PROFILE: 藤田智美/代表取締役

mshは2025年、体験型プロモーションやIPコラボを通じて顧客接点を広げ、新ブランド「ザ・フラワーショップ(THE FLOWER SHOP)」を投入した。海外展開を進める主力アイメイクブランド「ラブ・ライナー(LOVE LINER)」は、今春に海外仕様のパッケージで本格発売を予定する。国内での長期的なブランド育成やファンマーケティングの知見を蓄積しつつ、海外市場でも日本発ブランドとしての存在感を高め、さらなる飛躍を目指す。
体験とIPコラボを起点に
海外成長フェーズへ
WWD:2025年の体験型プロモーションの成果は?
藤田智美代表取締役(以下、藤田):24年末から25年にかけて表参道ヒルズで「ラブ・ライナー」のポップアップを実施した。通常、店頭では製品を通じて顧客と接するが、ポップアップではブランドの世界観を直接届けられる。当社が展開する他ブランドも紹介できて、有意義な施策だった。2月19日に発売した、モデル・女優の佐田真由美さんがプロデュースするメイクブランド「ザ・フラワーショップ」のポップアップも渋谷で開催した。こうした直接的な接点は、既存チャネルでは得られなかった新たな経験であり、顧客理解にもつながった。
WWD:新規客との接点は広がったか?
藤田:「ザ・フラワーショップ」は発売から1年未満だが、佐田さんのファンからも支持を得て、ファンマーケティングの効果を感じた。いわゆる“推し活”のPRが機能する時代であり、ファンのエンゲージメントの高さを改めて実感した。
WWD:「ラブ・ライナー」は28年に20周年を迎える。
藤田:20年も続くこと自体が資産であり、売り場に残る日本ブランドの多くも、長期的に支持されてきたものが多い。主力のリキッドアイライナーは昨年5回目のリニューアルを行い、顧客からのフィードバックを反映して改善を加えた。リニューアルは2〜3年周期で行っており、前回のリニューアルから3年目に当たる25年前半は売り上げが伸び悩んだが、「ちいかわ」や「ポケモン」とのコラボレーションにより増収となった。些細な要素も含め、改善を積み重ね続ける姿勢こそが、ブランドが生き残る条件だ。
WWD:IPコラボ施策の成果は?
藤田:25年は「ちいかわ」「ポケモン」「ブレイクマイケース」などとのコラボレーション製品を発売した。ファン層にはデザインやブランドの世界観が高く評価され、短期的な売り上げ以上にブランド価値の向上に寄与した。IPコラボは市場の流れや周年などを見越して2年ほど前から準備を進める必要がある。即時的に流行に飛びつくのではなく、長期的な視点で計画することが重要で、常に複数の構想を並行して進めている。
WWD:海外展開の戦略と進捗は?
藤田:「ラブ・ライナー」は24年から現行パッケージで進出していたが、海外では環境配慮や棚効率の観点からパッケージのスリム化が不可欠だった。海外仕様のパッケージの製作とEU薬事登録を経て、26年春に本格展開を予定している。25年12月にはパリで最も歴史ある百貨店の一つサマリテーヌでも販売を開始し、その他小売店とも交渉中だ。ニューヨークでもポップアップを開催し、ギフティング施策を実施した。反応は良好で、特に若年層へのリーチ拡大につながっている。欧米市場は難易度が高いが、Jビューティブランドへの注目度は確実に高まっており、製品の品質にも自信がある。パッケージも含めて準備が整ったので、26年は海外展開をさらに加速する方針だ。
WWD:海外売り上げの目標は?
藤田:数年以内に売り上げの海外比率を10%程度まで引き上げることを目指している。人口減少のフェーズへ突入している日本市場において、マーケットの拡大は見込みにくい。韓国コスメをはじめとした外資ブランドも多く参入しており、競争は激化している。現状の海外売り上げは1ケタ台だが、訪日客や海外市場と向き合い、可能性を広げることが重要だ。25年10月には中東でもポップアップを行い、反応は良好だった。アメリカ市場では、現行パッケージでアジア系ショップを中心に展開しているが、セフォラやアルタビューティへの進出に向け戦略を練っている。
WWD:25年の業績は?
藤田:25年は増収減益となり、成長の一方で収益構造の改善が課題として見えてきた。IPコラボはブランド基盤の強化に寄与し、ファン層の広がりなど新規客の可能性を示した。今後は、より戦略的なコラボ施策を通じて顧客接点を拡張し、知見の蓄積と中長期的な成長につなげていく。
WWD:26年に注力することは?
藤田:20年の社長就任以来、ポートフォリオの改善を目指してきた。ブランドを育てるコストは当時と比べて明確に上がっており、筋肉質な運営が求められる。「ラブ・ライナー」を軸に、他カテゴリーの成長余力を引き出し、その原資を新規ブランドの育成に充てる。また売り上げ規模の拡大にとどまらず、社員全体で利益意識を共有し、収益性を伴ったより健全なブランド運営を継続する。
個人的に今注目している人
女性が国のリーダーを務める姿はガラスの天井を破る象徴で、率直にうれしい。私自身、ビューティ業界の課題を解決すべく、ロビー活動なども行っているので、高市さんの合理的な判断で運営を進め、自身の意見を明確に語る点にも共感している。政治に距離のあった層や若年層にも問題意識を促し、考えるきっかけを与えており、影響力は大きい。夢や希望を持つ契機を示した点に刺激を受けている。
2008年にアイメイクブランド「ラブ・ライナー」を立ち上げ、化粧品の企画・販売、輸出入、海外ブランドの輸入代理を手掛ける。ミネラルコスメブランド「タイムシークレット」やニューヨーク発のスキンケアブランド「スーパーエッグ」など、現在9ブランドを展開。社名は“make someone happy(いつも誰かをハッピーに)”の頭文字から取り、幸せが循環する社会の実現を目指す
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