ファッション

ジーユー柚木治社長に聞く「ニューヨーク出店」「中国でのローカル化」「vs.シーイン」

 出店再強化を打ち出すジーユーは今秋冬、移店リニューアルを含め国内に25店を出店すると共に、ニューヨーク・ソーホーにも1年間の長期ポップアップストアをオープンする。オープン日はまだ非公表だが、アジア圏以外への出店は「ジーユー(GU)」として初めて。ノウハウを蓄積し、来秋以降の常設店出店を目指すという。「ジーユー」がよりグローバルなブランドになるために必要なことを柚木治社長に聞いた。

WWD:ニューヨークへの出店はどんな狙いからか。

柚木治ジーユー社長(以下、柚木):2つの意図がある。1つ目は、世界の最先端かつ最大の市場である北米にいずれ進出するなら、なるべく早くチャレンジすることで成長していきたい。兎にも角にもグローバル化が至上命題だと考えたとき、最先端の市場に出ていった方が学ぶことは多いし、それがグローバル化への一番の近道だ。出店すれば、このままのやり方ではダメだという点にも直面するだろうし、一方で「ジーユー」のよさも再認識できるかもしれない。成功のための勝算がしっかりあって、準備万端で出ていくわけではない。売り場面積は約270平方メートルととても小さい店で、品ぞろえもかなり絞る。

WWD:北米はECが日本以上に発達し、OMOも進んでいる。どう仕掛けるのか。

柚木:今回のニューヨークのポップアップストアではECは立ち上げない。ポップアップストアを運営しながら、OMO事例を市場に学んでいく。ポップアップの後に常設店を出店するかはまだ未定だが、出店する際はその知見を生かしていく。ECは立ち上げないが、SNSを活用して情報発信をすることで、現地のお客さまとつながっていく。

WWD:ニューヨークの中でも、ソーホーは商業一等地だ。兄弟ブランドの「ユニクロ(UNIQLO)」が2005年に北米に初進出した際は、ニューヨークの隣、ニュージャージー州の郊外モールからだった。

柚木:当時は郊外から出店した方がコストが抑えられ、リスクが少ないのではないかという仮説に基づいていたが、結論としては、都心から出店してブランドポジションを築かないと、いつまでたっても誰にも知られないブランドのままだ。(「ジーユー」は都心一等地に出店するが)だからといって成功する保証があるわけではない。売り場も狭いため、売り上げが規模としてしっかり取れるかどうかは分からないが、「北米ではこういった商品なら売れる」「ここを伸ばせばもっと支持される」といった傾向をつかむことがこの店の目標だ。

WWD:サイズ展開や北米市場に合わせたローカライズはどのように行うのか。

柚木:23年秋冬は特にローカライズはしない。北米のお客さまに多い体形や好まれるテーストの仮説はあるが、決めつけてMDに変更を加えることはせず、まずは「ジーユー」そのままを持っていく。サイズ表記も日本表記のままにし、その旨をお客さまに案内しながら販売する。

国ごとに異なる「ジーユー」は作らない

WWD:既に進出しているアジアでは、中国本土に9店、香港に8店、台湾に18店がある。近年、特に中国では地元ブランドへの支持が高まっており、外資ブランドにとっては逆風となっている。

柚木:中国で地元ブランドが人気となっていることは感じる。しかし、他の(外資)ブランドが全てダメというわけではなく、支持されるブランドもそうでないブランドもある。「ジーユー」は中国では、(日本よりも)アイテム数を絞り込んでキュレーションして見せている。マストレンドをコーディネートしやすく打ち出し、品質も安定していて、スマートにファッションを楽しめるブランドだとお客さまには見られている。それは狙い通りではあるが、そうしたイメージがまだ(幅広くは)伝わっていない。だから黒字化していない。なぜ伝わっていないかというと、ファッションに対する好みが違うから。(中国が日本と違うというよりも)日本が世界的に見ても非常にコンサバで、例えば体形や肌を隠すことを好む。中国ではよりメリハリのある、見せるところは見せるようなファッションが好まれる傾向にある。

WWD:そうした市場の違いに対応するため、中国向け商品を作っているのか。

柚木:これはまさに(グローバル化のための)真髄の部分だが、中国向けとして日本とは全く別の商品は作っていない。中国のお客さまのニーズは取り入れながら、「ジーユー」のアイデンティティーを失わない商品をワンコレクションとして作っているというのが答えだ。中国のお客さまを意識した商品もあるが、それが日本でも売れることを目指している。中国の地元ブランドや欧米ブランドの真似をしてもかっこ悪いし、それでは勝てない。展開する国ごとに違う「ジーユー」を作る実力も必然性もない。「ジーユー」は展開先各国のニーズを取り入れたワンコレクションを、品番絞り込み型でやろうとしているわけだから、非常にチャレンジは多い。そこを乗り越えるからこそ、とても分かりやすくて鮮度もあるという服ができる。(中国と日本で肌見せに対して感覚が違うなら)アイテムが同じでもスタイリングで幅を見せていくといったことで対応する。

WWD:オンラインSPAの「シーイン(SHEIN)」が影響力を強めている。買いやすい価格でトレンドを打ち出しており、「ジーユー」と真正面から競合している印象だ。

柚木:「シーイン」とは提供価値が大きく異なる。「ジーユー」は品番絞り込みを(価格低減や選ぶべきアイテムの分かりやすさといった)お客さまの価値につなげているが、「シーイン」はECのみの展開であることを生かして、なんでも選べるという商品バリエーションを打ち出している。「ジーユー」の方がよりマスな商品なので、実店舗とは相性がいい。ファッションは接客によって喜びが増えるというのが本質だと私は信じているが、時代の移り変わりと共に、実店舗で求められるあり方は接客からセルフ式に移行してきている。スマホでアプリを見ながらセルフで買い物をするお客さまも多く、スタイリングなどをどんどん提案できるアプリはもはや接客しているのと等しい。セルフ式、ないしはアプリで接客というのが今の時代の基本ではある。一方で、リアルな接客価値もなくならない。だからこそ、(実店舗とアプリ接客などのデジタルとを)ハイブリッドすることが勝ち筋だと思っており、出店を再強化する。

WWD:22年8月期は減収、大幅減益だった。23年8月期の滑り出しは。

柚木:商品自体は支持されているが、このところ気温が高く、ここからという感じだ。

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