ファッション

スニーカーをマスクへと“再構築” 既成概念を覆す中国人アーティスト、ツィジュン・ウォン

 ツィジュン・ウォン(Zhijun Wang)はいま、世界中のストリートシーンから熱いまなざしを向けられるアーティストの1人だ。

 近年の熱狂的スニーカーブームでは、買うという行為の一方で、欲しいスニーカーを自作するカスタムスニーカーが流行している。ツィジュンもその流行に身を置く1人のアーティストだが、彼のカスタムスニーカーは一味違う。彼の場合、スニーカーを解体し、文字どおり“再構築”。足で履くものから顔に付けるマスクへとカスタマイズするのだ。さらに驚くべきことに、彼が解体するスニーカーは、ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)と「ナイキ(NIKE)」のコラボ「THE TEN」のスニーカーをはじめ、どれも手に入れることすら難しいプレミアムなスニーカーばかり。

 そんな彼のインスタグラムから来日中であることを知っていた「WWD JAPAN.com」編集部が偶然、街中で遭遇。短い時間ではあったがマスクの制作の裏側について話を聞くことに成功した。

WWD:なぜスニーカーからマスクを制作するようになった?

ツィジュン:僕の出身地の中国・北京は大気汚染がヒドくて社会問題になっているんだ。生きていくためには毎日毎秒、息をしなければいけないけど、それすら難しいくらいにね。それで、大気汚染から人々を守りたいと考えた時に空気を浄化するためのフィルターが必要だと思った。それでマスクを作り始めたんだ。ちなみにマスクはあくまで作品だから売ってはいないんだけど、プレゼントすることはあるね。

WWD:使っているスニーカーはどれも本物?

ツィジュン:正真正銘、すべて本物。スニーカーだけではなく、服なども材料にしているけど、どれも本物だし新品を使っているよ。

WWD:マスクは1人で制作している?

アリア・デュアン(Aria Duan):2人で作ってるわ。

ツィジュン:彼女は僕の妻なんだ。マスクのモデルもしているよ。

 

WWD:マスクとなるスニーカーはどれもプレミアムなものばかりだが、どうやってスニーカーを入手している?

ツィジュン:僕の個人的なコレクションと、SNSを通じて僕らのことを知った「アディダス(ADIDAS)」や「ナイキ」といったブランドやセレブからもらう。いま身につけているマスクとスニーカーは、エディソン・チャン(Edison Chen)から1つは撮影用に、1つはマスクの制作用にと直接プレゼントしてもらったんだ。彼は中国人でありながら世界で活躍しているアーティストだから、一緒に仕事をすることが僕の夢だったんだ。マスクのおかげで夢が叶ったよ!

WWD:マスクとスニーカーのコレクション数は?

ツィジュン:マスクは80個くらいかな。

アリア:スニーカーは部屋を埋め尽くすくらいで、数え切れない(笑)。

WWD:スニーカーとマスクは合わせてコーディネートすることが多い?

ツィジュン:そうだね、もちろん別々の時もあるけど。

WWD:これまでの代表的な仕事は?

ツィジュン:最近だと日本限定のアトモス(atmos)のスニーカーを使ったマスクを作って、過去には「アディダス」の“YEEZY”のマスクも作った。ロサンゼルスの「アディダス」には僕のショールームがあるし、ニューヨーク近代美術館(MoMA)にはマスクの材料とマスクが並べられて展示されている。あと、村上隆のためにもマスクを作ったんだけど、本人も喜んでくれたみたいで、インスタグラムにもアップしてくれたよ。

日本では多くの人が白いマスクをしているよね。マスクはある意味日本のサブカルチャーの1つだと思う。今後、僕らの作るマスクに日本のマスクの技術を取り入れたら面白いかもね!

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