勝田幸宏ファーストリテイリング執行役員ユニクロR&D 統括責任者。 伊勢丹、米国のバーニーズ ニューヨーク、ラルフ ローレン、バーグドルフ・グッドマンなどを経て、2005年にFRに入社し商品デザインを統括。06年からは「サイ」や「アレキサンダー ワン」、ジル・サンダーとの「+J」や「アンダーカバー」との「UU」など、数々のデザイナーズコラボも担当
「ユニクロ(UNIQLO)」は、パリ発のデザイナーズブランド「ルメール(LEMAIRE)」とのコラボコレクション「ユニクロアンドルメール(UNIQLO AND LEMAIRE)」を10月2日に発売する。世界16カ国・地域とオンラインストアで販売。日本では全店で扱い、大型店36店舗ではフルラインアップをそろえる。指揮を執るファーストリテイリング(FR)執行役員でもある勝田幸宏ユニクロR&D統括責任者に、今回のコラボと、「ユニクロ」の商品政策について直撃した。
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WWDジャパン(以下、WWD):「ユニクロアンドルメール」のコンセプトは?
勝田幸宏ユニクロR&D統括責任者(以下、勝田):“イン&アウト”だ。エブリデイをキーワードに、家の中でもスタイリッシュで心地よく、街に出てもステキな、24時間・7デイズ、毎日着られる服を目指した。『エルメス(HERMES)』のウィメンズ・アーティスティック・ディレクターも務めたクリストフ・ルメールは「1000円のTシャツでも、『エルメス』の30万円のコートでも、毎日着られなければその良さは分からないし感じられないし伝えられない。値段は関係ない」と話しており、フィロソフィーが合うと思った。そして、「ユニクロ」の「毎日着られる服」に、もう一声、スパイスとして彼らのクリエイティビティーや、時代が求めているエフォートレスというエッセンスを織り込んだ。「ユニクロ」とほぼ同じ素材を使い、同じ価格帯にするという制限がある中で、シンプルだけれども着心地のいいコレクションができた。
WWD:従来のコラボとの違いや、商品群の中での役割は?
勝田:「ユニクロ」が大切にしている“レスデザイン”をベースに、新しい素材、機能、シルエットを加えている。最も異なるのは、今まではサビルロー的な比較的構築的でしっかり仕立てた服を良しとして、「7万〜8万円するようなものが1万円で買える!」というものを提供してきたが、今回はミニマリズムやシンプリシティーの中で、ドレープや流線的なシルエットを出している点だ。「ユニクロ」の中でも新しい表現で、フレッシュで画期的だと自負している。
WWD:ルメールがこだわったのは?
勝田:素材だ。いくつもサンプルを送ってきたりもしてくれた。また、フィッティングは4回も行い、10人単位でパリに送り込むなど、多くの時間とお金を掛けた。価格は高くはないが、服を作るプロセスは間違いなくラグジュリアスだ。
WWD:円安や工賃の高騰で高付加価値高価格路線を取る企業も多い。なぜ価格を抑制したのか?
勝田:10年前に「ユニクロ」に入り、ここまで良い商品なら1000円、2000円高い価格を付けても大丈夫だと思ったこともあるが、消費者の価格に対するセンシティブさは想像を超えていた。お客さまのお金の使い方、考え方に敬意を払いながら、どうあるべきかをシリアスに考えている。今回も一部カシミヤなど高いものもあるが、ユニクロと同価格に抑えた。先行で披露したパリの方々には安いと驚かれた。
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次ページ: 今後の商品戦略、サイズ展開に対する対応▶
WWD:6、7月と売り上げがマイナスとなっているが、今後の商品戦略は?
勝田:2つ軸がある。一つは素材だ。ヒートテックやエアリズムといった機能性素材と、リネンやカシミアといった天然素材をエンドレスで進化させ続ける。二つ目はデザインだ。時代の流れに対して、どれだけお客さまの生活やニーズに応えられるか。例えばエフォートレスだけどクールに見えるものとか、あったら便利、あってよかったというものを提供する。10年前に仕掛けたスキニージーンズも、便利だから色違いで2〜3本持っているとか、買い替えたという声を多く聞く。利便性や機能性を持ち合わせ、日常着、オシャレ着、運動会でもオフィスでも着られる「今シーズン使える服」を作る。そして矛盾でもあるが、デザイン的にも品質的にも10年後にも着てもらえる「タイムレスな服」を作っていく。「ルメール」コラボに加え、「イネス ドゥ ラ フレサンジュ」や「カリーヌ・ロワトフェルド」など今秋冬はアプローチの異なる3つのコラボもあるので、期待していてほしい。
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WWD:“ノージェンダー”や、サイズ感を楽しむ人々に向けた“サイズ展開”への対応は?
勝田:“ノージェンダー”はあくまでも消費者から生まれたトレンド。「ユニクロ」も女性がメンズのケーブルニットや500円のパックTシャツなどを買ってくれているが、個人的にはわれわれがそれをテーマにものを作ってしまうとおかしくなってしまうと考えている。正しいスペック、シルエットのものを作り、お客さまに選んでもらうのがいいと思う。
カリーヌが協業コレクションでメッセージ
ユニクロ2015年秋冬展示会で発信した映像メッセージ
10月下旬には、前「仏ヴォーグ」編集長と協業したウィメンズライン「カリーヌ・ロワトフェルド」の約40型も発売予定だ。カリーヌは映像メッセージで、「コレクションのテーマは、私自身が毎日着たいと思えるファッションであり、私自身のライフスタイルを表現する服とも言える」とした上で、「私は他の女性同様に旅行する機会が多いけれど、スーツケースの準備が大嫌い。でも最低限必要なものは持っていかなければいけない。もしかしたら夜にパーティーがあるかもしれないし、旅行先が寒かったり暑かったりすることもあるでしょう。小さなスーツケースの中にたくさんのものやチョイスが必要になるの。今回は大きなコレクションではないけれど、全て着回しが利くようなアイテムなの。ぜひ、コレクションの中で着回しを利かせることを楽しんでほしいわ。それはユニクロの哲学の一つとも言えると思うの。お金と時間をかけてショップを回ることなく、日常生活に変化を持たせてあげられるのよ」とコメント。さらに、世界中のユニクロの顧客に対して「ファッションを怖がらないで」「どこのブランドの服を着ているのかということより、その女性がきれいだと思われることが大切よね。これがユニクロの(コンセプト)“ライフウエア”ではないかしら。ラグジュアリーな服を身にまとい、人から注目を浴びるより、快適に気分良く服を着て、そして美しくいてほしい」と語る。