ビジネス

美容室業界の“IT王子”こと前原穂高も認める “LINEミニアプリ”による予約&顧客管理のメリットとは

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、対面でのコミュニケーションが制限され、さまざまな規模の企業間でユーザーとのオンラインの接点作りや、関係性を深めるためのデジタル施策への意識が高まっている。経済産業省による中小企業のデジタル化に関する調査(令和2年度中小企業のデジタル化に関する調査に係る委託業務報告書)でも、過半数の企業が「デジタル化に積極的に取り組んでいる・取り組みつつある」と回答している。

 デジタル施策として、自社アプリの開発を行うサロンも少なくない。しかし、開発にかかる人的・時間的コストが高い、ユーザーにダウンロードされない、(ダウンロードされても)継続利用されない、など数々の課題がつきまとっているのが実情だ。

 ヘアサロン業界も例外ではなく、“ユーザーとの関係性を深めるためのデジタル施策”は大きな課題となっている。業界のトレンドセッターで、デジタル施策に精通していることでも知られるヘアサロン「バイオレット(Violet)」の前原穂高代表も、「“顧客との親密性”の重要さが増している。強いつながりを作れるか否かが生き残りのカギ、と考える経営者も多い」と話す。

 そんな前原代表が採用した施策が、“LIEN公式アカウント”の開設と“LINEミニアプリ”の導入だ。中でも“LINEミニアプリ”は国内利用者数8900万人(2021年9月末時点)のLINE上でデジタル会員証の提示やサロン予約などの機能を提供でき、先述した課題の解決が見込めるサービスでもある。ここでは“LINEミニアプリ”の特徴と、「バイオレット」での活用事例を紹介する。

“LINEミニアプリ”の5つの特徴

前原穂高代表が明かす
“LINEミニアプリ”の
「バイオレット」での活用術

 以前から「お客さまとのコミュニケーションツールがメールだけでは限界がある」と感じていた。さらにコロナ禍で“顧客との親密性”の重要さが声高に叫ばれるようになり、そうした背景から自分が“最もお客さまとの距離が近いSNS”と考えるLINEに着目。1年以上前に“LINE公式アカウント”を開設し、今年7月に“LINEミニアプリ”を導入した。さらに、以前から利用していたハイパーソフト社のPOS “サロン ド ネット”(売上管理・顧客管理・経営分析システム)と“LINE公式アカウント”を連動させ、ユーザーに各種メッセージを配信する仕組みを整えた。

 「バイオレット」では、過去に別のツールを組み込んだLINE公式アカウントを保有していた。しかし“LINEミニアプリ”を導入した際、システム上の制限で2020年に現在運用しているLINE公式アカウントを新たに開設し、お客さまに友だち追加し直してもらう必要性が出てきた。一般的には、こうした働きかけがツール導入の大きなハードルとなるところだが、驚くほどスムーズにほぼ100%の顧客が切り替えてくれた。さらに以前のLINE公式アカウントの友だち数が2000人くらいだったのに対し、短期間でその数字を超え、現在は3700人以上が友だち追加してくれている。移行のしやすさにも、LINEの知名度と信頼度を改めて感じた。

 “LINEミニアプリ”は利用メリットを詳しく説明しなくても、「今までの会員カードが“LINEから見られるデジタル会員証”に変わりました」と話すだけで利用してくださるお客さまが多い。そのうえで「LINEからも予約が取れます」「残ポイントが見られます」「今後は履歴も見られるようになります」ということを伝えるのみで、「LINEミニアプリ」というサービス名はあえて出していない。どのサービスを使うかはサロン側の事情なので、あくまでお客さまに「LINEだと便利」と感じてもらえることが大切だと思っている。

 サロンにとって最大のメリットに感じているのは、全てのSNSやサービスの窓口をLINEに集約できたことだ。“LINEミニアプリ”はもちろん、インスタグラム、ツイッター、公式サイト、さらには7月から始めたECなどへのリンクを、LINE公式アカウントの“リッチメニュー”に設置。“最もお客さまとの距離が近いSNS”であるLINEに一本化できたので、お客さまが迷う心配がない。その点で、キャンペーンなどいろいろなデジタル施策をやりたいサロンに適していると思う。

