ファッション

「空だと思っていたのは、水面だった」 「ユウショウコバヤシ」が“人魚姫”で描く新たな景色

小林裕翔デザイナーと上原碧海デザイナーは、「ユウショウコバヤシ(YUSHOKOBAYASHI)」の2027年春夏コレクションを渋谷ヒカリエで発表した。今季から上原デザイナーが加わる2人体制を明確にし、これまで培ってきたクラフト表現を継承しながら、ブランドの新たな見せ方を探った。テーマは「Mermaid’s Tears」。海底から地上の世界を見上げる人魚姫の物語に、自分たちの今を重ねた。

思い描いていたブランド像は違って見えていた

「昨年、ファッションアワードを受賞した際に、ある人から『裕翔くんはずっと地下にいると思っていた』と言われた。自分達がいた場所が底だったなんて、それまで一度も思ったことがなかった。帰り道、上を見上げると、今まで空だと思っていたのは、水面だった」。

プレスリリースは、そう記したデザイナーのメッセージから始まる。昨年の「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」受賞を機に、自身が思い描いていたブランド像と、周囲からの見え方に違いがあることを知った。「僕は結構、王道なことをやっていると思っていたけれど、それが良くも悪くも違ったみたいで」と振り返る一方、「きらびやかなものを作りたいという気持ちは変わらない」と、自身のモノ作りの軸は変わっていないことを強調する。

このときに思い出したのが、人間の世界に憧れた人魚姫の物語だった。前回のコレクションでは地下深くの冥界を描き、今季もまた、海の底を舞台に選んだ。プレスリリースには、「私は何と引き換えに、地上に上がれるのだろうか」ともつづっている。

ほつれと光で描く“人魚姫”

アンデルセンの「人魚姫」を軸に、おとぎ話が持つ幻想性や不穏さ、ドイツ人アーティスト、シグマー・ポルケ(Sigmar Polke)の作品から着想した。人間の世界に憧れた人魚姫が、自らの声と引き換えに人間の姿を手に入れ、地上で争いや人を愛する痛みを知り、涙を流すまでを一つの物語として描いた。上原デザイナーは、「最初は海から考え始め、2人で話す中で、人魚姫の物語が私たちのコレクションに一番合うと思った」と振り返る。

海底から水面を見上げたときの光をイメージし、白や淡いブルー、ピンクを中心に構成した。大きくほつれたコットンニットや垂れ下がる糸、レース、パール、リボン、貝殻を重ね、はかなくきらめく海の世界を表現。光を反射するスパンコールドレスも登場した。

塗り絵を起点に製作したオリジナルの刺しゅう生地やプリント生地も見どころだ。ブランドらしい装飾性を残しながら、カッティングや立体的なシルエットにも変化を加え、春夏シーズンにおけるニットの表現を探った。

「ユウショウコバヤシ」2027年春夏コレクション

2人体制で広げる、チームのモノ作り

小林デザイナーが編みや生地を担当し、上原デザイナーが主にデザインを担う。小林デザイナーは、「自分一人でやっているとは最初から思っていなかった。今はスタッフ全員でデザインしている」と話す。

これまで共に制作してきた上原デザイナーの名前を表に出し、2人体制を明確にすると同時に、チームでモノ作りに取り組む姿勢を示した。「もっと大きな場所でやりたいし、もっといろいろなところに届けたい。そのために名前を出していこうと思った」と説明する。

人魚姫の物語は、ウエアだけでなく、モデルの動きや音楽を含むショー全体で表現した。中央には人魚をイメージした2人を配置し、その周囲を、かつて地上へ上がったことのある人魚姫のきょうだいたちが歩いた。

終盤には、モデルが靴を脱いで退場した。人間の足を手に入れた人魚姫が初めて歩くときの痛みを表すと同時に、靴を脱ぐことで得られる自由も重ねた。「単に痛いということではなく、靴を脱ぐことで自由にもなる。痛みや負けといったものも表現した」と小林デザイナー。

今回も生演奏を取り入れ、音楽と服を一体にしたショーを目指した。「ユウショウコバヤシ」が「楽天 ファッション・ウィーク東京」に参加してショーを行うのは、今回が2回目だ。前回3月の初のランウエイを通して、服をショーで見せる面白さと手応えを感じたという。小林デザイナーは、「ショーは普通に楽しいし、毎シーズンできたらと思う」と話す。

「ユウショウコバヤシ」の上原碧海デザイナー(左)と小林裕翔デザイナー

バックステージカット

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