
「マディソンブルー(MADISONBLUE)」は、2014年のブランド創設から10周年を迎え、11年目となる節目の年に新たな旗艦店「マディソンブルー トーキョー」を東京・青山にオープンした。中山まりこデザイナーは同店について、「いわゆる“洋服のお店”ではなく、自宅に招く感覚」を形にしたという。新たな拠点のこだわりと共に、「マディソンブルー」が駆け抜けた10年間を振り返る。また、ブランドが信頼を寄せるフレンズたちの祝福の声も紹介する。
旅先で得たインスピレーションと
アート作品が彩るくつろぎの場
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同店は2フロア構成で、自然光がたっぷり差し込む全面ガラス張りの内装が特徴だ。セドナの教会から着想を得たドアノブを押して「マディソンブルー トーキョー」に入店すると、曲線を描くピンクの大きな壁が目に入る。窓から差し込む光の向きによって表情を変えるスタッコ(漆喰)の壁は、中山デザイナーと共に内装を手掛けたセットデザイナーのEnzoが実現させたかったアイデアだという。
1階は、「マディソンブルー」のスタイルの核となるコレクション“エッセンシャル”はもちろん、“シーズン”コレクションやオープン記念アイテムが並ぶ。店内を飾るのは、スタイリストでもある中山デザイナーのパーソナルなアートコレクションや写真の数々だ。彼女の半生やチャーミングな人となりがにじみ出す作品は、アート関連のコーディネーションなどを行う「プラグイン プラス(plugin +)」代表の武田菜種がキュレーションした。
階段を上がった先の2階は、サロンのようにくつろげる開放感あるフロアが広がる。吹き抜けにはロバート・ボシシオ(Robert Bosisio)の絵画を、その先の壁面にはアレックス・カッツ(Alex Katz)の絵画を展示する、アートギャラリーさながらの空間。フィッティングルームは、ぜいたくな広さを設けた。店内にはFPMの田中知之が選曲した1960年後期〜70年代のフレンチミュージックをベースとしたプレイリストが流れ、時間を忘れるようなラグジュアリーなショッピング体験を楽しめる。
「マディソンブルー トーキョー」
店舗先行コレクションが登場
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オープンを記念し、店舗先行コレクションをラインアップする。ブランドのエッセンシャルアイテムであるミリタリージャケットやデニムジャケットなどを、アイボリーとディープネイビーのツイード素材で特別に制作。他にも「HELLO」のレタリングをスパンコール刺しゅうした、半袖とノースリーブのTシャツを販売している。
中山まりこが語る
「マディソンブルー」の10年と新章
中山デザイナーが提案するスタイルは女性の共感を呼んでおり、特にこだわりのシャツは、シンプルながら一度袖を通すとリピートを繰り返す顧客が多いほど評判だ。人気の理由は、型破りなデザイナーの発想と、それを裏付ける確かな審美眼、そして長きにわたるファッション界でのキャリアがあった。10年間の軌跡とこれからについて、中山デザイナーに聞いた。
中山デザイナーは、「目の前のことを懸命にやっていたら10年が経っていました。この歳月で『マディソンブルー』は“経年変化を楽しめる洋服”ということを証明できた手応えが、揺るぎない自信につながっています」と振り返る。さらに、目黒の事務所兼店舗時代から表参道への移転まで「ブランドをずっと愛してくれるお客さまを守るために、店を静かに営んできたつもり」と続けた。コロナ禍でも「いいものを買いたい」という要望に応え、それまでは避けてきたECの開設を決めた。「EC販売はしない主義でしたが、新規とリピーターの両方のお客さまのために始めました。これまで挑戦してきたことは、私が独断で決めてきたわけではなく、お客さまやタイミングが導いてくれました。青山のお店も同じです」。中山デザイナーが掲げる女性像は、しなやかな人。「自分自身も芯を持ちながら、柳のように、時代や状況に応じて変化できる人でありたい」と語る。そんな柔軟さが『マディソンブルー』ファンの共感を呼ぶに違いない。
11年前にシャツ6型から始めたモノ作りは、現在トータルアイテムに広がっている。「日々のインスピレーションである旅やアート、パリ、古着など“好き”を集めると、新しいコレクションができるんです。この先も、わくわくしかありません。何かを始める材料は、手元に全てそろっていますから」。新たな旗艦店については「ディレクターという自分自身が携わっているブランドの店なので、内装に個人的な想いを込めました。自宅から持ってきた絵がより大きく見えて、エネルギーを取り戻したように思う。店内のアートを一人で眺める時間が、今一番幸せです」
「マディソンブルー」のフレンズから届いた祝福の声

「マディソンブルー」のこれまでを支え、これからも共にある仲間たちが、ブランドへの思いを語る。内装デザインのEnzoやBGMを担当した田中知之、アートキュレーターの武田菜種、キャンペーンビジュアルの制作を手がけた編集者の中島敏子が語るブランドの魅力とは。
「おめでとうございます!『マディソンブルーにとってのラグジュアリーとは何か』を意識し、美術、空間演出など、店内をデザインしました。このブランドがすごいのは、常に予想を上回ってくるところ。新店舗で、ブランドの新たな物語が始まる土台作りができればうれしいです」(Enzo)
「ショップオープン、おめでとうございます。僕がFPMを名乗り始めたのが、今から30年前の1995年でした。当時はそこからさらに30年前、つまり60年代の音楽がとても新鮮に感じていて、ジャンルを問わずに聞き漁っていました。2025年の中山さんにも、30年前の気持ちが一巡して還ってきているなと感じたので、『マディソンブルー トーキョー』の店内BGMは、60年代の音楽からセレクションしました」(田中知之)
「店内のアート作品をキュレーションする際に意識したのは、中山さんご夫婦の軌跡、哲学、価値観、普遍性と伝統と革新を基盤とするブランドコンセプトの価値観を伝えたいという思い、新しく挑戦しようとする志などです。守りに入らず、新たな挑戦に向かって進む姿勢は、めちゃくちゃロックでかっこいい。『マディソンブルー』の新章、これから始まる冒険や物語を心より楽しみにしております!」(武田菜種)
「表参道から青山に移る過程を追い、3つのキャンペーンビジュアルの制作を担当しました。vol.1は『じゃあね、表参道店。』キャンペーン。続くvol.2とvol.3が『HELLO AOYAMA』キャンペーンで、工事中と工事が終わったばかりの青山のお店でファッションシューティングしました。『マディソンブルー』は、カルチャーの基礎があり、素材への偏愛があり、数々の対極を内抱しながら、他に類を見ない領域をしなやかに開拓していくところが魅力的です」(中島敏子)
TEXT : AIKA KAWADA
マディソンブルー トーキョー
03-6427-9228