 予約においても“LINEミニアプリ”は活躍している。現在は、新客はインスタグラムのDMとサロン検索・予約サイトから予約を受け、2回目からの予約は“LINEミニアプリ”でやり取りするオペレーションが完成しつつある。最も効果を感じるのが“次回予約”において。当サロンでは失客を防ぐため、次回予約を取ることに注力していて、以前から次回予約率が約50%と高かった。しかし最もネックになっていたのが、“予約日を変更するときに、お客さまから電話で連絡しなければならない”ということ。その点が“LINEミニアプリ”の導入により解消され、「LINEで簡単に、何度でも変更できますよ」と言えるようになった。それによりさらに次回予約率が高まり、既に60%を超えている。

「バイオレット」が導入した
“LINEミニアプリ”のこだわりとは

「バイオレット」は、開発会社であるハイパーソフトの協力を得て、“LINEミニアプリ”を導入した。ここでは美容サロン向けPOSをはじめ、セルフレジや電子カルテなど、美容業界のソフト・ハード開発に精通しているハイパーソフトの木透真悟 マーケティンググループ 統括責任者と、前原「バイオレット」代表との対話から、“LINEミニアプリ”の特徴を明らかにする。

前原「バイオレット」代表(以下、前原):経営者は、新たなシステムの導入には、すごく慎重になるんです。導入したシステムが良くなくて、また切り替えることになったら、お客さまにもスタッフにも大きな負担をかけますからね。今回はハイパーソフトとLINEの“最強タッグ”ということで決断することができました。

木透真悟 マーケティンググループ 統括責任者(以下、木透)今回、貴サロンに提供した弊社システム「サロン ド ネット」の“LINEミニアプリ”は、“POSで蓄積したビッグデータ”と、国内最大手のSNS“LINE”との連携を実現させ、24時間オンラインで簡単にLINE上で予約を受けることを可能にしたものです。加えて、POSとLINE公式アカウントを連携したことは大きく、お客さまの属性や履歴などに応じて個々にメッセージを配信できるようにしました。

前原:次回予約してくれたお客さまに対し、再来店日の数日前に、自動的にリマインドメッセージを送れるようになったことは大きいですね。また“LINEミニアプリ”上で表示されるデジタル会員証はメンバーズカードとしても利用できるので、顧客の“囲い込み”にもつながります。

木透:“LINEミニアプリ”の“マイページ”では、会員証のほかにも保有ポイントや会員ランク、予約履歴の確認が可能なので、“使っていて楽しい”メンバーズカードになっていると思います。ここ数年、大手集客サイト等を活用した集客以外にも、SNS集客に注力するサロンが確実に増えています。さまざまなサロンのSNS集客を分析していく中で、“新規集客=インスタグラム”“リピーター集客=LINE”という構図が確立されつつあると感じています。“LINEミニアプリ”は、LINEによる集客・ファン客化を最大化できるサービスになると確信しており、今後も“LINE ミニアプリ”を活用したクライアントサロンのブランディングに貢献していきたいですね。

“LINEミニアプリ”の導入には
“パッケージ”がおすすめ

 “LINEミニアプリ”を導入するには、まずハイパーソフトをはじめとした開発会社に相談する必要がある。大きく分けて“個別開発”と“パッケージ”の2つの方法があり、それぞれの特徴を押さえた上で自店に合った導入方法を選択することができる。

 個別開発は、“自社用に最適なサービス設計が可能”“既存システムとの連携がスムーズ”といったメリットがある一方で、“(パッケージ利用に比べて)時間と費用がかかる可能性がある”というデメリットもある。

 パッケージは、“パッケージ化されている以外の機能は、別料金で追加開発する必要がある”というデメリットがある一方で、“すぐに導入可能”“初期費用+月額費用のみで安価に利用できる”といったメリットがある。一般的に、初めて導入するサロンにはパッケージがおすすめだという。