスティック・ディレクターに就任してから数シーズンたつが、あらためてブランドの魅力について教えてほしい。

エグリ: 「エーグル」は、僕たちも子どものころから着用していて、フランス人が皆愛着を持っている。同時に新しい風を必要としていて、自分たちに任されたことはとてもチャレンジングだと思った。私たちの目標は、ブランドをより現代的なものにアップデートし、人々が今着たいものを届けることだ。

アルベ:確かに「エーグル」は、多くの人々に知られているしさまざまな商品を出してきたが、グローバルなビジョンや方針についてはあまり示してこなかった。フランスのブランドとして、コロナ禍で変化する人々のライフスタイルに寄り添いたい。ラバーブーツやレインコートなどのキープロダクトを持つブランドだからこその発信力を生かして、過去やこれから成し遂げたいことを伝えることがとても楽しみだ。

WWD:ブランドのサステナビリティの取り組みにも共感しているとのことだが、今回のコレクションにはどのように反映した?

ラマリ:コレクションのうち約75%が環境配慮素材だ※。僕たちが選ぶ生地や装飾だけでなく、サプライヤー、製造者、また関わる国など全てをクリエイションの一部と捉えている。リサイクル素材やオーガニックコットンを採用したり、サステナブルな技術を持つ工場に頼んだりすることは、僕たちにとっても非常に大事なことだ。
※展開商品の環境配慮素材の比率は国により異なります。

WWD:作り上げたいスタイルと、ブランドのサステナブル・ビジョンを両立させるために難しかったことは?

ラマリ:値段が大きな障壁だった。「エーグル」にとって、スタイリッシュかつ機能的・実用的であり、手の届く価格帯であること全てが大事だからだ。例えば、オーバーサイズコートをサステナブルな生地を使いながら手頃な価格に抑えるのは難しい。でも、それもデザインの一部だと考えている。

WWD:ジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センターとの協業も始まった。

アルベ:このプレゼンテーションは、長いパートナーシップの始まりでもあった。この協働をうれしく思う。環境に関わる貢献やクリエインションに関わる全般において両者にはさまざまな共通点がある。今後いろいろなプロジェクトやアイデアを共有することができると思う。

モデルのemmaが
シーズンアンバサダーに就任

 「エーグル ジャパン」では、22-23年秋冬のシーズンアンバサダーとして、モデルのemmaを起用。

 幼少期を自然に囲まれた北海道の土地で過ごしたemmaは、都会で暮らす現在も自然に寄り添う価値観を大切にしているという。「母が農作業をするときに履いていたのが、『エーグル』のラバーブーツでした。『農作業のときもおしゃれしたい』と言っていたのを覚えています。ラバーブーツはもちろん、アパレルアイテムも、ファッション性と機能性を兼ね備えているところが素晴らしいと思います」とコメントを寄せた。

 キービジュアルでは、大地を連想させるカラーパレットが印象的なコレクションの中から、淡いピンクのゴアテックスのフード付きジャケットやキーパターンであるカモフラージュ柄のパーカ、ボタニカルプリントのスカートなどを着用した。

 22-23年秋冬はそのほかにも、ブランドの人気アイテムでもあるゴアテックスを使用した防水機能と保温性が抜群なジャケットやリサイクルポリエステルを使用した完全防水のダウンジャケット、コーデュロイのセットアップなども登場する。

「WWDJAPAN」編集長が
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AIGLEカスタマーサービス
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