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AIが導く、無駄のないアパレル産業の未来像

 人工知能(AI)アプリ「センシー(SENSY)」を展開するカラフル・ボードはこのほど、新たにTSIホールディングスとはるやまホールディングス、小売り業向けITシステム企業ヴィンクスの3社を引取先として、総額7億円の第三者割当増資を実施した。AIはファッション業界をどう変えるのか。AIベンチャーの雄として注目の渡辺祐樹カラフル・ボード代表取締役CEOに聞いた。

WWDジャパン(以下、WWD):今回の資金調達の内容は?

渡辺祐樹カラフル・ボード社長(以下、渡辺):TSIホールディングス、はるやまホールディングス、ヴィンクスの3社とはすでにAIを使ったサービスを開発中だ。資金調達の狙いは、さらにそれらの開発をもう一歩進める狙いがある。

WWD:調達した資金は何に使う?

渡辺:基本的には研究開発と人員の増強に使う。現在の従業員数は20人。その7割が、AIの研究者とエンジニアだが、今年で一気に倍増させる。

WWD:AIアプリ「センシー」の現状は?

渡辺:「センシー」はAIを使ったサービスの総称で、エンドユーザー向けから、法人向けのボットサービスまで、幅広く開発している。エンドユーザー向けのファッションレコメンドアプリ「センシー」が9万ダウンロード、三越伊勢丹と組んで進めている店舗用の接客アプリ、AIを使ったパーソナライズDM、需要を予測するMDソフトまで、サービスのカテゴリーはエンドユーザーから出発して、販売やマーケティング、MDまで、徐々に川上へとプロダクトのポートフォリオを広げてきた。

WWD:好調なサービスは?

渡辺:いま特に手応えを感じているのがMDの需要予測だ。これまで、MDは担当者が毎週、店頭や過去の売れ行きを見て会議を行い、何をどのくらい作るか、どう組み合わせ、いつ売るかなどを経験や知識にもとづいて行ってきた。ただ、いくら経験豊富なベテランMDでも、カラーやサイズを含めたSKU単位で、需要を予測するのは不可能だ。TSIと一緒に開発しているサービスでは、過去の購買履歴をPOSやECのデータをAIに読み込ませ、完璧ではないが、需要を予測できるようになる手応えを感じている。完成すれば同社だけでも100億円を超えるインパクトがある。一社だけでなく、他の企業も使えるようになれば、アパレル産業全体を大きく変えるような可能性もある。ファッションはこれまでどうしても無駄が生まれていたがAIを使えば、無駄なく、しかも真の意味でお客さま起点のビジネスに生まれ変わる。

WWD:企業側は自社の顧客データを、カラフル・ボードのような外部の会社に公開することに抵抗はないのか?

渡辺:TSIとの取り組みの場合は、顧客情報を外部に出すという感覚よりも、お客をより理解するためにデータを共有する、という考え方だった。これまで多くの企業と取り組んできたが、そういった考え方をする企業の方が多いように思う。

WWD:AIは今後どうなる?

渡辺:近い将来、僕は3年以内にそうなると考えているが、一人一AIの時代が来て、AIが24時間365日、人間をサポートするようになる。そうなると人は常に、ショッピングや自分の行動などをAIに読み込ませ、時には相談することになるだろう。そのAIは自分以上に自分のことをよく知るようになり、生活全般をサポートするようになるだろう。僕らは、そうしたAIをクラウドに置き、他のAIとボットでコミュニケーションをさせることで、企業の商品開発や需要予測に使って、産業全体で無駄をなくしたい。

WWD:AI関連の企業も多く誕生し、さまざまなサービスも生まれているが、まだ“マス”になるようなサービスが生まれていないようにも思うが。

渡辺:当社も含め、キラーコンテンツのようなものが明確でないのはその通りだ。「センシー」はエンドユーザー向けのサービスとしてスタートしたが、現在はどちらかというとビジネスユースや法人向けのサービス開発の方が進んでいる。ただ、カラフル・ボードが狙っているのは、AIを使って上記のような社会全体にAIを使った新しいライフスタイルを実現すること。法人向けではなく、社会に浸透させるためには、あらゆる日常での使いやすさや便利さなどまで含めてきちんと設計する必要がある。限られた経営資源の中で、現在もエンドユーザー向けの商品開発を進めているのはそのためだ。

WWD:店頭の接客サービスやMDなど、人ができないことをAIがやることで、人の仕事を奪ってしまうようにも聞こえるが。

渡辺:これまでのサービスだとそう捉えられてしまうかもしれないが、僕らがAIを使って実現しようとしているのは、生活を彩り豊かにすること。MDにしても従来はマスの分析で採算性に合わないからと捨てられていたアイデアやコンテンツを、AIによって掬(すく)うことで、多様なコンテンツを世の中に出せるようになる。AIを使えばマーケティングコストもかからないし、使い方によっては多様なコンテンツが生まれる素地になる。これは商品開発の分野のサービス。現在は食品メーカーと組んで、これまでにない角度からAIを使ったサービス開発を進めている。年内にはローンチ予定だ。