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特集 CEO2026

【ミルボン 坂下秀憲社長】スモールマス市場を焦点に サロンの増収増益に寄与

PROFILE: 坂下秀憲/社長

坂下秀憲/社長
PROFILE: (さかした・ひでのり)1976年2月3日生まれ、千葉県出身。2001年に中央大学大学院の理工学研究科修士課程を修了後、同年にミルボンに入社。マーケティング部商品企画課や経営企画室マネージャーなどを経て、10年にミルボンUSAの社長に。帰国後18年に経営戦略部長に就任し「milbon:iD」の立ち上げに関わる。22年に取締役 経営戦略部長・コスメティクス企画・情報企画担当に就任、24年1月から現職 PHOTO : SHUNICHI ODA

サロン専売化粧品最大手のミルボンは、2025年8月に発表した「WWDBEAUTY ヘアサロン版ベストコスメ2025」において11製品が入賞し、うち5製品が1位を獲得するという快挙を達成した。圧倒的な製品力と質の高い営業活動にくわえ、ECプラットフォーム「milbon:iD」と「スマートサロン」の連動によって新たな価値を生み出し、美容室の増収増益に寄与する。

“特徴とターゲットが際立った”新製品を投入

WWD:2025年の美容業界の動きは?

坂下秀憲社長(以下、坂下):各メーカーもサロンの現場も苦しかった1年だったと思う。特に前半は“令和の米騒動”があり、他の食品も値上がりしたことで、美容室へ行く回数を抑えたり、メニューをこれまでより安価なものにしたりなど、ジリジリと影響があった。サロンを回って聞いても、前年を超えていたのは1割程度。後半は徐々に盛り返したものの、美容室のウォレットシェアは落ちたと感じる。お客さまに合わせて価値をそろえ、そこに適正な価格を付ける。その価値づくりと価格戦略を持っていないとお客さまは選んでくれない。われわれの製品に対しても「美容室で薦められて、何となく選んで、何となく買う」という消費の仕方ではなく、「試して良くないと買わない」「失敗したくない」という感覚。一方で、3〜4種類のサンプルを購入し、それで良かったら「milbon:iD」で2〜3万円購入することもある。買い場が複数あり、1回の支払金額をコントロールできることが、今の消費者に合っている。

WWD:好調な1割のサロンの特徴は?

坂下:若手が活躍できる環境のサロンは伸びている。そういったサロンの経営者は、「労働市場で選ばれる」ということをすごく意識しているし、教育にも力を入れていて、それが店舗戦略にも表れている。今のサロン経営は、お客さまがいる美容市場、美容師がいる労働市場、2つの市場に向き合わなければならない。そこでキーワードとなるのが、花王が提唱した「スモールマス」という市場。例えば髪質改善サロンやハイトーン特化型サロンは完全にスモールマス。美容師が得意な領域や強みを発信し、その情報とお客さまがマッチングしたところにスモールマス市場が生まれる。美容室経営は、一人一人の美容師の興味関心を引き出し、強みを生かした活躍環境を整えることで、豊かな社内労働市場を構築することができる。

WWD:そこにどうコミットしていくのか。

坂下:SNSの集客セミナーと、リアルな“似合わせ”を実現するセミナーの両方を走らせる。弊社主催のイベント「DA」も、これまではキャリア別だったが、26年はオンラインでお客さまを呼ぶ力と実際にモデルを似合わせる力の両方を競技化する。メーカーとして、美容師の発信ネタとなる特徴とターゲットが際立った新製品も発売する予定だ。

WWD:「特徴とターゲットが際立った」新製品とは?

坂下:昨年15周年を迎えた「オージュア(AUJUA)」からは、ヘアケアでデザインできるくらいの新ラインを出す。通常、ヘアケア製品は「サラサラ」「ツヤツヤ」などの感想だと思うが、新ラインはちゃんとフォルムをデザインできるほどの素材感。きっと「こんなに髪のラインがきれいになるなら試したい」と言う人が増えるだろう。もう一つは新ブランドで、ゲームチェンジャーとなる可能性を秘めた、想像を超えるヘアカラー剤。すでに2年以上検証を重ねており、そのヘアカラー剤を使い続けた人からは、「施術前でも髪質改善メニューを施した後のように美しい」という評価をいただいている。上半期は新領域となるこれらの製品で、ヘアケアとヘアカラーの2つのステージのギアを上げる。また、3月にはスタイリングブランド「ニゼル(NIGELLE)」から、まさにスモールマス市場向けと言えるスプレーを発売する。今はAIであらゆるヘアスタイル写真を作れる時代だが、それとは全くベクトルの違う発想で、AI加工を施したような髪の質感と動きを出すスプレーを開発した。SNSとも抜群に相性がいい製品だ。

WWD:「milbon:iD」の会員数も順調に伸びている。

坂下:20年に開始した、美容室の顧客がオンラインで店販品を購入できるEC「milbon:iD」は、予定より1年前倒しで25年10月に会員数100万人を突破した。この数字をさらに伸ばしていきたい。

WWD:25年は大阪・関西万博「大阪へルスケアパビリオン」が大好評だった。

坂下:アップデートされた“ミライの美容室のあり方”の発信を目的に協賛・出展し、約29万人が弊社のブースを訪れてくれた。来場者が自身の体をスキャンしたデータは、今後共有されるので、AI解析を行って新提案や製品開発につなげたい。大阪は弊社発祥の地であり、今も研究所がある。そこで開催される万博に参加できたことは光栄だし、何より社員が会社を誇りに思ってくれたことが大きい。それも構想から4年、プロジェクトチームが真摯に取り組み、粘り強くやってくれたおかげだ。

個人的に今注目している人

プロボクサー 井上尚弥さん

井上尚弥さんの試合を初めて生で観たのは、2019年のWBSSバンタム級決勝。彼がすごいのは、相手がどれだけ格下だろうと、一切油断しないこと。そして、試合中にどんなハプニングがあっても大丈夫なように、複数の展開ストーリーをイメージし準備している。それは、今の時代の経営にも通じる。うまく行っている時でも、うまくいかなくなる時のことを常に考え、もう一度マーケットを見る、もう一度社員と向き合う。それを繰り返していくことが大事だと思う。

COMPANY DATA
ミルボン

1960年、業務用ヘア化粧品の専売メーカーとしてユタカ美容化学が創立。65年、社名をミルボンに変更。2001年、東証一部銘柄に指定。04年にはニューヨークに連結子会社を設立するなど、積極的なグローバル展開を行う。17年にはコーセーとの合弁会社コーセー ミルボン コスメティクスを設立。24年通期連結決算は、売上高が前年比7.4%増の513億円となった

TEXT : YOSHIE KAWAHARA
問い合わせ先
ミルボンお客様窓口
0120-658-894